【しょうこの心情系人物コラム|堤優太】私だって、フットサルが好き!

「フットサルが好き」。彼が口にした言葉は、妙に私の心に響いた。

木暮賢一郎監督が目指す高いレベルのゲーム構造と、それを実現するための強度の高いトレーニング。選手たちも「難しい」「頭を使う」と話す日本代表の新システム構築に向かう日々は、頭も体も一瞬も気を抜けない。

ピッチを縦横無尽に駆け、神経を研ぎ澄まし、それこそ1mmのコントロールを意識し、コンマ1秒の判断力を駆使するようなせめぎ合いのなかで、ふと彼を見るとああ、楽しそうだなと、感じさせられる。

つっつーの愛称で親しまれる堤優太。やっぱり彼は、フットサルが大好きなんだと思う。

文=しょうこ

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サッカーが大好きだったから、毎日たくさん練習をした

AFCフットサルアジアカップ2024予選。7日の初戦、オーストラリア代表戦で先制した日本は、13分にPKを獲得してリードを広げた。そのきっかけを作ったのが堤だった。

私はちょうど、堤が得意とする右サイドを正面に捉える位置でカメラを構えていた。堤がドリブルを仕掛けて私のほぼ目の前で中に折り返すと、その瞬間、堤の「ハンド!」という声が響いた。私は思わず「はやっ……」と声を漏らす。

ドリブルもパスも速い。でも、なにより判断が早い。走ってきて、パスを出して、相手がスライディングをして、堤は自分が着地するかしないかの体勢で声をあげていた。私が「あ、手に当たった」と“思っている時にはもう”声が聞こえていた。コンマ何秒かはわからないけど、私はその判断スピードに改めて驚愕した。

7月21日のFリーグ第9節、堤の所属するY.S.C.C.横浜はホームでシュライカー大阪と対戦した。2-0で迎えた第2ピリオド序盤、堤は自陣のキックインの流れから右サイドを持ち上がり、体格のいい大阪の井口凜太郎の寄せをものともせずシュートを打ち抜いて追加点を挙げた。菅原健太が下りてきてブラインドになったので、堤をマークするはずの磯村直樹も動き出しが遅れ、こうなると堤のスピードには追いつけない。菅原とのコンビネーションも素晴らしかった。

試合後の記者会見で堤はそのシーンについてこう話した。

「菅原選手が下りてきたので、相手がマークをどうするか。僕は手前ではなく奥を見ていて、相手がマンツーマンでついていったのでスペースが空いた。僕のスピードであれば勝てる自信があったので決断した」

すると隣に座る鳥丸太作監督が思わず「怖いですよね、目の前じゃなくて奥を見ているんですよ」と漏らす。あの一瞬でそこまで判断しているなんて本当に怖い。脳内の処理スピードはどんなことになっているのか。堤の解像度でフットサルを見てみたい。目の前で起きた「ハンド!」の場面で、その時、そう思ったことを思い出した。

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チームの要であるから当然、リーグ戦の出場時間は長く、試合後の記者会見にも参加する。8月のある日は、夏休みイベントの一環として記者会見を見学した小学生の質問にも応じていた。

「小学生の頃、栄養はどうしていましたか?」その子のお母さんが聞くと、堤は「なんでも食べて、よく寝て、たくさん練習するのが一番」と返答した後に、こう続ける。

「サッカーが大好きだったから、毎日たくさん練習をした」

9月末、日本代表の国内合宿で私も聞いてみた。

「リーグ戦であれだけ長い時間プレーをして、ブラジル遠征にも行って、帰ってきてまたリーグ戦に出て、代表の強度の高いトレーニングに臨んで、どうやってコンディションを保っているのか」

すると、こういう答えが返ってきた。

「僕はフットサルのことが大好き。それが一番のモチベーションになっている」

か、勝てない。左利きというタレントやあのスピード、そして判断力の早さを持っていて「こんなトレーニングのメソッドが」「こういった最新のケアが」といった理論ではなく「好きだから」と言われたら、もう完敗。おそらくサッカー少年だった頃から変わらず、純粋な“好き”という気持ちを持ち続けているのだと思うが、楽しめるってなによりの才能じゃないか。

そういえば今年の6月、堤にこんな質問をした。

「横浜に移籍をして進化のスピードが増したように見える。その要因は自分の伸びていくタイミングと移籍がちょうど合ったのか、横浜のスタイルが自分に合っていたのか、どちらなのか」

堤の答えは「両方」だった。ベテラン選手からアドバイスを受けていた立川・府中アスレティックFC(当時)時代も自信を持ってプレーできていたが「まだまだ自分を出せるのではないか」とも思っていた。そのタイミングで横浜から声がかかり移籍を決断した。2021年12月、日本代表のトレーニングキャンプに初招集され「世界で戦うために必要なこと」を痛感していたなか、2022年4月に鳥丸監督が就任し、「フットサルの“奥深く”」を教わった。

「自信やプライドをもってプレーできている」と話す堤は、こちらが質問するまでもなくこう続けた。

「ワールドカップまでの代表活動にすべて選ばれるように頑張っていきたい」

私は「今から代表の話を聞こうと思っていたのに!」と笑ったが、ここでも一歩、二歩、先をいかれてしまう。なんだかドリブルであっという間に抜き去られる瞬間を疑似体験しているようだ。

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2023年の重要な活動にはすべて招集されている。「すべての代表活動に選ばれる」プランは順調だ。だが、アジアカップもW杯も、まだ出場は決まってはいない。自分たちの力で出場権を勝ち取りながら、自分の場所も勝ち取らねばならない。その戦いの渦中にいる堤に対して私は、一歩先と言わずとも、並走するくらいの質問ができるだろうか。

彼に、遅れを取りたくない。

11日は、完全アウェイのチャイニーズ・タイペイ戦。W杯出場に近づくその瞬間まで、私は堤の“スピード”に置いていかれないように必死に、一瞬も目を離さずに見届けようと思う。私も、堤に負けないくらいフットサルが好きだから。

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