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史上7人目のアマ優勝者誕生に賛辞と悔い 蝉川泰果は「簡単に勝ちを譲りたくなかった」

蝉川泰果は後半猛チャージも追いつけず(撮影:米山聡明)

<ダンロップフェニックス 最終日◇19日◇フェニックスカントリークラブ(宮崎県)◇7042ヤード・パー71>
 
単独首位に立っていた杉浦悠太(日大4年)と蝉川泰果の差は、スタート時には8打あった。「もしかしたら(逆転が)あるかもしれないと考えてはいたけれど、それほど意識はなかった」。前半での猛チャージは叶わず、ともに1つ伸ばしてハーフターン。「自分にはチャンスがないかなと思っていた」としながら、後半へと向かった。

最終日最終組でまわる杉浦に対して、蝉川はその2つ前の組。11番でダブルボギー、12番でボギーとした杉浦に対して、14番までに蝉川が3つ伸ばした。差が2打に一気に縮まり、「ちょっと緊張した」。15番はフェアウェイからの2打目がピンに絡まず、16番ではウェッジでのショットが左奥に突き抜けてボギー。“ここぞ”というときに後退し、プレッシャーをかけきれなかった。
 
「そんなに(優勝を)意識できるポジションじゃないかなという本音だった。あそこからもっともっと伸ばせるようになりたいと思った」。4月の「関西オープン」以来の、今季2勝目が現実味を帯びた瞬間、無意識に空気が張り詰めた。とはいえ、2日目に大失速してまさかの予選落ちとなった前週から切り替えての好成績。「悔いが残るけど、先週のプレーがあってこの位置までこれたのはすごく良かった」と、3打差の2位タイに満足感もある。
 
勝利は1つ年下のアマチュアに明け渡した。昨年には蝉川自身もアマチュアとして史上初の2勝を飾り、華々しくプロ転向。その後さらに1勝を挙げ、男子ゴルフ界を引っ張る存在になった。「プロとしての意地で、アマチュア選手に簡単に勝ちを譲りたくなかった」という本音も明かすが、「それ以上にうますぎた」。最後は勝者を称えた。
 
杉浦と同じ最終組で直接対決を繰り広げた中島啓太も、背中を捉えることはできず。差は2打縮めたが、2位に甘んじた。「勝てなかったし、追いつけるようなゴルフでもなかった。もっと練習したいと思う」と反省が口をつく。
 
3打差で迎えた最終18番では、もちろん肩を並べる“一発”も目指していた。「最後のセカンドが入ったら並ぶじゃないですか。そこまで考えていたので勝ちたかったですね」と、アルバトロスは奪えずもバーディ締め。「攻める姿勢や優勝を目指している姿は見せたいと思った。結果として追いつかなかったけれど、いい優勝争いはできたと思う」と振り返った。
 
2014年以来の大会2勝目、そして7打差大逆転を目指した松山英樹は、差は変わらずに10位に終わった。追いかける立場で初バーディは6番。「遅すぎますね」として、「プロが、プレッシャーをかけなくてはいけない立場の人が、みんなプレッシャーをかけられなかった」と話した。
 
日本男子ツアー史上7人目(8回目)のアマチュア優勝。今大会のフィールドで唯一のアマが、記念大会のタイトルをさらっていった。プロたちは“アマ”杉浦悠太に賛辞を送るとともに、次は“プロ”同士でしのぎを削る。(文・笠井あかり)

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