藤井寛子,卓球

続々と頭角を現す中学生選手を紹介 女子編

来月(8月)開かれる「第53回全国中学校卓球大会」を前に、前回、元全日本ダブルスチャンピオンで卓球教室のコーチを務める藤井寛子さんに、将来有望な中学生男子選手の情報を聞いた。今回は、女子選手について語ってもらう。(取材・文/二株麻依)

《中学生女子》

■小塩悠菜 おじお・ゆうな 中2/JOCエリートアカデミー・星槎中学校(神奈川)・トップおとめピンポンズ名古屋

小塩悠菜,卓球
提供:Rallys

藤井寛子(以下、藤井):私がいま注目しているのは小塩悠菜さんです。カットマンのお姉さんと姉妹でエリートアカデミー(JOCによる、国際大会で活躍できる選手を育成するための機関)に入っています。お母さんが強くて、大学生のときに全日本ランク入りしている選手だったのですが、そこからなんとプロボクサーになって。子供たちもお母さんの影響で最初ボクシングをやっていたのですが、結局は卓球を極める道を選びました。この姉妹の良いところは、身体能力がすごく高く、あまり型にはまっていないところです。悠菜さんはペン表(ペンホルダーのラケットに表ソフトラバーを貼っている)で、持ち方もすごく独特なんですよ。ラリー中にはシェイクに持ち替えて(シェイクハンドのラケットの持ち方をして)カットマンにもなります。おもしろいでしょ? 前へ攻撃に出たり、台から離れてカットしたり。変幻自在な様子は、海外の人が見てもおどろいています。

■面手凛 めんで・りん 中3/山陽学園中学校(岡山)・木下アビエル神奈川

面手凛,卓球
提供:Rallys

藤井:地元岡山で小さい頃から頑張って強くなった子です。今も地元の中学に進学して頑張っていますね。手足がすごく長くて、細身ではあるのですが、両ハンド(フォア、バック)の強打が持ち味です。コツコツ頑張る子で、練習したことをきちんと試合で出せるというのも彼女の持ち味だと思います。あとはボールタッチがとても良くて、ボールの上をこするカウンター(相手の攻撃に対して自分も攻撃的に打ち返すこと)が得意。1個ずつ覚えて試合でしっかり出せる子ですね。

■張本美和 はりもと・みわ 中2/川中島中学校(神奈川)・木下アビエル神奈川

張本美和,卓球
提供:Rallys

藤井:絶対強いですよね。実力的には、日本の中学生の中ではナンバーワンかなと思いますし、ボールタッチの感覚の良さはお兄ちゃん(張本智和)のものを引き継いでると思います。気持ちの強さはお兄ちゃんより強そう。お兄ちゃんは負けちゃうと泣いちゃったり、崩れちゃったりすることも結構見かけるんですが、美和ちゃんはあまりないですね。気持ちの切り替えもすごく上手そうで。試合前に踊っていて、パッと切り替えて試合に入ったりします。負けていても攻め続けられる気持ちの強さを持ち合わせています。サービスはすごく上手ですし、パワーのあるドライブもするんですが、これが上手というよりは、本当に総合力が高いです。基礎がしっかりできているんだろうという印象ですね。ミスをしないですし。卓球は絶対台に入れなくちゃいけない競技で、入らなかったら得点になりませんが、絶対に入れる技術力を誰よりも持っていると思います。

■香取悠珠子 かとり・ゆみこ 中1/JOCエリートアカデミー・星槎中学校(神奈川)

香取悠珠子,卓球
提供:Rallys

藤井:彼女は、去年、ホープス(小学生の全国大会の5、6年生の部)チャンピオンになり、エリートアカデミーに入ったところです。練習量をすごく多くこなし、研究心もあるんですよ。サービスは、こうやって出したらもっとうまくいくとか、いろんな方法を試していて。バックのボールタッチもすごく良いです。フォアはまだ少し穴があるんですけど、バックの方はボールさばきがすごく上手で、相手の力を利用したり、自分から打ちにいくこともできます。バックの感覚が良いと、まず守備的な部分ではミスをしないという面で、守りが堅くなるというのが一番にあると思います。あとは、自分でコースの変更ができる。バックの下手な子は、ストレートへ(正面へ)うまく打てない選手が多いのですが、先にストレートを狙えると相手を大きく動かすことができるので、体制を崩させて次を狙いにいけます。上手い選手は、ちょっと横回転をかけたり、スライス気味に曲げたりもできるし、弾いたりもできるし、いろんな球種が出せますね。そうすると相手は待ちにくいですし、崩れやすくなります。香取さんのバックの感覚、他の子よりもすごく良いものを持っていると思います。

回転量と緩急が大事になってくる

藤井寛子,卓球


――これまで強い子どもたちのお話を伺ってきましたが、中学生になると戦い方は変わるのでしょうか。

藤井:小学5、6年生からしっかり回転をかけて打つという男子に比べ、女子は台の近くでパンパンパンって打つピッチの早い卓球が主流になります。そして、中学生の強い女子選手は、ドライブの回転量を重視したり、その中にピッチの速いボールを織り交ぜたりして勝っていくというイメージです。(続く)

>>特集連載:元卓球日本代表 藤井寛子「今、卓球が熱い理由」

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