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「絶望感」のなかでも消えなかった“ツアー返り咲き”への思い 4年間の浪人生活を支えた原動力は?【プロテストで見たドラマ】

ようやく今年、入会証を手にすることができた(撮影:福田文平)

先週行われた日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の最終プロテストでは、新たに21人のルーキーが誕生した。うれし泣き、悔し泣きが入り混じった会場で、特に印象に残った合格者を紹介する。

最終プロテストの激闘から一夜明けた4日、スーツ姿で念願だった入会証を受け取った中野恵里花は、「(実感は)ジワジワと湧いてきています。6回受験して、やっと入会できた」とうれしそうに話した。華やかな舞台での戦いを知っているだけに、なおさらよろこびは大きい。

その6度の受験のうち、最終まで進んだのは5回。これまで“あと一歩”のところで、正会員の道が閉ざされてきたといえる。今年も3日目終了時には圏外の37位タイに甘んじていたが、最終日に「68」をたたき出し、ボーダーライン上の19位タイに滑り込んだ。

2000年1月25日生まれで、同学年の選手には稲見萌寧、菅沼菜々らがいる。中野も2019年には単年登録選手としてレギュラーツアー4試合、下部のステップ・アップ・ツアー18試合を戦った。しかし、この年から、原則、正会員しかQTに出場することができなくなり、プロテストに合格しないとツアー出場が閉ざされることに。中野もその制度変更によって、“職場”を失ったひとりだ。

「19年はいい経験もできたんですけど、その年の最終テストが全然振るわずに、残ったのは『来年ツアーに出られないんだな』という絶望感だけ。またイチからテストに向けて頑張らないといけないのか、って」。そこからの4年間は、ミニツアーの情報を集めては、開催場所に関わらず出場して試合勘を維持する生活。年間20ほどの試合に出ながらプロテストを待つ…。そんな“負のループ”もようやく終わりを迎えることになる。

それでも「モチベーションが落ちることはなかったですね。『絶対にツアーに戻る』、『ツアーに出て勝ちたい』という気持ちは、絶望感のなかにもありました」と、信念を曲げることはなかった。『やめたいと思ったことは?』という質問にも、即座に首を横に振ったほどだ。「小学校の時からプロゴルファーを目指して、プロの世界で活躍するというのをずっと夢見てきた。目標にしてきたことをぜったいに達成してやるという気持ちが一番でした」。こんな志に加え、1学年下の古江彩佳、西村優菜が海外で活躍する姿なども刺激に長い“浪人生活”を過ごしてきた。

ただ何よりも力になったのは、身近にいた同世代選手の姿だ。昨年のプロテストで合格した平岡瑠依は、小学生時代からの親友。「去年やっとテストに受かって、今年ツアーでトップ10にも入ったり(3度)。瑠依の活躍は刺激になって、『絶対に今年合格してやろう』と思えました」。ジュニア時代からの切磋琢磨が今も続く友にも、合格したことはすぐに報告。『(今年は2世代が出場する)新人戦で会おう!』という約束も交わした。

「今だから言えるんですけど、試合に出られなかったりしたことがあったから合格できたのかなとも思います。いろんな経験もしましたし」。この4年間が無駄ではなかったと思える日がようやく訪れた。「ガマン強さ、忍耐強さはこの期間で鍛えられましたね(笑)。苦しい時も耐える力を発揮できるかも」。むしろ“強み”にすらなるかもしれない、そう感じている。

「QTを上位で通過して、来季の前半戦でレギュラーツアーに出られるようにすること。来季レギュラーでも、もしステップだったとしても、必ず1勝できるように頑張ります」。初志貫徹を果たした23歳は、ツアー返り咲きを果たし、力強く明るい未来を宣言した。

中野恵里花(なかの・えりか) 2000年1月25日生まれ、京都府宇治市出身。157センチ ■ゴルフ歴/9歳〜 ■得意クラブ/ドライバー、UT、パター ■1W平均飛距離/240ヤード ■趣味/アニメ鑑賞、スポーツ観戦 ■プロテスト受験回数/6回 ■目標とするゴルファー/申ジエ

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