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チップイン連発の北米3連戦は『日替わり』状態 渋野日向子の3戦予選突破に見る現在地

北米3連戦で課題と収穫を見つけた渋野日向子はアジアシリーズに向かう(撮影:ALBA)

渋野日向子が北米3連戦を終えた。「AIG女子オープン」(全英)から1週間空いて臨んだカナダ戦ではからくも予選を突破し、最終日の最終ホールでチップインバーディを決めて4日間を締めくくった。一度もアンダーパーをマークできずに50位タイのフィニッシュで「ショットはいいけど」という言葉も聞かれ、バーディ締めにも結果の出ない1戦で表情は曇った。

厳しい戦いの中でも収穫はあった。この最終ホールのチップインは、前日ホールアウト後の練習の成果が顕著に現れたものだった。深いラフからのアプローチではフェースを開いて打つことが多かった渋野。それがうまくいかないと分かるやアプローチ練習場でキャディと相談し、今度はフェースを閉じてみると、これがうまくいきそうな予感。そんな試しが本番でも機能すると、翌週はさらにアプローチの正確さが増していく。

北米3連戦の2戦目となった「ポートランドクラシック」は、昨年大会の最終日を4位で迎えた場所(最終成績は28位タイ)。実はここにはパー3コースを改造した最大70ヤードほどは打てるアプローチ練習場があり、「遊び感覚でいろいろできた」とさらにバリエーションを増やすことに成功した。初日はチップインが2回。イーグルとバーディを決める技ありの寄せを披露し、歓声を浴びた。

さらに3日目には初日イーグルを記録した17番グリーン周りの硬い芝が密集したラフから「根こそぎ持って行った(笑)」と力わざの一撃も。これまたチップインと、寄せについては進化を実感しているのも間違いない。

昨年1年間を米国でプレーした経験に加え、そこでの失敗や成功体験は生きている。ところが今年は不運にも左手を痛めるアクシデントに見舞われ、ショット面での不安が常に口をつく。「日替わりです」と、いい日もあればにがい顔で振り返る日もある。ポートランドでは初日と3日目に「67」で回ったが、2日目と最終日は「72」と、ここ数試合は今ひとつ波に乗れない大会が目立つ。

これは先月のスコットランドでも同じで、初日に「64」の首位発進を決め、2日目も伸ばして2日間でトータル12アンダーまで行きながら、3日目に5オーバーと崩れた。そのまま上位争いから消えたのが、“日替わり”の一つの例だ。

全英を制した19年は絶好調。怖い物知らずで海外メジャー制覇、日本ツアーでも賞金女王争いを演じた。そして20年は海外に軸足を移そうかというなかでコロナ禍に見舞われスケジュールも大幅修正。21年からは大規模なスイング改造に踏みきり、今年の初めからは元の青木翔コーチに再び教えを請い、第二次スイング改造に着手。ところが4月に手を痛めたことによって、5月からは日米あわせて5戦連続予選落ちと、苦しい時間が続いた。

そんな時期を乗り越えての3試合連続予選突破。「クローガー・クイーンシティ選手権」では3日目に「68」をマークするなど光は見えつつある。この3日目はコースがパンパンに乾ききり、グリーンでどれだけボールが跳ねるか分からない状況の中でのもの。奥のピンに対してデッドに攻めようものなら容赦なく跳ねて奥のラフに飛び込むような状況でも、必至で食らいつきスコアメイクに成功。そこで得た自信を半信半疑でなく、常に持ち続けることが今後への課題といえそうだ。

とはいえ、このクローガーではコースレイアウトによるディスアドバンテージも感じることになった。パー4、パー5のホールでは、ティショットの落下地点にアゴの高いバンカーが点在。キャリーで230ヤード以上あれば越えられるところでも、「飛ばないから手前に打つしかない」と少しでも曲がればバンカーに捕まるのを避けて、手前に刻むケースが頻発。「コースが違う」と、飛距離面で優位に立つ選手との差を痛感した。

刻めばユーティリティや風向きによってはフェアウェイウッドを握らざるを得ないなか、飛ばす選手はウェッジでグリーンを狙う。その差は歴然で、これは西村優菜や、日本では飛距離が出る勝みなみも感じる部分となってしまった。

「1、2週間で大きくなれるわけではないし、10ヤード、20ヤード伸びるわけでもないし」と、先々の目標としては体のコンディションづくり、そしてビルドアップの必要性も強く感じる。米ツアーの強者たちのなかでは、「もう一段階、二段階、自分のレベルを上げないと」と、飛距離面を含めてやるべきことは多い。その一つ一つをクリアするには時間がかかるが、アプローチ力の向上にもあるように、「地道にやります」と覚悟はできている。

米ツアーも残り8戦。最終戦はその前週終了時のポイントランキング60位までが出場できる。10月から始まるアジア4連戦はポイントランキング上位のみ出場。欠場者が出れば出場は叶うが、クローガーを終えて同71位の渋野にとっては、ほかの選手のエントリー状況次第。日替わりプレーを確かなものに変えていくため、「出られる試合には出る」と終盤戦に臨み、結果を求める構え。さらには同80位までに与えられる来年のシード権、ツアーメンバーとしての初優勝と、様々なものを追いかけていく。思い切りのいい渋野らしいゴルフ、安定して好スコアを出すゴルフが、今年中に戻ることを願う。(文・高桑均)

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