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野口勝成。ビーチフラッグスで、世界へ突き抜けるために選んだ道。

今後は海外選手とさらにレベルの高い戦いをしていくことになる

——先日行われた全日本選手権では3位という成績を残しています。

だから今回の全日本選手権は開き直って臨みました。余計なことは考えずに、目の前の1本に対して悔いなく終わることを意識してやったところ、メダルを獲ることができました。結果的に負けはしたものの、すごく楽しかったです。

旗が取れなければその試合は終わってしまいますが、自分が速くなればなるほど勝ち残って楽しめる時間も長くなります。

特に自分は気持ちの振れ幅の大きい選手だと感じています。その中で今回は気持ちをよりフラットにして、いつも通りにやろうと心がけたところ、試合が終わってほしくないくらい楽しいと思えたんです。6月の種目別の時は1本毎が本当にきつくて、早く終わってほしいと思っていましたから、そこは大きく変わった部分ですね。

——試合前はコンディションを整えるためにいろいろと細かい部分にまで気を遣っているようですね。

試合前はすごく神経質になって、考え方もネガティブになりがちなので、ソワソワしている自分に安心感を持たせたくなります。

例えば家族が風邪を引いているといつも以上に手洗いうがいをしたり、食事の時間をずらしたりと普段全く考えないようなところにまで気を遣うようになるんです。そうやって自分が安心できる状態をキープすることで、これだけやったから大丈夫という気持ちで試合に臨むことができます。試合前日になって、やるべきことをやっていないと不安になってしまいますからね。

——レース直前に精神状態を保つためにやっていることはありますか。

まずコースに入る時に手を叩きます。サッカー選手が気持ちを上げるためにやったりもしていますよね。

試技の体勢に入る時には皆、砂を整えるのですが、他の選手が手でやる中で自分は足でやっています。ビーチフラッグス選手は繊細な方が多くて、中には砂で傾斜まで付ける人までいます。でも僕は何も考えずに、前のレースで乱れた部分だけを直してすぐ寝ます。そこで頭のスイッチを入れて、一切何も考えないようにしています。そこは選手によって様々で、安心してから寝るのか、寝てから安心するのか、の違いですね。

野口勝成

お金持ちよりも、人に影響を与えられる選手に

——野口さんはこれからより競技に専念していく予定だとお聞きしました。

そうですね。最近は特に競技に費やす時間が大切だと感じています。日中8時間僕が仕事をしている間も海の向こうでは練習をしている選手がいます。もちろん仕事をしながら競技で活躍するというのは素晴らしいことではありますが、世界ではもっと競技を徹底してやっている選手がいます。僕は日本チャンピオンになってから本格的に世界に出ていきたいと考えているのですが、過去2回のオーストラリアでの挑戦を通して、海外に出るためにはもっと競技に時間を使わないといけないと思いました。

だから僕の人生をビーチフラッグスに徹底していくことに決めました。年明けから3ヶ月間はオーストラリアで活動して帰国し、6月の種目別に臨むというステップを今は描いています。それぐらいやらないといけないと強く思っています。

——仕事をしながら競技を続けるということが一般的なうちは日本の競技力は世界において、厳しい立場のままかもしれませんね。

世界で戦うためには突き抜けないといけないですからね。だからもっと自分もビーチフラッグスに向き合う必要があると判断して、今回仕事も辞めて競技に専念するという決断に至りました。

——ぜひ活躍して、これからビーチフラッグスを始める人々に勇気を与えてほしいです。

僕は競技をしてお金持ちになりたいとか、そういうことではなく、人に影響を与えられる選手になりたいんです。自分も高校まではヘタレでしたから(笑)でも何歳からでも日本で一番になれるということを証明していきたいです。そして他のプロスポーツと肩を並べるくらいにライフセービングを高めていければ、競技人口も増え、それが海の安全を守ることにも繋がってきます。最近は台風などの影響で水辺の事故というのも増えていますからね。

