• HOME
  • 記事
  • ゴルフ
  • 「緊張が止まらなった、ふふ」 逃げ切りでアマチュアV・杉浦悠太の長かった18ホール

「緊張が止まらなった、ふふ」 逃げ切りでアマチュアV・杉浦悠太の長かった18ホール

緊張、緊張の快挙までの18ホールだった(撮影:米山聡明)

<ダンロップフェニックス 最終日◇19日◇フェニックスカントリークラブ(宮崎県)◇7042ヤード・パー71>
 
世界トップランカーが集まった50回記念大会、初めての最終日最終組、アマチュア人生最後の試合で手にした史上7人目(8回目)のアマVのチャンス…。4打差をつけて迎えたアマチュア杉浦悠太(日大4年)は朝から緊張していた。

「4打差あるといろんな方から言ってもらったけれど、4打差が4打差に感じなかった。足りないように感じてプレーしていました」。追いかけるよりも、単独首位から逃げ切るほうがプレッシャーが大きいはずだ。1番のティショットでドライバーを振り抜いて緊張を跳ね返そうとしたが、左の林に入れてボギー。「そんな簡単にスタートからうまくいかないと思いながら…」として逆に落ち着きもしたが、その緊張が消えることはない。
 
2打目がグリーン手前のバンカーにつかまった2番。バンカーから1.5メートルにつけたパーパットを決めて、「きょうは行けるなと気持ちを切り替えることができた」。5番で6メートルを流し込み、7番パー5ではグリーン手前ラフに2打目を運ぶと寄せてバーディ。4打差を保ったまま、サンデーバックナインに突入する。
 
だがここで、決して崩れなさそうなプレーに陰りがでた。11番パー3で「力んでしまった」と7番アイアンでのティショットを左奥の林に落とすと、乗らず、寄らずで2パットのダブルボギー。12番では3パットのボギーを叩いて、後続との差は2打に一気に縮んた。
 
そのときのことを「緊張が止まらなかったです。ふふ」と苦笑いしながら振り返る。13番をパーとすると、「僕の中では一番狭いホール。でもドライバーを持たないといけない」という苦手意識のある14番のティイングエリアに立った時、その緊張はより増した。それでもそこでドライバーを振り抜き、4メートルから2パットのパーとしたときにホッとした。
 
1メートルのチャンスにつけた16番でも「本当に短い1メートルくらいさえ、入るかわからないくらい緊張していた」。それを決め切りバーディを奪うと、3打差をつけて最終18番へ。「なにが起こるかわからないし、ちょっとしたことで簡単に逆転されてしまう。気を引き締めていた」と3打目のアプローチがグリーンを捉えると、ここでやっと緊張がほどけ、勝利を確信した。
 
ごはんが思うようにのどを通らなかった朝から半日が経ち、ウイニングパットを沈めたときの表情は笑顔。「緊張がすごかった。3日目の朝から緊張して、1位で決勝ラウンドに行くのは初めてだったので、緊張しっぱなしでした」。重圧を受け入れながら、それに押しつぶされないようにドライバーを力強く振り抜き、胸を張って歩き続けた72ホールの先につかんだ、偉業の“ツアー1勝”だ。
 
再来週にサードQTの受験を予定していたが、この勝利をもってプロ宣言。コースを去る前には日本ゴルフツアー機構(JGTO)のツアーメンバー登録を済ませ、来週の「カシオワールドオープン」にもエントリー済み。プロとしてのキャリアをスタートさせる。
 
「松山(英樹)選手や中島(啓太)選手の、ギャラリーの数が本当にすごかった。応援してくださるギャラリーの選手が多いような、選手になりたいです」。将来は海外ツアー挑戦も見据える22歳。日本男子ツアーに期待の新星がまたひとり誕生した。(文・笠井あかり)

関連記事