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【日本代表】木暮賢一郎監督、1年ぶり招集・加藤未渚実と絶好調・中田秀人に言及「未渚実のようなタイプが必要だった」「(中田は)まだこのタイミングじゃなかった」モロッコ遠征前記者会見ほぼ全文

フットサル日本代表は4月10日から4月19日にかけてモロッコ遠征を行い、モロッコ、フランス、クロアチアとの国際親善試合を戦う。

今年は2024年のワールドカップ予選を兼ねたAFCアジアカップの予選が控えている。木暮賢一郎監督は、Fリーグのシーズンオフ中に行うこの活動でどんな狙いを持って臨むのか。

招集メンバーに目を向けると、吉川智貴ら常連組がいる一方で初招集の山中翔斗、久しぶりの招集となった加藤未渚実、髙橋響がメンバーに選ばれ、3月の全日本フットサル選手権大会で活躍し、フウガドールすみだの優勝に貢献した中田秀人が外れた。選手選考の背景には、どんな理由があったのか。

10日の代表活動前に木暮監督が取材に応じた。

国際マッチを重ねることが強化につながる


──この遠征の狙いについて。

我々の23年度のプランニングとして上半期と下半期に分けていて、その上半期の活動としては、U -23のフランス遠征、タイ遠征、そして今回のモロッコ遠征という3つを継続的に見て考えています。

さまざまな選手の組み合わせや、さらにレベルアップするために必要な、戦術的な部分もそうですけれども、W杯予選が下半期に入ってくるので、そこに向けて様々なことをテストしたいというのがあります。ただ選手が変わっても、トライしたいことがあっても、代表チームとして誇りを持って、すべての試合で勝利のためにベストを尽くすことはつけ加えたいと思います。

上半期での成果を様々な角度で分析して、下半期のW杯アジア地区予選、年明けのW杯予選を兼ねたAFCアジアカップを突破していきたい。我々も楽しみにしていますし、上半期最後の遠征として、いい遠征にしたいと思っています。

──モロッコは前回のW杯で躍進した国の一つです。モロッコとフランス、クロアチアの印象とその国とマッチメイクを組んだ意図教えてください。

まずモロッコに関しては、フットサルだけではなく、サッカーでも躍進をし、すばらしい成果を上げている国だと思います。アフリカチャンピオンですし、ヨーロッパでプレーしている選手も多くいる。2024年のW杯がモロッコで開催されるという噂もあり、力を入れている国と対戦できることは、我々にとっていい機会になると思います。アフリカでのアウェイゲームを戦うのは、数えるほどしかない中で、開催地や対戦国とともにいいマッチメイクだと思っています。

フランスとクロアチアに関しては、私の体制になってから、ヨーロッパの国とは対戦したことがありません。アジア、南米、ブラジル、そして先日のタイではアフリカとはやってますけども、ヨーロッパの国とぜひやりたいなと思っていたタイミングで、2カ国とできるのは非常に良い機会です。両国ともにWはい予選を勝ち進んでいるなかでの対戦なので、以前クロアチアが来日した時は相手はベストメンバーではなかったと記憶しています。フランス代表とは、最後に対戦したアウェイの2ゲームも勝てていなかったなか、非常にいい3ゲームが組めたと思っています。

──3カ国と対戦する上で、招集メンバーは16名と人数構成も多いです。初招集の山中翔斗選手、久しぶりの招集になった加藤未渚実選手と高橋響選手を選んだ意図を含めて教えてください。

各国16名にベンチ入りを認めた形式になっていますので、通常より2人多く招集できるということは、見たい選手だったり国際経験を積む必要がある選手の機会増だと捉えています。私にとってフル代表のユニフォームを身に纏って国際Aマッチで戦うことが代表キャリアの入り口だと思っています。16名の選手がその経験が得られることは、非常にありがたいことだと思っています。

名前が挙がった加藤未渚実については、(2022年5月の)東アジア選手権以来の招集です。我々は代表に値するたくさんの素晴らしい選手リストを持っているなかで、ゲームをしながら課題を抽出して、しかるべきタイミングで、積み重ねてきた競争を勝ち抜いた選手で大会に臨むので、常にメンバーを固定しているわけではありません。

左利きの選手は、ここ十数年で非常に多くのタレントがいます。そのなかでいくつかのタイプがあると思ってまして、今回の遠征に関しては未渚実のようなタイプの選手が必要だった。この上半期はテストしたい選手、組み合わせをしたい狙いを持ってますので、そのなかでのチャンスという位置づけです。

翔斗に関しては、私が兼務しているU-23日本代表からフル代表にどうつなげていくかというところでした。上半期の活動にはU-23の活動も含まれていて、彼はフランス遠征にも連れていった選手。金澤空や原田快、毛利元亮たちは3年、4年のスパンで下からの活動を重ねてきた選手です。アダプトすることは問題ないと思いますし、リーグでは新人賞を獲得しました。今だけではなく、数年にわたって観察しているなかで、今が呼ぶに良いタイミングだったというところ。招集メンバーも通常より2人多いなかで、バリエーションを持つことができ、あとは3試合あることも加味した経緯があると思ってもらえればと思います。

