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ジュニア時代にすべきことは? 畑岡奈紗が子供たちに伝えた心構えと楽しむことの大切さ

畑岡奈紗がジュニアに送った言葉とは?(撮影:ALBA)

「長いクラブよりも100ヤード以内を練習したほうがいい」。これは畑岡奈紗がジュニアゴルファーに語ったスコアメークの肝だ。10月31日に茨城県のPGM石岡ゴルフクラブで行われた「ヒルトングランドバケーションズプレゼンツ、畑岡奈紗選手ジュニアクリニック」で送られたこの言葉は、確かにスコアを縮めるには得策だ。

2016年に「日本女子オープン」史上初となるアマチュア優勝を果たし、プロ入りと同時に米国女子ツアーに参戦。2年目に初優勝を挙げ、すでに6勝を果たすなど活躍を見せている畑岡には、大きな夢がある。それはゴルフの楽しさを伝えていくために、積極的にジュニアと触れあうことだ。今回は日本開催の「TOTOジャパンクラシック」開幕2日前に行われたクリニックで、金言を授ける機会を得た。

「本当はもっと開催したいのですが」と、年2回でも足りない。前回は4月にハワイで、そして今回は地元・茨城県で。シーズン中に積極的にジュニアとの時間を設けるには理由がある。ゴルフへの恩返しと、ゴルフを好きになってほしいという切なる願いからだ。

クリニックでは茨城県のジュニアを中心に22人へ指導を行った。時間の制約もあり、全員に個別指導とはならなかったが、気になるジュニアを見かければ手取り足取り指導。試合中に見せる真剣な表情から一変、「私が癒やされました」と心からの笑顔が子どもたちに向けられた。

『いいスコアで回るためにはどうすればいいか』。そんな疑問に対する答えが冒頭の言葉だ。ただし、その前に伝えたいことがある、と畑岡は言う。「ゴルフを楽しんでもらいたい」。陸上競技や野球も経験した自身のジュニア時代。「ゴルフが一番好きだから」とプロゴルファーを目指した。自分が慣れ親しみ、愛するゴルフ。その魅力を子どもたちに伝えるべく、ブランドアンバサダーを務めるヒルトングランドバケーションズ(HGV)とともに、今年は2回のクリニックを開催した。そこでは、スコアよりも大切なものがあると説いた。

ドライバーを振っているあるジュニアの後ろに立ったとき、「もっと思い切り振ってみよう」と声をかけた。単純な言葉のように聞こえるが、これこそが畑岡が真に伝えたいことの一つだ。「たくさん振ることを練習してほしい。わたしもジュニアの頃はドライバーが好きで、どれだけ飛ぶかというようなことをやっていたので、そういう風に楽しむのもいいかなと思います」と、前述の“100ヤード以内の精度”とは真逆の回答には「矛盾してますかね?」と笑う。

競技ゴルフを続ける者がすべてではないし、もしプロへの道を希望したとしても、基本ともいうべき『楽しむ』、『振り切る』というキーワードはゴルフをする者にとっては同じ。そしてこれらが、ゴルフは楽しく、ゴルフが好きという気持ちにつながり、裾野が広がっていく。だからこそ、畑岡には伝えたいことが多くあり、“矛盾”が生まれる。

ベストスコアを更新することに楽しさを感じる者もいれば、ドライバーを思い切り振って、飛距離を出すことに一番の喜びを感じる者だっている。ピンにピタリと寄せることに一生懸命取り組むことも楽しい。畑岡自身はそのどれをも否定しない。とにかく楽しくゴルフに取り組んでほしいという。

米国ではジュニア協会の大会に現役プロやレジェンド級のプロの名前が冠された試合が数多く存在。日本よりも、次の世代を育てる動きが活発だ。プロの大会期間中でもジュニアのクリニックが開催されることも多く、「よく見かけるので、私もそういうことをしてみたいなと思っていました。まだ最初の段階ではありますが、やってみないと分からないこともあるので、やってみて良かった」と表情を崩す。

今後はジュニアのみならず、HGVと手を取り合って一般アマチュア向けのイベントなどにも挑戦したいと語る。「年間1勝、メジャー大会も勝ちたい」という自身の目標に向かうための活力として、啓蒙活動にも力を入れる構えだ。今週はフロリダで、いよいよシーズン最終戦。今年最後の戦いで、強く楽しくプレーする姿を子どもたちに届ける。(文・高桑均)

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