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W杯、10倍面白く見るために「日本、死の組へ。スペインはなぜ強いのかを解説」

(大会直前のため再掲載)

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で日本はE組に入り、ドイツ、スペインらと同じE組に入ることが決まった。競合ひしめく“死の組”と呼ばれるグループに入った中で森保一監督率いる日本はグループステージ最後にスペイン代表と激突する。W杯で初対戦を迎える強国相手に勝算はあるのか。圧倒的なポゼッション力に加え、チームとしての成熟度を高めるスペイン相手に日本が求められるのは「身の丈に合ったサッカー」だ。(ライター・井本 佳孝)

“ティキ・タカ”を踏襲した華麗なパスサッカー

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photo: bergserg

12大会連続出場とドイツと並びW杯常連国のスペインは、母国語で赤色を意味する「ラ・ロハ」の愛称で呼ばれる。1990年代に約4年間、30試合以上に渡り国際Aマッチで無敗を誇ったことから、日本では“無敵艦隊”の名でも人々にその存在が知られるようになった。今でこそ「スペイン=世界の強豪国」と認識されているが、かつては期待に応えられず、戦前の期待に反し大舞台で早期敗退を繰り返すことから、“永遠の優勝候補”と揶揄されることもあった。

そんな世界の見方を一変させたのが2000年代後半から2010年代前半にかけてのことだ。アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャ、フェルナンド・トーレスらその後日本でもプレーすることになるお馴染みの選手たちを揃えた2010年南アフリカ大会では、その勝負弱さを覆し、見事、世界の頂に立った。当時世界最強と呼ばれたバルセロナの戦術を踏襲した“ティキ・タカ”と呼ばれるパスサッカーは世界中のフットボールファンの心に刻まれ、今日にも多大な影響をもたらしている。

中盤の底に位置するキーマン・ブスケツ

ルイス・エンリケ監督が率いる現在のスペイン代表も、そんな伝統の“ティキ・タカ”を踏襲したパスワークが持ち味で相手陣地内に押し込むことでチームとしての優位性を保つ。EURO2020ではベスト4に進出するなど新たな若手も加えながら着実に成長を続けているチームにおいて、主軸を担うのが“天才MF”との呼び声高いぺドリだ。かつてのイニエスタを彷彿とさせる19歳はこのW杯を彩る一人として全世界から期待の目が向けられている。
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ペドリ(Photo by ロイター/アフロ)

さらに、2010年大会の優勝メンバーであり、現代表のキャプテンを務めるセルヒオ・ブスケツもこのチームにはいる。リオネル・メッシ、シャビ・エルナンデスらとともにバルセロナの黄金期を築いた一人だ。中盤の守備的な位置で相手の攻撃の芽を摘みとり、攻撃の起点も担う世界最高峰のアンカーとしてスペインを牽引する。味方を的確な位置でサポートし長短織り交ぜた正確なパスを供給するだけでなく、高いボールキープ力や守備時のパスコースを読む巧みなポジショニングなど、多岐にわたる仕事を難なくこなす。“縁の下の力持ち”として絶妙なバランス能力を武器に長年にわたりバルセロナやスペインを支えてきた選手だ。日本が戦うにあたって、もっとも気をつけなくてはいけない選手はぺドリでも前線のアルバロ・モラタでもなく中盤の底に位置するこのブスケツかもしれない。

スペインと日本との対戦だが、意外にもこれまで国際Aマッチで相対したのは2001年の1試合しかなく、この時はスペインが1-0で勝利をおさめている。日本が値千金の“金星”を挙げた2012年のロンドン五輪や記憶に新しい死闘を演じた昨夏の東京五輪など、アンダーカテゴリーの国際大会では戦ってきており、日本はが善戦してみせた。それだけに、本気のメンバーを揃えたW杯での試合を興味深く見る日本のサッカーファンは少なくないはずだ。

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