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おやじゴルフニュース「ロフト15度から45度までUTフルラインナップのキムラが、その打ち方を考えた」

イラスト・とがしやすたか

ゴルフのスランプ脱出計画もひと段落、どうにか山を越えたようです。気づけばキャディバッグの中は、UT(ユーティリティ)ばかりになってしまいました。幾らアイアンが苦手とはいえ、UTの数がハンパないです。

数えてみるとロフト15度の3番ウッド相当のUTから、ロフト45度のピッチング相当のUTまでフルラインナップで揃っています。最近は9番アイアンも使わなくなり、アイアン消滅の危機ですか。

アイアンがなくてもコンスタントに100を切れますから、UTはかなり使えるクラブじゃないかと思っています。こうやってUT礼賛の記事を書いていますが、UT多用にピンと来てない方もいると思います。「見た目が嫌い」「フェースの向きが分からない」「どう打っていいか分からない」など、ネガティブ意見も結構多いのです。

そこで今回、改めてUTの歴史を紐解きつつ、性能や打ち方を考えたいと思います。まずはこれです。

1)UTの歴史
テーラーメイドがレスキューを発売したのが2001年、そこからユーティリティ文化が花開きます。レスキューのヒットを受け、各社こぞって似たようなクラブを作り始めました。その新クラブの総称をユーティリティと呼ぶようになります。意味は「役立つ」「有益なもの」です。まさに超役立つ、万能クラブだったんですね。

最近、ユーティリティは発音しづらいのか、多様性の時代を象徴してか、ハイブリットと言ってます。つまりアイアンやウッドなど、様々な要素をかけ合わせたものということでしょう。

UTクラブ20年躍進の背景には、アマチュアの飛距離競争がありました。アマチュアゴルファーは、セカンドショットで180ヤードぐらいまで飛んで曲がらないクラブがなんとしても必要でした。さすればピンを狙えるし、あるいは寄せワンで、パーがとれるかも知れないとね。

そうするにはロングアイアンか、フェアウェイウッドを打たねばならない。けど私を筆頭に、ロングアイアンなんてまともに当たらない。そもそも日頃打ってないですから。じゃフェアウェイウッドはどうだ。ボールはかろうじて前に進むが、それでもトップやダフリ、引っかけが多発、スコアにならないことが多かったのです。

そんなときにアイアンのように高い球が打てて、ウッドより簡単に打てるUTが現れ、重宝されるようになりました。もちろんアイアン上手でも、ロングアイアンよりラクに高い球が打てるとUTを選ぶ人がいました。

2)ハイブリットと呼ばれて
ここでUTが苦手な人の意見を聞くと「ヘッドがどこを向いているか分からない。だから打ちづらい」という人が多いです。

UTはまだ誕生して日の浅いクラブです。だから日々進化しています。ショートUTなるクラブが発売されたのも、ここ2~3年の出来事です。だから設計も斬新なのが多く、抵抗感がある人もいるわけです。

ここで選ぶにあたってのヒントは、自分の好きなクラブを思い描くことです。個人的にはアイアンよりウッドが好きなので、UTでもウッドに近いクラブを選びます。だからソールが広く、ヘッドを滑らせても打てるUTを好んで使います。

一方、アイアンが好きな人はソールが狭めのアイアン型のUTを打てばよいのです。ただアイアンは最近、飛び系アイアンが出回り、アイアン革命を起こしています。だからアイアン好きからUTへはさほど流れず、ウッド好きからUTへ流れる人が多いかなと思います。

現在ロフト45度のUTを試験的に使っていますが、なかなか使いでがあります。フェースの高さがさほどなく最初は面食らいますが、打ってみるとロフト角が近いピッチングよりミスが少ないです。

特に冬場、芝が枯れていたり薄かったりするときに重宝します。ミスはウェッジより少ない。けど距離の精度やボールの高さではもう少しかな。大叩きしないクラブという点では、充分合格じゃないでしょうか。

3)UTのメリット&デメリット
これだけUTを誉めると万能と思うでしょうが、実は弱点もあります。例えば深いラフとかね。やはりそこはアイアンで出すべきでしょう。UTでもソールが広いウッドタイプは、ラフだとボールの下を潜ったり、あるいはボールの頭を打ちがちです。

