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「好投手を打ち崩す鉄則」を体現――青木の決勝打の裏にあった西浦のアシスト【氏原英明の日本シリーズ「記者の目」】<SLUGGER>

勝ち越しを決めたのは青木の一打だったが、この日の真の殊勲者は西浦(写真)と言うべきかもしれない。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
やや差し込まれた打球がセンターの前にポトリと落ちると、観衆からはため息が漏れた。

オリックス宮城大弥、ヤクルト高橋奎二による投手戦で推移した日本シリーズ第2戦は、8回表2死一、二塁から39歳のベテラン・青木宣親のタイムリーにより、1点を先行したヤクルトが2対0で制した。

やっぱり青木だったか――。息が詰まる投手戦の中、試合を決めるのはベテラン選手であることが多い。

青木は早大卒後に入団したヤクルトで、2年目の2005年に202安打をマークするなどヒットメーカーとして活躍。12年から舞台を移したメジャーリーグでは、6年で7球団を渡り歩くジャーニーマンとして、どのチームでも存在感を示してきた。

百戦錬磨の青木から一打が出たことに多くの観衆は納得せざるを得なかったに違いない。だがこの場面において、失点を許した宮城が最も悔いていたのは青木の一打ではなかった。

「青木さんっていうよりは前の打者、フォアボールとヒットを出してしまったことが点数が入ったきっかけかなと思います。ランナー出さずに行けたらよかったなと思います」

先制の契機となったのは、1死から8番の西浦直亨が四球を選んだからである。その後、1番の塩見泰隆がレフト前ヒットへ繋いでから青木を迎えた。宮城は適時打よりも、西浦と塩見の打席を悔いていた。やはり、ヤクルトの8番打者の存在は大きかったのだ。
宮城は「特に投げにくいと言うのはありませんでした」と振り返っているが、この日、西浦の打席はターニングポイントになっている。6回、それまで早めに追い込む投球で無安打に抑えていた宮城が初安打を浴びたのも西浦。これが潮目になった。

カウント2-1からの4球目を弾き返したそれは、「好投手を打ち崩すために打者有利のカウントをいかに作るか」を完璧に実行していた。

8回の西浦の四球も、余計な球に手を出すことがなかった結果であり、ヤクルト打線はその流れに続いている。塩見はカウント1−1から捉えた打球、青木も1ー0の2球目を思い切って振り抜いた。

シリーズに入ってからの西浦の活躍は目覚ましい。決して目立った活躍ではないのだが、第1戦にも西浦はいぶし銀の活躍を見せている。2打席目の三振を喫した場面では、相手先発の山本由伸に10球を投じさせていた。第3打席には安打で出塁していたのだった。

この日がそうだったように、目立った活躍ではなかった。とはいえ、黒子に徹した選手の目に見えない働きは極めて貴重なのである

好投の宮城から1点をもぎ取り、勝利を掴んだ西浦の存在は、この先のシリーズでもカギを握るはずだ。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』『甲子園は通過点です』(ともに新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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