石井宏司が語るキャリア転向と、女子プロ野球の意義。

スポーツ界で求められる“学習力”と年齢に対する考え方

スポーツ界で働く上で大切なのは“学習力”です。

理由は2つあります。1つはまずスポーツ産業は未熟で、まだ若いステージにあるから。その段階では明確なルールや、仕事の方法論が定まっていないため、教えてもらいたくても教えられる人なかなかいません。そうなると自分でやってみて、失敗しながら学ぶしかなく、これをひたすら高回転で回していくことでできるようになるほかないのです。

もう1つはスポーツが他の産業に比較すると、規模は小さいものの、ビジネスモデルの幅と種類は多いという「総合型産業モデル」という性質があるからです。スポンサー獲得のための法人営業、ファンサービスのための企画考案、その他にもチケット、グッズ、飲食販売などがありますが、それらは本来それぞれ別のビジネスだったりするんです。公共のスタジアムを利用するためには法律知識も必要ですし、選手との契約業務もあります。私もそれらを何とか機会を見つけて自分で学んでいきました。

幸い私は今までのキャリアでいろいろな仕事に回ることが多かったので、経験がないものを突然渡されても楽しみながら、成果を出していくコツは掴めるようになっていたと思います。

今は高齢化も進んできて、40歳からもうひと山登り、70歳過ぎまで働かないといけなくなってきています。大企業でいつ来るか分からない出世コースを待ち続けてくすぶっているくらいなら、いっそ40歳でキャリアチェンジしてみるのもいいのではないでしょうか。40代になれば体力の衰えなどもあるかもしれませんが、その分積み重ねた経験もありますし、上と下の世代を繋げるしたたかさも持っているはずです。私自身もこの歳になって営業する時には逆に企業の上の方と会えるようになりました。年齢によって失うものもありますが、増えるチャンスもあるんです。

若い人はスポーツ業界に行きたいというより、成長するフィールドに身を置くことが大切だと思います。成熟産業における責任あるポジションに着くための順番待ちの長蛇の列に並ぶか、荒地でもいきなりリーダーを任せてもらえるスポーツ業界に行くのか。どちらの選択をするかだと思います。

プロ野球も楽天やDeNAなどの参入によって、球団改革を若い人が行うようになりました。それを見ているとスポーツ界は飛び込んでしまえば意外と年齢関係なくできる世界であると感じています。

私は遅れていると言われているこのスポーツ産業の発展に何らかの形で貢献していきたいです。その中で女性のスポーツ産業という特に新しいジャンルにおいて、成功というとおこがましいですが、少しうまくいったという事例を作れるといいですね。世界的にも女性のプロスポーツは難しいと言われていたりするのですが、欠けている何かを見つけて、ブレイクさせたいと思います。

前編はこちら

関連記事