まずは自分が日本チャンピオンになって、野口勝成みたいになりたいと思ってビーチフラッグスを始めてくれる人が1人でも出てくることが夢です。

——収入源を断つという大きな決断はなかなかできないと思います。

もちろん無職になるということに対して不安はありますよ(笑)実家が自営業をやっていて、本当は僕が長男なので継ぐところではあったのですが、わがままを聞いてもらって、今は弟が関係する勉強を大学でしてくれています。家族に迷惑をかけている部分もあるので、僕は結果を残すことで恩返ししていきたいという気持ちもあります。

——目標としている人はいますか。

やはり和田賢一さんです。選手としての実力はもちろんのこと、競技以外の普及の面など、ライフセーバーとしての新しい道を探してくださっていると感じています。日本で一番になる方というのは実力以外の面でもすごく優れている人だと思うんです。

チームメイトとして関わる中で、和田さんの人間性にも多くを学ばせてもらっています。ただ、憧れとしてしまうと手の届かない存在のように感じてしまうので、僕の中では和田さんは超えなければならない人としています。

——和田さんもそのように自分を追いかける選手がいるというのは嬉しいかもしれませんね。

だから何か和田さんに返せるものがあるとすれば、僕が倒すことだと思っています。倒せる人がいなければ、和田さんは日本にモチベーションを感じなくなってしまうかもしれません。でもまだまだ僕は和田さんの足元に及びませんけどね(笑)

——今後の目標を教えてください。

来年頭からオーストラリアに行き、最後には全豪選手権に出場します。そこでのメダル獲得が直近の目標です。

——競技を続けてきて、辛かったことを教えてください。

実は僕は大学4年になる時に大学のライフセービングクラブを辞めています。プール競技に力を入れていくチームの方針とビーチフラッグスをより追求したい僕と方向性に食い違いが生じてきたことが原因です。

このままチーム方針に従い、自分の気持ちを押し殺して続けるのか、辞めてビーチフラッグスに特化していくのか悩みました。その年は成績も良くなかったので、焦りもあった中で不安でしたが、決心して今所属している式根島ライフセービングクラブに移ることにしました。

野口勝成

——ここからはプライベート面を含めた質問をしていきます。オフの日にしていることや趣味を教えてください。

音楽が好きで、Fear, and Loathing in Las VegasやSiMなどのハードコアなロックをよく聴きます。あとはよく新しい音楽を発掘しています。CDレンタルコーナーにあるピックアップアーティストを見て聴いてみたり、好きなアーティストの関連から開拓していったりします。

でも気がつくとビーチフラッグスの動画を観ていることが多いかもしれません(笑)年中ビーチフラッグスのことを考えているからでしょう。それで他の選手の動きを参考にしたりすることもあります。家ではマルチーズを飼っているので、犬の散歩をすることも趣味です。

——ビーチフラッグスをしていなかったら何をしていましたか。

スポーツ選手にはなりたかったですね。周りの人が僕と繋がっていることを自慢できる人になりたいと思っていました。水泳からどの競技に移るか考えていた時にたまたま出会ったのがビーチフラッグスだっただけで、もしかしたら違うスポーツをやっていたかもしれません。

——ご自身の魅力はどのようなところにあると思いますか。

周りの人からも言われるのですが、すごく真っ直ぐな人間なんだと思います。不器用でもあるということですが、それもいいところだと言って頂けています。好きになったものに対して真っ直ぐ向き合えるということが長所なのかもしれませんね。自分でも「真っ直ぐ、マイペースに」という言葉を大切にしています。

——最後に読者の方にメッセージをお願いします。

皆さんにはスポーツに限らず、どんなジャンルでもいいので何か自分のモチベーションになるものを見つけてほしいです。そして現在僕は日本で3位ですが、今のうちから見てもらって、チャンピオンになるまでのその過程を見てもらい、成長を感じて頂けたら嬉しいです。

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