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女性は赤ティから打つもの? 呼称としての「レディスティ」廃止論

白ティはレギュラーティとも呼ばれ、普通の男性ゴルファーがプレーするティというイメージがある(撮影:ALBA)

「もう、レディスティという呼び方は、コンプライアンス的にダメなんでしょうか?」

複数のゴルフコース関係者から質問されました。多様性を認め合うジェンダーレスな世の中になっているので、レディス限定みたいな表現を避けるべきなのではないかと、誰もが敏感になっているのです。

21世紀になったばかりの頃から、「女はここから打て」と強制されているみたいで馬鹿にされている感じがする、という意見があって、レディスティという表現を廃止する動きがありました。ただ、赤ティとか、色だけで呼べば良い、という変更をしたコースもたくさんありました。

その頃は、鈍感力を発揮して、見ない聞かない知らないと無視していたコースが、今になって、焦っているのです。

「女のくせに白ティから一緒にプレーするなんて、生意気だ」という意見もありました(ひどい意見ですが)、「赤ティからでも、オーバードライブされると納得しないから、白ティで一緒に回って欲しい」という意見もあります。どちらも、女々しい男性心理が剥き出しで、ご同輩として、恥ずかしいやら、悲しいやら。

自分の飛距離に合わせて、飛ばないゴルファーには前方のティを使う権利があるというのが、グローバルスタンダードなゴルフのティ事情。注意したいのは、飛ぶからという理由で、後方のティを使う権利はないことです。混同しないようにしましょう。

そして、女性だからレディスティ(赤ティ)という考え方も、本来の目的からすると違う、ということになります。飛距離の出ない女性ゴルファーが多いから、結果的レディスティという呼び方になっているだけで、女性が使うティではなく、「より飛ばない人が使用するティ」というくくりにすべきでしょう。

また、ゴルフ先進国のコーチングで証明されているのが、前方のティで良いスコアを出してから、徐々にティを下げる方が、速く確実にゴルフは上達するということです。日本でも女子プロに聞いてみると、宮里藍を始めとして、赤ティでアンダーが出たら白ティに行けるという目標にしてゴルフをやっていたという経験をしているパターンが多いのです。

ジュニアゴルファーを現場で見ていると、幼い頃から後方のティを使っていた場合は、大叩きの練習を繰り返しているだけで、なかなか上達しない傾向がありました。

ゴルフ界全体として、性差の線引きをどうするのかは、議論が進んでいますが結論は出ていません。多様性への対応は、とりあえず当事者との話し合いを経て、納得のいくように実験的実施をするということになっています。

使用するティだけの問題だけにとどまらず、クラブハウス内のトイレなどの扱いも含めて、時代と共に変わっていくのだと思われます。余談ですが、今日から開催されるメジャートーナメント「全英オープン」の会場にもジェンダーレストイレが設置されているそう。

ゴルフコース関係者は、敏感なアンテナを張って、早め早めの対応をするしかありません。ゴルフは、そもそも老若男女、身分や肩書き関係なしで楽しめるゲーム。多様性への対処は本来得意なはず。

明確にわかっていることは、性別を問わず楽しむことができなければ、そのゲームは廃れてしまうということです。赤ティ=女性限定という固定観念と、レディスティという呼称を今後どう変えていけるか? そして赤ティを有効に使いやすくすることが、ベターなのだと思うのです。

(取材/文・篠原嗣典)

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