最近ショートUTなるロフト35~45度のクラブが売られていますが、私の場合、ラフでは使いづらいです。それはフェースの高さがさほどないからです。だから無茶をせず、PWで出して刻むのがよろしいかと。

あとUTは簡単すぎて、ティショットでよくミスをすることがあります。つまりフェアウェイで打ちやすいから、日頃、ティアップして打つことに慣れていないというか、練習をしていない。

そもそもフェアウェイでちゃんと打てるのだから、ティアップして打つのは簡単だろうと、ナメてかかるんですね。けど実際は、微妙なティの高さのせいで天プラを打ったり、引っかけたりしがちです。

これはティアップして打つ練習をするか、いっそティアップしないで打つかですよね。

逆にメリットとしては、1本のクラブで飛距離を調整しやすいです。スリークォーターやハーフショットが打ちやすいのです。アイアンの場合、距離を合わせに行くと、シャンクしたりすることもあるでしょう。UTは基本シャンクしないので、軽く振ってもそこそこいい球が出ます。

だから1本のクラブの守備範囲を広げて、バッグに入れているUTの本数を減らせばいいなと思っています。以前はロフト40度のUTで40ヤードから100ヤードまでカバーしていました。そういう打ち方はクラブ選択に悩まずすみます。

ただしそれはロフト40度のUTが、絶好調のときに限ります。日頃の練習も大事ってことですね。

4)最初の1本が大事
いいことを多めに書きましたが、案外苦労するのは最初の1本目のUTです。一番最初に打ったUTはインテスト、俗に言うタラコでした。最初はアイアン型を使っていたのですが、いまいちしっくり来ず。それからウッド型に変更して、UTに開眼した次第。

それからズームもアイアン型とウッド型を同時に使ってみましたが、ウッド型にはまり、最終的にウッド型のズームCを5本買い揃えました。

それから時が経ち、今はキャスコがお気に入りですが、最初のモデルのトルネードを打てるまで時間がかかりました。何回打ってもダメでしばらく放置していたら、突然開眼して打てたんですね。

それからキャスコを集めだし、それは今のUFOシリーズにまで繋がるというわけです。打つコツはたいしてありませんが、しいて言うならリキまないこと。つまり簡単に打てるように作っているので、単にクラブを振り下ろせばいいだけ。下手な小細工をしないほうがいいみたいですね。

だからある日、力を抜いて軽く打ったら凄く飛ぶじゃないの。こういうことかと分かった次第です。

UTに情熱を注いでいる会社は、どの領域までUTで打てるのか、試行錯誤しているようです。私の知る限りでは、ロフト50度のUTがあります。ほとんどアプローチウェッジと同じロフトじゃん。いよいよUTのサンドウェッジが出るか? いえいえ、それは恐らくチッパーがその役割を果たしてくれるんじゃないでしょうか。

サンドウェッジが発明されて約90年、UTが発売されてまだ22年、飛び系アイアンが発売されて、まだたったの7年です。従来のクラブ性能で販売競争するよりも、まったく新しいコンセプトの新商品を出したほうが売りやすいし、売れやすいかと思います。ただそれはコケるリスクもあり、ビジネスとしては難しいところもありますがね。

ゴルフ界では今、もの凄いイノベーションが起きています。素材、形状の開発などで、アマチュアゴルファーはより飛び、簡単に打てて精度も増します。けどアマチュアの平均スコアはさほど伸びてない。

何故なら人間の技術は遺伝しないからです。誰でもゼロからゴルフを覚えねばならない。そこが大変で、かつ面白いところなんでしょうね。

■プロフィール■
木村和久
きむら・かずひさ/1959年生まれ、宮城県出身。世の中のトレンドを追求し、ゴルフや恋愛に関するコラムを多数執筆するほか、マンガ原作も手がける。隔週刊ゴルフ誌「ALBA」ほか、連載多数。
 
とがしやすたか
1959年生まれ。東京都出身。「青春くん」などで知られる4コマ漫画家。ゴルフ好きが高じて雑誌でラウンドレポートなども展開。

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