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なぜタイトリストだけ、古い『DI』や『IZ』をストックシャフトに採用するの?

米国タイトリストでは、DI・UB・IZの3本がプレミアムシャフトに

毎年、秋はシャフトの最新モデルが発売される時季。既にフジクラ『スピーダーNXブラック』や三菱ケミカル『テンセイPROブルー1K』が発売され、これからUSTマミヤ『LIN-QブルーEX』、グラファイトデザイン『TOUR AD VF』も10月6日に発売される。となると、シャフトの最新作が気になってしまうのがギア好きの性だが、カスタムシャフトの用意に疑問しかないメーカーがある。

それが、古~いシャフトを“半吊るし”で最初から用意するタイトリストだ。前作『TSi』から2009年発売のグラファイトデザイン『TOUR AD DI』を、今作『TSR』シリーズから2017年モデルの『IZ』を加えた。外ブラも国産も、アスリートブランドのほぼ全てが各社の最新シャフトを用意するのが普通なのに、なぜ14年前、6年前の古いモノを選ぶのか?
 
「シンプルに言えばタイトリストは、パフォーマンスが全てです。米国R&Dでシャフトの様々な解析を行い、多くのシャフトをデータ化してフィッティングに役立てていますが、単純に『DI』を選ぶ理由は多くのゴルファーに結果が出やすいから。『TSi』から『TSR』になってもその傾向が変わらないため、『DI』に加えて『IZ』もプレミアムシャフトとして最初から店頭で買える状態で用意しています。もちろん、今後ヘッドが別の形に進化すれば、この用意を変更する可能性はありますよ」(アクシネットジャパンインク広報)
 
米国のタイトリストでは「シャフトパフォーマンスガイド」と呼ぶWEBツールを用意し、多くのシャフトメーカーの新旧作から簡易で絞り込むサービスもある。『DI』や『IZ』以外にも新旧問わず数百のシャフト登録があるが、米国で『TSR』のプレミアムシャフトは『DI』『IZ』『UB』の3種類だとか。「まさかグラファイトデザインと結託している?」との疑いすら生じるが、そうではないと言う。
 
「単純に膨大なフィッティングの経験から来る“フィーリングの最大公約数”の結果ですね。『DI』を例に説明すると、シャフトは切り返しの“手元側を感じる派”と、インパクト付近の“先端側を感じる派”でフィーリングが大きく2分され、真逆の言語に変わってしまいがちなんですよ。手元と先、どちら派かで選ぶモノも心地いいフィーリングも両極に別れがちなのに、不思議なことに『DI』は両者とも結果が出やすい。『IZ』を加えた理由は、もう少し先を感じるタイプといった具合に、『DI』と違うモノを好む人に向け選択肢を加えました」
 
そういえば、今年の「全英オープン」覇者のブライアン・ハーマンも『TSi2』に『IZ』(5S)。そして直近のPGAツアーでジャスティン・トーマスが45.75㌅の『TOUR AD VF』を『TSR3』に挿してテストし、いつエースになってもおかしくない状態と聞く。これは、タイトリストのドライバーが、特にグラファイトデザインと相性が良いということか。
 
「他社のヘッドは分かりませんが、現状のタイトリストでは一定の傾向は見られます。しかも、米国人と日本人で体格も筋力も微妙に異なると思いがちですが、シャフトのフィーリングは日米関係なく『TSi』も『TSR』も現状のプレミアムシャフトが最大公約数的と言いますか、多くの方に結果が出やすい傾向です。もちろん、フィッティングすればもっと合うものが必ず見つかりますが、『そこまでしなくても』という方が即座にパフォーマンスを出しやすい選択肢と言えますね」(同)
 
同社はシャフトの曲げ剛性(EI)のグラフだけでなく、詳細に解析した様々な静的シャフトデータを持っているが、「似た剛性分布だからといって、同じフィーリングになるとは限りません。静的データで判断するのではなく、シャフトは振った時のフィーリングが最も大切。ゴルファーが感じる“フィーリング”を軸に、パフォーマンスアップを考えるのがタイトリストの基本」と言う。
 
この点は、米国タイトリストも「シャフトの性能を定義する仕様はない」と明言している。同社基準で、振動数は先端側と手元側の両方から測定するなど独自のシャフト静的データを膨大に積み上げているものの、「最適なシャフトを選択する最善の方法は、フィッティングプロセスをガイドしてくれる信頼できる専門フィッターと一緒にショットを打つこと」が基本方針。これは日本でも同様だ。
 
ちなみに、長年男子ツアーレップを務めたグラファイトデザインに勤務するトップアマは「あくまで自分のフィーリングですが、タイトリストのヘッドとグラファイトデザインの相性は異常によく感じる」と『TSR2』と『IZ』が替えられないと言う。また、競合シャフトメーカーに勤務するトップアマも「TSR2にUBの入ったモノを初めて打った時、ヘッドもシャフトもどちらも良く感じた」と、相性の良さに驚いていた。
 
2人ともプロやトップアマにフィッティングする側の立場で、プロトタイプのテスターも務めるなど“シャフトに精通”している。そして、シャフトメーカーに勤務するが故、どのメーカーのヘッドも入手は容易で、試打の経験値も膨大だ。もちろん、これが大多数に当てはまるとは言えないが、タイトリストが古い『DI』と『IZ』を最初から用意するのは、ゴルファーにとって「最新=最善」ではない証明。最新シャフトも選べるが、予め先回りして、結果の出やすい“鉄板”を用意してくれていた。

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