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【コラム】すげぇやつがきた!15歳・Fリーグ最年少出場&デビュー戦で決勝弾、羽生恒平って何者!?真面目で図太い、でもおとなしそうな次世代エースにギャップ萌え|Fで戦う者たち

「フウガはさ、『こういう展開になったらいいよな』とか、『この試合でアイツが決めてくれたらドラマだな』ってことが、なんか本当に起こっちゃうチームなんだよね」

Fリーグの取材を終えた6月4日、同じく現場に来ていたライター兼実況・福田悠さんのそんな話を聞きながら、横浜武道館からの帰路に着いた。翌日、月曜夜に行われた今シーズン最初のフウガドールすみだのホームゲームで、まさに“それ”は起きた。

文=青木ひかる

開始3分“できすぎ”な劇的ゴール

2007年11月7日生まれ。現役高校1年生、羽生恒平のFリーグ初出場、初ゴール。

第2節、バサジィ大分を相手に「15歳6カ月29日」で決めたそれは、Fリーグ最年少得点の新記録となった。しかも、決勝点。さらに、開幕節がスコアレスドローだったすみだにとってはチームの初得点。ドラマチックで“できすぎ”なゴールである。

この試合は、清水誠也の出場停止に加え、星龍太もメンバーから外れ、すみだは前節から大幅にスタメンを入れ替えていた。経験豊富な守護神・岸将太、諸江剣語、中田秀人、畠山勇気とともに、スタートからピッチに立ったのが羽生だ。

背丈のある選手が揃う大分に対し、180cm台の清水と星が不在のなか、逆に高校生ルーキーを起用したすみだの指揮官・北隅智宙監督の決断には正直驚いた。ただ、試合が始まり、デビュー戦とは思えない堂々とした羽生のプレーには、さらに驚いた。

これはもしかすると、もしかするかもしれない──。

記録更新の可能性があることをSAL編集部に連絡するため、スマホを手にした時だった。左サイドの畠山の折り返しを、中央の位置で受け取った羽生が勢いよく左足を振り抜いた。豪快な一撃がゴールネットのど真ん中に突き刺さる。鳥肌が立った。

その後、何度もゴールに迫り、存在感を示した羽生は当然、試合後のヒーローインタビューに呼ばれる。ただ、受け答えする姿はまるで別人だった。細身で少し猫背な彼は、少し自信なさそうに話している。その立ち振る舞いと挙動はまるで、昨シーズンまですみだでプレーした宮崎曉を見ているかのようだった。

諸江剣語も驚くギャップの持ち主

試合を終え、同じセットでプレーしたすみだの最年長・諸江剣語に羽生の印象を聞くと、「真面目すぎて、真面目なことをいじられまくっています。みんなから愛されている」と教えてくれた。一方で、「ピッチに入ったら普通にやっていて、けっこう図太い。途中からはなんの心配もしなかった」とそのギャップに驚きながらも、太鼓判を押した。

取材を終えて帰ろうとすると、清水と一緒に帰宅準備する羽生を発見した。ワイルドな風貌の清水と並ぶと“舎弟感”が強く、少しだけ笑ってしまった。「はじめまして」と挨拶すると、「はじめまして」と2度、頭を下げる。平日だったことを思い出し、「今日、学校は?」と尋ねると、「4時間授業で、終わってから来ました」とはにかんだ。

「絶対決めようと思っていたんですけど、試合前は緊張しすぎてお腹が痛かったです……」

話しながら汗を拭う羽生の横から、「お前、これからもちゃんと取材してもらえるように活躍しろよ」と兄貴分が背中をたたく。

「俺が初得点したのなんて23歳とかだったし、(弟の)和也もたしか17歳とか。あいつは名古屋オーシャンズを相手にいきなりハットトリックだったから、それはそれですごいけど、恒平はまだ15歳ですから。度胸が違いますよ、度胸が」

試合をスタンドから見守った清水は、高校生Fリーガーとしてデビューし、当時の最年少得点記録を更新した実弟の過去を振り返りながら、新たな弟分の活躍を讃えた。

ナイトゲームを終え、時間はもう22時近く。ヘタをすれば、高校生は補導されかねない時刻だ。「中学生は帰る時間だよ」と促す試合運営スタッフの声かけに、羽生が「高校生です!」と返して起こったひと笑いを解散の合図にして、3人でアリーナの階段を降りる。

「お疲れ様でした!」


今宵生まれた、真面目で図太いすみだのニューヒーローは、先ほどと同じく2度頭を下げた後、夜の墨田区総合体育館を後にした。

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