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タイトリスト『T-SERIES』のフィッティングで本当に学べる“スコアのために”大事なこと

PGAツアーでここまで評価されるアイアンはない!

PGAツアーの22-23シーズンを終え、タイトリストは10季連続PGAツアーNo.1アイアンに。ここ20年でも実に19度目のNo.1と、なぜ世界一の舞台で選手に信頼されるのか? 一端を探るべく、同社の国内フィッティングの総本山・タイトリストフィッティングセンター藤沢を訪れ、フィッティングスペシャリストの石橋氏にT-SERIES』をフィッティングをしてもらうことにした。
 
ボーケイウェッジが常時50%超の使用率で、ボールに至っては70%超。スコアにおける“守り”は最重要だから選手に信頼されるのは分かる。加えてアイアンは14本の半数を占める“核”。重要度は言わずもがなだが、石橋フィッターは「PGAツアーNo.1を口にすると“難しい”と思われることもありますが、一般層にも“本当にゴルファーのことを考えているブランド”と、ここ10年でやっと浸透してきました」と言う。

「アメリカは国土が広く芝から打つ練習場も多く、約30年前から一般のゴルファーへのフィッティングを行っていますが“本当にゴルファーのことを考えている”との評価を得たのは、ここ10年と聞いています。日本では単なる【試打】と【フィッティング】を混同する方も多いため、フィッティングの重要性や、スコアに大事なことをご理解いただくには時間がかかると思います。

ですから、新しい『T-SERIES』を通じてそこを伝えて頂けると有り難いですね。もう一つ、我々の製品づくりとフィッティングが関連していることも、ぜひ伝えたいです。PGAツアーでも長年たくさんの選手と対話を重ね、一般のゴルファーでも同様に膨大なフィッティング経験を基に、細かな改良を重ねることで、新たな製品が作られています」(石橋フィッター)
 
約30年も絶え間なく、トップからボトムまで対話を重ねて改良されてきた、タイトリストの新作アイアン。スコアのために個々人に合うモデル選びが重要なのは当然だが、新たな製品が生まれる背景には、積み重ねた「フィッティングが根幹」となっていた。
 
3つの「D」で最適な弾道を!

記者のクラブを持ち込んで打ち、計測器「GCクワッド」で詳細に確認してくれる石橋フィッター。現状の課題や、記者が認識する弱点以外の盲点もあぶり出してくれるのだが、昨今フジクラが『TRAVIL』などで“アイアンの落下角度”の重要性を語りだしたが、タイトリストはその先の話をしてくれる
 
アイアンパフォーマンスにおいては3つのDという説明をしていて、Distance Control(飛距離の精度)、Dispersion Control(左右ばらつきの抑制)、Descent Angle(落下角度)を細かく見て、最適なモデルを選んでいきますね。落下角度が最近広まってきましたが、きちんと見れる計測器でぜひ確認をお勧めしたいですね。ここがアイアンフィッティングの重要なポイントですから。

また、Distance Controlの部分ですが、番手間のボールスピードが均等(約2.24m/s)になっているかを注視します。理想的な番手間の距離差を実現するには、まずこの初速の部分が均等に整うモデルを選ぶこと。それだけでなく、スピン量や落下角度など、総合的に見て合うモデルを一緒に探しますが、合うものはピークハイトと呼ぶ、全番手の高さも揃ってきます」(同)
 
記者もスピン・落下角度・左右のバラつきは見てきたが、ドライバーの初速は意識しても、アイアンの各番手の初速など、全くの無頓着。勧めに応じて『T100』➡『T150』➡『T200』➡『T350』を打った結果、初速が安定して、番手間も2.24m/sに近づくのが『T200』と判明した。

もちろん、左右のバラつきや落下角度も十分で、4機種の中で『T200』が一番“3つのD”が整っていた。記者は以前、前作『T100S』をフィッティングせずに購入したため、てっきり「後継の『T150』にハマるはず」と思いきや、意外な盲点を突かれてしまった。
 
