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快進撃のミュアフィールドで流した悔し涙、首をかしげた秋 「勝ちたい」という思い胸に2年目へ【渋野日向子のルーキーイヤー振り返り】

酸いも甘いも味わった2022年 この経験を2年目の飛躍につなげる(撮影:GettyImages)

来週23日(木・祝)に開幕する「ホンダLPGAタイランド」で米国女子ツアー2年目のシーズンがスタートする渋野日向子。ルーキーイヤーだった昨年は、メジャー大会での優勝争い、初シード獲得など大きな成果を手にした一方、終盤に差し掛かるにつれ調子を落とし苦しい時間も過ごした。渋野自身「スタートダッシュがよかっただけに、後半の失速で気持ちがだんだん下がっていってしまった」と語った2022年の後半戦を振り返る。

「ほかの試合とは違う感情ですね」。大会前にこう話したのは、8月に迎えた昨年の「AIG女子オープン」(全英)だった。2019年に制し人生を一変させた全英女子は、そんな気持ちがプレーにも反映されたかのように再び見るものをワクワクさせた。昨年のハイライトともいえる試合だ。とはいえ、その前の4試合は「KPMG全米女子プロ選手権」での途中棄権1度に、3度の予選落ちと決して本調子ではなかった。しかも会場はリンクス最難関との呼び声高いミュアフィールドだ。練習で回ると「む・ず・い」と言って笑うしかない、そんな様子だった。

それでも、英国では何かが渋野にのりうつる。初日にいきなり「65」をたたき出し、6アンダーで単独首位発進を切った。「スイングのことなんて考えられなかった」という難解な風に対しボールを乗せたり、ぶつけたりと自由自在のプレーぶり。海外メディアも『シンデレラが全英に戻ってきた』などと騒ぎ立てた。2日目は2つスコアを落とし後退したものの、3日目に「66」を記録。これで5打差ながら2位まで再浮上した。最終組入りを果たしたのだが、その相手が19年大会でともに最終日最終組を回り、渋野の優勝を見届けたアシュレー・ブハイ(南アフリカ)というドラマも生まれた。

一筋縄ではいかない、それが全英だ。このリンクスは、荒波の最終日を用意していた。イーグルあり、ダブルボギーありの派手なラウンド。ただ、ブハイも15番でトリプルボギーを叩くなど、ライバルたちも獲っては落としてを繰り返した。スタート時にあった差など、もはや関係ないと言わんばかり。結果的に1打及ばず敗れた渋野は、その事実を受け止めると「やり切った…ただすごく悔しい」と言って、涙を流した。

それでも最後は笑顔になるできごとも。チョン・インジ(韓国)とのプレーオフを制したブハイが、今度は全英女王の座に就いたのだ。その様子を見守っていた渋野は、ブハイ勝利の瞬間、自分のことのように歓喜した。満面の笑みを浮かべ、大きな拍手を送り続けた。

ただ、この活躍も劇薬にはならず、そこからもシーソーのような試合が続く。米国に戻った後、2試合連続で予選落ちをしたかと思えば、9月の「ポートランドクラシック」では、3日目を終えトップと1打差の4位につけるなど優勝を争った(結果は28位)。だがこの時もボギーフリーで「67」をマークし、3位発進を決めた初日のラウンド後に「う~んという感じ」と首をひねるなど、しっくりくる状態とはいえなかった。

10月には再び日本に戻り、ディフェンディングチャンピオンとして10月の「樋口久子 三菱電機レディス」に出場。最終的には9位という成績をおさめたが「先に進めている感じはない」。表情は必ずしも明るいというわけではなかった。そのまま日本でプレーした「TOTOジャパンクラシック」は64位、続く米ツアーの最終戦「CMEグループ・ツアー選手権」が49位。それでも「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」を10位で締めくくり、初めて米国を主戦場にした1年間を終えた。そのリコーカップ会場で出た言葉が、冒頭の「後半の失速で気持ちがだんだん下がっていってしまった」というものだった。

そこからおよそ1カ月後、クリスマスで盛り上がる昨年の12月25日に、渋野は出身地の岡山県にいた。自身が主催した小学生ソフトボール大会会場で、心からの笑顔を浮かべ子どもたちと楽しい時間を過ごしていた。そこで取材に応じた渋野からは「シード選手として出るからには勝ちを意識しないといけない」、「勝ちたいという思いが強くなった」。ストレートなまでの“勝利”への思いを聞くこともできた。オフは日本をメイン拠点に、昨年出た課題と向き合ってきた様子も伝わってくる。タイから始まるシーズンでは“2年目の飛躍”を期待したい。

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