「目からうろこ」の男女混合チーム戦【舩越園子コラム】

優勝したリディア・コ(左)とジェイソン・デイ。男女ゴルファーの息の合ったプレーが見られた3日間だった(撮影:GettyImages)

米フロリダ州ネイプルズのティブロンGCで「グランド・ソーントン招待」が12月8~10日に行われた。PGAツアー選手16名、LPGA選手16名の合計32名がチームを組み、3日間54ホールをプレーする男女混合のチーム戦として、今年初めて開催された。

米ゴルフ界では1960年以来、男女混合のチーム戦が40年ほどの長きにわたって開催され、多くのゴルフファンに愛されていた。しかし、タイトルスポンサーが3度も変わり、85年からは「JCペニー・クラシック」と呼ばれていた同大会は、ジョン・デーリー(米国)&ローラ・デービース(イングランド)組が優勝した99年大会を最後に姿を消し、以後は一度も開催されなかった。

そして今年、24年ぶりの復活となった男女混合チーム戦。競技方法は初日がスクランブル方式(2人のショットの良い方を選択)、2日目がフォアサム(1つのボールを2人が交互に打つ)方式、最終日はアレンジを加えた変形フォーボール方式(各ホールで2人のスコアの少ない方を採用)だった。

しかし、出場する男子選手の中で世界ランキング最上位は19位のジェイソン・デイ(オーストラリア)で、スコッティ・シェフラー(米国)やローリー・マキロイ(北アイルランド)といったトップ中のトッププレーヤーの出場は皆無だった。

おまけに、今大会の開幕直前には、USGA(全米ゴルフ協会)とR&A(全英ゴルフ協会)による「飛ばないボール」への規制が正式に発表され、その翌日にはジョン・ラーム(スペイン)がLIVゴルフへ移籍したことが発表。ゴルフ界の注目を奪われていた。

しかし、蓋を開けてみれば、初日から最終日まで大勢のギャラリーが詰め寄せ、売店ではフード&ドリンクは3日間とも完売。「想像を上回る大成功だった」と大会関係者は笑顔を輝かせていた。

最終日は接戦となったが、ジェイソン・デイ&リディア・コ(ニュージーランド)のペアが2位に1打差のトータル26アンダーで優勝。2人は今回が初対面だったそうだが、「元世界一」どうし、息の合ったプレーぶりを披露して、ティブロンに集まったファンを沸かせていた。出場した選手たちは男女とも「こういう大会の必要性を痛感した」、「もっとやりたい、やるべきだ」と口を揃えていた。

オフシーズンのTVマッチとはいえ、賞金総額400万ドル(約5億8000万円)、優勝賞金100万ドル(1人50万ドル、約7200万円)は、とりわけ女子選手にとっては、あまりにも魅力的である。リディアが2023年シーズンにLPGAの大会で稼いだ賞金の最高額は「BMW女子選手権」3位で獲得した14万7030ドル(約2000万円)だったが、今大会では一気に50万ドルをゲットした。

それならば、日頃からPGAツアーで大金を得ている男子選手たちは、今大会のどこに魅力を感じたのか。デイは「リディアのウエッジの扱いに魅せられ、思わずショートゲームを教わった。女子選手ならではのワザを間近で知ることができたのは大収穫だった」と話した。

若手選手のサヒース・ティーガラ(米国)いわく、「ランキング的にトップとは言えず、ビッグスターではない僕らだけでギャラリーを呼べるのだろうかと不安だったけど、ネリー・コルダやリディア・コ、リリア・ヴ、ローズ・チャンといった女子選手の集客力に驚かされ、圧倒された」という。

中堅選手のジョエル・ダーメン(米国)は「ギャラリーの中で、子どもたち、とりわけ女の子の人数はPGAツアーの会場で見るより、はるかに多かった。来年からは出場選手とチームの数を拡大して、もっと大規模な大会にしたらいいのでは?」と提案した。

そして、大ベテラン選手のビリー・ホーシェル(米国)は、「LPGA選手たちと一緒に戦い、大勢のゴルフファンが喜ぶ姿を目の当たりにしたことで、僕たちPGAツアー選手は、ファンのことやファンが求めるものを学び、知ることができた」と大きく頷いていた。

PGAツアーやPGAツアーのトッププレーヤーだけが絶対ではなく、男子選手と女子選手が力を合わせれば、多大なる力を生み出すことができると知った今大会は、PGAツアー選手たちがPGAツアー神話を自ら崩し、見直した「目からウロコ」の大会だった。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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