「カッコいい=難しい」を完全払拭

自分の『T100S』よりも僅かに大きく安心感が増した『T150』が第一候補だった記者。今作はTitleistロゴがバックフェースの真ん中に配置され「これぞ、タイトリスト!」なカッコよさに惹かれた人も多いはず。記者もその口だが、『T200』も前作のバッヂ感が消え、より美しい上に理想の階段が作れると分かり、即決だった。
 
「今回の『T-SERIES』は単にデザインが変わっただけではなく、多くのPGAツアー選手やフィッティングの結果をクラブ開発にフィードバックし、より寛容性が高く、構えた時のルックス(形状のプロファイル)も各モデルをコンボしても違和感のないデザインになっています。

しかも、前作よりスピンも入ってくれます。フェースのCNCミーリングの精度向上で平面性が高く、タテ距離の精度向上だけでなく、ヨコのバラつきにも関連しますね。『T200』の形状はPGAツアー選手の要望でキープしていますが、前作に比べて打感が飛躍的に良くなりました」(同)

この打感は、初球から衝撃だった。「初速は前作と同じ」とのことだが、前作より明らかにソフトで“ギュムッ”とフェースがたわんでボールをつかむ球持ちの良さも即決した理由。前作のやや硬い弾きと違って音も穏やかで、これならフライヤーや飛び過ぎの心配もなさそうだ。
 
また、前作『T300』と違って『T350』も内部の高密度タングステンをトウ・ヒールに配分する高MOI構造に。『T100』や『T150』も一見すると手強いブレードに見えて、実は一枚板の軟鉄鍛造より遥かにやさしい複合・高MOI。PGAツアー選手の多くが形状を犠牲にしない、高MOIアイアンを選ぶ事実がある。「カッコいいアイアンは難しい」の、昔の常識を完全払拭していた。
 
シャフト選びにも発見が!

記者のエースは『N.S.PRO MODUS3 SYSTEM3 TOUR125』(S)だが、『T200』にヘッドを決めた後は、シャフトを探していく。石橋フィッターが「トゥルーテンパー『LZ』も試してみては?」と勧めるが「いや、モーダス125Sより合うものがあるわけない!」と、思い込む記者が渋々打つと『LZ』も好相性で驚いた
 
「タイトリストでは0.5インチ短いスペック含め、数多くのシャフトを試せますが、全てを打つ時間と体力の余裕はないため、過去の蓄積から推奨を絞って提案させていただきました。『モーダス125』(S)で問題ないと思いますが、これを選ぶ人は『LZ』でも結果が出る傾向があり、それぞれのシャフトで、近しいグループ分けをしています」(同)
 
石橋フィッターのこの“記者の好みの先回り”には驚かされた。何気ない会話にみえて、実はフィッティング当初の問診・聞き取りが緻密だ。試打データの分析だけでなく、「ゴルファー個々が気持ちよく打てているか?」も大事に、長く付き合えるクラブを短時間で探してくれる
 
先入観は失敗の元。スコアのために己を知る

ギア担当ならクラブに精通して当然で、購入ミスなどあってはならない。これが記者の“あるべき姿”だが、恥ずかしながら『T100S』をフィッティングせずに購入し、シャフト選びに失敗したことを正直に明かす。やさしいヘッドも、合わないシャフトじゃ宝の持ち腐れだ……。
 
昔のエースのままで『T100S』を眠らせた記者だけに、今回フィッティングの重要性が嫌というほど身に沁みた。石橋フィッターは「HSの速くない人は『T350』や『T400』など大型ヘッドを勧められがちですが、女性が『T150』で理想に近い弾道になった例もあります。先入観なくじっくり試すと意外に長く付き合えるモノが見つかりますよ」と言う。
 
つくづく、アイアン選びは大事だと思う。6~8本の“核”が決まらなければ、UTやウェッジにも影響する。故に替えるリスクも大きく、失敗すると記者のように手痛いダメージを負う。顔よし・打感よし・寛容性よしのヘッドは他社でも選べるが、「自分のスコアの弱点が見つかる」ソフト面を含めて考えると、T-SERIESのフィッティングが一番の近道かもしれない。
 
Text/Mikiro Nagaoka

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