中井卓大

レアル・久保と並ぶ「日本の至宝」中井卓大 今後大注目の18歳を解説

写真:中井卓大 (Photo by Koji Watanabe/Getty Images)

(大会直前のため再掲載)

レアル・ソシエダに所属する日本代表MF久保建英は、リオネル・メッシを輩出したバルセロナのカンテラ出身の21歳だ。“日本の至宝”として愛される久保と並んで、注目選手がいる。それが、中井卓大だ。“銀河系軍団”レアル・マドリードの下部組織でトップチーム昇格を目指して奮闘を続ける18歳にスポットライトを当て、飛躍が期待される今後のキャリアについて展望していきたい。(文・井本佳孝)

世界一厳しいトップ昇格をかけた競争

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中井がレアル・マドリードの下部組織に入団したのは9歳の時で、地元の滋賀県で行われたキャンプに参加し、日本人初のレアル下部組織入団が決まった。マドリードに家族とともに渡った中井はアレビンと呼ばれるU-11、U-12のカテゴリーに所属すると、その後はファンティール(U-14相当)、カデーテB(U-15相当)、カデーテA(U-16相当)と順調に階段を上り、AからCまでカテゴライズされたフベニールにも昇格。2022年2月にはクラブとの契約を2025年まで更新すると、8月24日にBチームに当たるカスティージャへステップアップを果たすことが発表された。

レアル・マドリード・カスティージャは、サテライトチームにして、下部組織のトップチームでもある。監督はラウル・ゴンサレスで、現役時代はレアルとスペイン代表で活躍したレジェンドストライカーがこのチームを率いている。カスティージャの最大の理念として、1人でも多くの選手をトップチームに昇格させることが挙げられており、優秀な選手たちはトップの練習に参加させ、世界トップの環境で場数を踏ませる方針をとっている。実際に中井もフベニール時代などにトップの練習に参加してきた。直近でも、第6節のアトレティコ・マドリード戦に向けた練習に参加したことが報じられている。

しかし、ここから本格的なトップチームへの昇格と定着が難しいミッションであるのもまた事実である。世界中の有望な選手たちを豊富な資金力とブランド力で獲得可能なレアル・マドリードというクラブにおいては、チーム内での競争に加えて、新たに加わってくる世界トップクラスの選手たちも競争相手になり得る。トップへ昇格を果たした後もレンタル移籍や他チームへの完全移籍で活躍の場を求めている選手もごまんと居る激しい競争に置かれた中で、中井にはカスティージャで自分の実力を証明し、昇格候補に挙げられるような存在になることが求められる。

レアルの中盤に君臨する最高の教科書

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(Photo by alphaspirit)

中井の選手としての特徴は高いボールコントロール能力とキープ力で、中盤のボランチやセンターハーフでのプレーを得意としている。試合を読む力や状況判断にも優れ、チームの心臓となり得る選手である。レアルでは2018年のバロンドール受賞者であるクロアチア代表MFルカ・モドリッチや2014年W杯優勝者のドイツ代表MFトニ・クロースが長年絶対的な柱として中盤を支えてきた。攻守にわたりハードワークができ、決定的な仕事もこなす万能型のモドリッチと、試合をコントロールする能力に長け、長短の精度の高いパスで周りを生かすことができるクロースの2人は、中井がさらなる成長を果たす上で最高の教科書といえる存在だ。

そんな中井にとってカスティージャにおける将来的なライバルとなり得るのが背番号10を背負うセルヒオ・アリーバスだ。2012年にレアルの下部組織に入団したアリーバスは、2020年にカスティージャに昇格すると、同シーズンにはラ・リーガやチャンピオンズ・リーグの試合に出場し、トップチームデビューを果たしている。左利きのアタッカータイプである20歳のスペイン人選手は右ウイングを得意ポジションとしており、中井と比較するとより攻撃面で違いを生み出す選手だが、中盤の有望なタレントとして評価を集めているアリーバスのようなタレントとしのぎを削り、ポジション争いにも勝っていくことがこのレベルの高い環境でのミッションだ。

これまで日本人選手ではインテルでプレーした長友佑都、マンチェスター・ユナイテッドでプレーした香川真司、最近では南野拓実がリヴァプールという世界トップクラスの環境に身をおいた。彼らは欧州のクラブで経験を積んだ上でステップアップでメガクラブへ移籍を果たした形だったが、中井は下部組織からレアルのトップチームを窺う立場に成長を遂げていいる。長年スペインに在住し言語面での問題がないこと、ユース年代からチームが自身の特徴を把握できる環境でプレーし続けていることは中井にとって最大のメリットである。ここから数年での奮闘次第では、レアル・マドリードのトップチーム昇格というこれまで日本人が踏み入れられなかった未到の地へ到達する可能性がある。


(次のページ「日本代表で“夢の中盤”結成なるか」へ続く)

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