• HOME
  • 記事
  • テニス
  • インカレ室内で成長著しい田口涼太郎が初の日本一!今後の進路については「まだまだテニスを続けたい」<SMASH>

インカレ室内で成長著しい田口涼太郎が初の日本一!今後の進路については「まだまだテニスを続けたい」<SMASH>

第1シードの白石光に決勝で勝利して優勝を果たした田口涼太郎(近大)。写真提供:全日本学生テニス連盟
「確実に、彼ですね」。今大会第1シードの白石光が、「ここ数年で最も伸びた選手」として名を挙げた存在——、それが「彼」こと、田口涼太郎だ。白石と田口は、小学生時代から大会会場で顔を合わせてきた同期の友人。ただ、常に同世代のトップランナーだった白石に対し、田口はシングルスでの“日本一”とは無縁だった。

高校卒業後の進路も、田口が一番に望んだのは早稲田大学だったが願いは叶わず。一方、高校卒業後のプロ転向も囁かれた白石は、周囲の予想に反し早稲田大学へと進む。

「打倒、早稲田!」。近畿大学に進学した日から、田口の情熱はその一点に注がれた。

近畿大学の校風は、自主性を重んじることだという。コートやジムなどの施設は充実している一方で、生徒への強制力は極めて低い。

つまりは良くも悪くも、その環境をどう使うかは自分次第。そのなかで「自分で自分を追い込める方」だという田口は、1年生時から自らの課題に取り組んだ。

「パワーがなくて、フォアで全然決められなかった」という弱点を克服するため、トレーニングで上半身を徹底強化。テニス部専属のメンタルコーチにも師事し、「たとえ失敗しても、トライしたことは無駄にはならない」との思考回路も脳に焼き付けてきた。

結果、白石が認める急成長を遂げた田口は、今年8月の全日本学生テニス選手権(インカレ)で、かつて自身の遥か先を行ったその友人に勝利。自信を獲得し駆け上がった今大会の決勝戦では、白石との頂上決戦を迎えていた。
白石にとってはインカレ時のリベンジを、田口にとっては「打倒早稲田」の悲願成就を胸に期した一戦は、両者が歩んできた足跡を映すかのような展開となる。

第1セットは、体力を削り合うようなストローク戦とブレークを繰り返すなか、最後は白石が抜け出し先取。

「白石君に勢いを与えたくない。先にセットを取りたい」と思っていた田口にとっては、落胆を隠せぬビハインドだ。

ただ取った白石にとっても、決して手ごたえを得ながらのリードではなかったという。「涼太郎は常に攻めてくるので、ストローク戦でプレッシャーを覚えていた」。その精神的な圧迫感が、第2セットではスコアに反映される。

「トライしたことは無駄にならない」の信念を胸に抱く田口は、劣勢に追いやられても常に、攻守逆転の一手を狙い続けた。自信を深めているサービスでは、布石を打ちつつ重要な局面で相手の裏をかいてみせる。スコアほどに一方的な展開ではないが、第2セットは田口が6—1で奪回した。
迎えたファイナルセットでも、勢いに勝る田口が第3ゲームでブレークに成功。その後は白石に幾度もブレークチャンスを握られながらも、危機の時ほど田口のサービスは白石の読みの逆に刺さった。

決定的な分水嶺は、田口サービスの第8ゲーム。白石が2連続ブレークポイントを手にするも、この場面で田口は、ワイドに鋭く切れるスライスサーブで、白石に反応すらさせぬエースを決めた。

諦めきれぬようにボールマークを確認した白石は、「めっちゃ(ラインに)掛かってるわ。ナイスサーブ」と声を漏らす。このエースを皮切りに、田口は4ポイント連取でキープに成功。

そして、2ゲーム後——。最後は、田口のボレーを必死に追った白石の返球がネットを越えず、3時間34分の死闘に終止符が打たれる。その時、田口はコートに背から倒れ込み、“日本一”の雄叫びを上げた。
激闘の、数分後。互いの健闘を称え、「あのポイントが取れてたらな~」と笑顔で試合を振り返る二人の姿があった。

既に多くの学生タイトルを手にしている白石は、再来年の卒業後のプロ転向を既に表明している。一方、テニスは大学までと考えたこともあった田口は、「今はテニスが楽しい。まだまだテニスを続けたい」と表情に光を灯す。

先行してきた白石と追い上げる田口の足跡は、この先で幾度交錯し、どのような名勝負を生むだろうか?二人の成長曲線で紡ぐ物語の先に、田口の進むべき道も浮かび上がってくるはずだ。

【全日本学生室内テニス選手権大会 決勝結果】
■男子シングルス
田口涼太郎(近大)5−7、6−1、6−4 白石光(早大)
■女子シングルス
阿部宏美(筑波大) 6−2、3−6、6−0 永田杏里(慶大)
■男子ダブルス
藤原・下村(慶大)3−6、6−1、10−8 丹下・白石(早大)
■女子ダブルス
神鳥・齋藤(早大) 7−6(5)、6−3 清水・谷井(駒大)

取材・文●内田暁

【PHOTO】「2021年度 関東学生テニストーナメント」決勝スナップ集

関連記事