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総合指標WARで村上宗隆を上回る鈴木誠也は、果たしてMVPに値するのか<SLUGGER>

「優勝チームの4番で本塁打王」となれば、村上(右)のMVPは当確に見えるが、最新指標で見ると鈴木(左)はそれ以上に優れていた。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
12月15日にNPB AWARDが発表される。セ・リーグMVPはヤクルトの優勝に大きく貢献した村上宗隆(ヤクルト)で決まり、という雰囲気が色濃い。ただ、純粋に成績だけを見れば、村上に勝るとも劣らない数字を残した選手が一人いる。鈴木誠也(広島)だ。

全143試合に出場し、リーグ最多タイの39本塁打を放った村上に対し、鈴木は故障で11試合に欠場したものの2度目の首位打者に輝き、最高出塁率のタイトルを獲得。さらに長打率、OPS(出塁率+長打率)でもリーグ1位を記録した。

実は、勝利貢献度を示すセイバーメトリクス指標WARでも、村上の7.4に対して鈴木が8.2と上回っている。ただ、データスタジアムでアナリストを務める佐藤優太氏によると、意外なことに守備や走塁面ではこの両者は五分五分だった。

「守備での失点抑止貢献を示すUZRを見ると、鈴木はライトでリーグトップの5.9とゴールデン・グラブ賞にふさわしい働きでした。一方で、村上も三塁で3.5とまずまずの成績です。異なるポジションを一概には比較できませんが、ライトとサードに関してはWARのポジション補正値がほぼ同じなため、単純にUZRで上回る鈴木が守備での貢献度は高いと言えます」
「走塁面で言うと、村上はベースランニングや併殺回避による得点貢献で鈴木を上回っています。盗塁に関しては成功率の低さが響いてマイナス評価でしたが、トータルでは村上が上。守備は鈴木、走塁は村上という“行って来い”の構図でした」

では、どこで差がついたのかと言えばやはり「打撃」だった。

「シンプルに打率・出塁率・長打率を見ても鈴木の方が上回っていて、OPSは1.072と.974で100ポイント近く引き離しています。さらに、村上はチームの本拠地が打者有利の神宮なので、こうした見かけの数字以上に鈴木の打力が図抜けているわけです」

このように、WARでは鈴木が村上を上回ったわけだが、MVPは新人王や沢村賞と異なり、単なる成績だけでなく「優勝にどれだけ貢献したか」を重視する向きも少なくない。ベースボールジャーナリストの氏原英明氏もその一人だ。

「僕は、MVPが優勝チーム以外から出る時は、優勝チームに該当者がいない、他に本当に大きなインパクトを与えた選手がいる、この両方がなければダメだと思っている。そういう意味で、誠也の成績はそこまでずば抜けているわけではない。ずっと優勝争いの中にいた村上と、消化試合を戦っていた誠也ではプレッシャーのかかり方も違うわけですからね」
一方、解説者の谷繁元信氏は「下位球団でもプレッシャーのかかり方はそれほど違わない」と語る。「どういう状況であろうと、1本のヒット、1本のホームランを打って、打点を1つあげるのは凄く大変。(村上と)比較すると多少プレッシャーのかかり方が違うというだけで、鈴木も素晴らしい成績だった」。

だが、谷繁氏はそれでもなお「MVPは村上でしょ」との意見だ。
「ホームラン王で、打点王にも1打点差。立派のひと言ですよね。それに休まなかった。試合に出続けて、チームリーダーとしてみんなを引っ張っていく姿も素晴らしかった。4年目、22歳の選手とは思えない。あの若さでチームを引っ張っていた貢献も大きかったです。1年間休まずに出続けて、なおかつチームが優勝、そして日本一になった。これはもうMVPだと思いますけどね」

構成●SLUGGER編集部

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