高橋響に関しては、立ち上げ時に参加して以降、オフィシャルのゲームに呼ばれる機会はなかった。招集もできない選手も数名いますので、そういったことと、彼に関しても招集タイミングを常に見ながらいたなかで、今回は非常にいいタイミングでマッチしたと思っています。フィクソの層を厚くしたいという狙いも当然ありますし、元々ポテンシャルがある選手だと思っています。初めての国際試合でどれくらいやれるのかというところをも含めて見たく、招集になっています。

──全日本選手権で活躍を見せていたフウガドールすみだの中田秀人選手がMVP級の活躍を見せ、清水和也選手との連係も期待できましたが、今回のメンバーからはなぜ外れたのでしょうか?

中田に関しては、全日本選手権だけではなく、リーグを通じていいパフォーマンスをしていて、クラブにとって非常にいい貢献度をしていると。おっしゃる通り、清水和也との関係性も十分認識しています。

彼だけではなくて、クラブの躍進につながるようなパフォーマンスを見せている選手が各クラブにいて、先ほどの高橋響ではないですが、呼ぶタイミングであったり、ポジションバランス、様々な背景で招集できない選手の有無、あとは戦術的にピヴォを何枚でいくのか攻撃守備のバランスも加味して、様々な角度から活動に対し、ベストな選別を図っています。

彼に関しては当然、最後の選手権を視察して、というところもありますが、招集の工程としては必ずしも直近の大会のパフォーマンスが代表に直結することではないと。当然、リーグ戦やどういう相手の時に高いパフォーマンスができているか、どういうポテンシャルを持っているか考慮しながらです。同じ左利きの選手でも今回5名と多く呼んでいるなかでも、様々なタイプに違いがあります。1対1に優位性がある選手、スピードがある選手、バランスを取れる選手がいる。左利きの層が厚い中で、クラブへの貢献度、パフォーマンスは十分理解していますけども、まだこのタイミングではまだこのタイミングではそこに割って入ってるというところには至らなかった。

ただ、もう一度言いますが彼だけではなく、各クラブで、そのクラブの躍進につながるパフォーマンスをしていて、代表に選ばれた経験のない選手がいることは認識しています。そういう選手がいることは、代表チームの層を厚くしていくことにもなるので、評価は評価として、様々な選手を見ています。

ポジションバランスとか、同じポジションの誰と競っているのかという様々な観点から見て今回に関しては招集していないというところになります。我々は育成年代からの選手も多いということは、クラブが一緒でなくても、代表チームとして長らく一緒にやってきている優位性もあります。クラブでのいいユニットを活用することもありますし、そうはない化学反応を起こるペア、トリオを探しているというのもあります。

──今回のメンバーリストですが、ポジション表記がアラ、フィクソ、ピヴォと3つに簡略化されていますが、変えた理由はありますか?

大きな理由があるわけではない。フィクソの選手がアラのような役割をこなすこともあると思いますけど、アラ・ピヴォタイプの選手が明確にいないことはあるかなと思います。

──今回はピヴォが少なく、2人にした理由は?

前提としてアジアカップも2枚で行きました。タイ遠征で3人連れて行ったのは明確に3セットを構成して、ゲームを進めていきたかったからです。

その背景としては、U-23でフランス遠征に行っている一つのセットをそのまま使うプランニングがあったので、明確に3セットを組んで臨んだという背景があります。

Fリーグの選手はシーズンの直前、もしくはシーズンインしたばかりのタイミングで、スペインの選手たちとコンディションの状況が違う。ただタイ遠征に比べると、疲弊している状態ではない。コンディションの具合は、各選手とコミュニケーションを取って、「ベストな状態で来てほしい」というのはオーダーしています。

タイの時のように疲れているなか、短期で4試合消化するのとは違います。事前に用意した3セットを使うプランニングではないので、そう考えた時にピヴォを3枚つれて行っても、出場機会が少なかったり、我々はピヴォを置かない時間帯を増やしたいという考えもあるので、3人をうまく使う機会が減るであろうというところ。元亮に関しては、まだ2部リーグですし、空たち同様よく知っているので、今回はしっかりクラブの中でプレーしてほしいと思っています。

──世界的にも強豪なインテルモビスターFSでプレーする山田凱斗選手の成長はどう見ていますか?

スペインリーグのインテルというビッククラブでプレー機会を得ていること自体が一つの評価になると思っています。なぜビッククラブで出られているかというのは、チームのために汗をかいて他の選手がやりたくないハードワークを行って、戦術理解度も彼は高い。いい選手に囲まれて、戦術を遂行するための信頼を得ているということがある。

ただ、日本代表では逆に同じプレーをされては満足できない。インテルの凱斗ではなく、よりイニシアチブを取ったり、代表チームで主役になれるパフォーマンスを要求しています。そこにどれだけアジャストできるかだと思っています。逸見勝利ラファエルと彼の2人しかスペインの1部でプレーしている選手はいないので、そういう選手が増えるのはありがたいです。

──金澤選手、清水選手、甲斐稜人選手が名古屋オーシャンズに集まったことについては?

2つあって。どのスポーツでも、代表選手が多く所属するクラブはベストな環境や競争力があるのは普通ですよね。それは私がどうこう思うというより、エリートスポーツにおいては当たり前のことかなと。結果を出しているクラブから代表選手が多く出るのは、誰が監督であっても自然なことだと思います。

もう一つは、そういうクラブにいったとしてもパフォーマンスが指針になることは間違いありません。ビッグクラブにいるから何かを担保されることもないし、高い競争力の中でハイパフォーマンスをするということを私たちはしっかり見る。ビッククラブにいることで満足するのではなく、移籍先で苦しい状況になるのは選手の使命だと思いますので、名古屋だけではなく、様々なクラブでいいパフォーマンスをしてほしいなと思います。

──環境が整うことで、個のパフォーマンスが上がる期待感はありますか?

もちろん2部練習ができて、フットサルだけができるというのは揺るぎない事実です。ただそれがピッチで(ハイパフォーマンスを)表現できるかというのは、可能性を上げることは間違いないですが、イコールではないです。環境が厳しいなかでプレーしていても代表でプレーするに値するパフォーマンスを見せる選手もいるのは間違いないです。

──改めて、木暮監督がアラの選手に求めていることは?

明確な基準として、スピードのある選手が多く、それは我々が求める基準の一つです。特にディフェンスにおいてファーストラインに入ることが多いですし、それはピヴォの選手も同様です。しっかりとプレッシャーをかけるためには、自分たちの足を使うことが必要で、足が速いとか、爆発的なパワーがあるというのはフットサルにおいて非常にメリットになるので、そこは一つ見ています。

そういった要素を一番求められるポジションがアラだと思っていますし、世界と戦うなかで、スピードを持って寄せることができるのかとか、たとえばイランのスピードのあるドリブラーに対して1対1で剥がされない、とか。下がらず勇気を持ってプレッシャーをかけるには、足を使えてリアクションのパワー、リアクションのスピードだったり、プレッシャーをかけてラインを上げるスピードや爆発的なパワーを一つの基準として持っています。そのあたりを見ていてもらえれば、代表選手のフィジカル的な必要性がわかってもらえるかなと思います。

攻撃に関しては、スピードを持ってプレーすることと、時間を作る選手を必要としています。時間を作るということは、サイドの1対1で相手に脅威を与えられるか。そして脅威を与えるだけではなく、そこからのモビリティやスピードを求めています。ピヴォとの連係やシステムに関わらず、アラの選手にはスピードと爆発的なパワーで脅威を与えることができ、運ぶドリブルができるということ、攻守のバランスがいいというのを求めています。

──今回のモロッコ遠征と前回のタイ遠征のメンバーをベースに、W杯予選のAFCアジアカップを戦うのでしょうか?

予選と言ってもその前に(東アジア地区の)1stラウンドとその後の本戦があって、期間も10月後半と年明けと分かれています。我々は常にメンバーは変えていますので、2つの遠征にいない選手でリストに入っている選手もいます。門が閉ざされているというわけではないですし、いつ・どんな時でもメンバーを入れ替えられるように進めています。

その進め方が、我々は国内合宿を多くやって、試合をしないなかで多くの選手を呼んで「いつでもいけるよね」という進め方ではなくて、1試合、2試合出ることによって、いつ何時招集されても素早くアジャストできるようにしていると思っていただければと思います。

──代表監督の立場からFリーグ側にお願いしていること、今後希望したいことはありますか?

特別オフィシャルにお話ししたことはないですが、あくまでもFIFA DAYSというものを活用して、アウェイでのゲームを行うことが我々の強化プランだと言ってます。一昔前のように、週末のリーグ戦を終えて、月・火・水曜に国内で合宿をして、クラブでその週のトレーニングを行うことができない状態でクラブにお返しをして、週末のゲームに出るということは一切していない。その代わり、FIFA DAYSというオフィシャルに選手を拘束できる期間で、今は海外でプレーする選手が多くなっているなかで、合宿のために選手を日本に呼ぶということも実質難しい。我々はあくまでオフィシャルなカレンダーに沿って強化を進めたいというお願いと理解はいただけています。

外から見たらリーグの狭間に活動して、過密に見えるかもしれませんが、それはどうすることもできません。FIFA DAYSは国外に出て国際マッチを重ねることが強化につながると思ってやっています。そこの理解をして、調整していただいていることに感謝しています。自分も選手だったので移動の負荷があることは理解していますが、それ以上に外に出てゲームを行うことは成長の機会につながると考えています。

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