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【新時代サッカー育成対談】幸野健一×北原次郎×菅原和紀×佐々木洋文|「北海道が『育成大国』になるために」|中編

掲載協力・WHITE BOARD SPORTS


■登壇者

・幸野健一|プレミアリーグU-11実行委員長/FC市川GUNNERS代表/サッカーコンサルタント
・北原次郎|プレミアリーグU-11北海道実行委員長/北海道コンサドーレ札幌アカデミーダイレクター
・菅原和紀|Faminas(ファミナス)監督
・佐々木洋文|トロンコ旭川FC 代表

■ファシリテーター

・北健一郎|サッカーライター/ホワイトボードスポーツ編集長


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降雪地域のフットサルはサッカーにメリットか?

──ケンさんは千葉にいて関東にはジェフユナイテッド千葉もあればFC東京もある。こういう環境は子どもたちのレベルは上がりやすくなりますか?

幸野 世界中みんな普遍的にそうなわけですから。

──世界中がですか?

幸野 やはり成長するには強豪ライバルが必要なわけで、それが身近にいる環境というのは当然ながら成長スピードは早いと思う。それがないとさっき次郎くんが言ったようにハンデになる。だからといって日本中均一にはできないわけだからその与えられた環境の中でやるしかないです。その中で青森山田高校じゃないですけど、僕ら指導者が創意工夫しながらその差を埋めるために全国を回ったりしている。寒冷地で大変だと思いますけど選手が育たないわけではない。僕の目からすると寒冷地はフットサルをしていますし、それが今日のテーマにもなると思っていましたけど、フットサルは果たしてサッカーにおいてプラスになるのかどうか。逆になるのであれば、それがハンデではなくメリットになる可能性もある。

──サッカーができなくてフットサルをプレーすることがメリットになる。

幸野 サッカーができなくてフットサルをやらざるを得ないかもしれないですがそのフットサルがサッカーにおいてもプラスになるのであればそれはまた違う見方にもなると思う。元フットサル日本代表の菅原さんもいますがその辺りは皆さんどう捉えているかを聞きたいです。

佐々木 そこに関してはメリットになると信じてやっているというのが正直なところです。どうであれ、フットサルをやらざるを得ない環境をどうやってメリットに変えていくかが勝負だなと思ってやっている。不利をどう有利に持っていくかというところの戦いだなと思っています。フットサルとサッカーで何がメリット、デメリットかという部分の整理は今まだ整理中ではありますけど、いかに狭い中でフリーの時間を作るかというところの勝負がフットサルにおいてはかなり長けていると間違いなく思う。そこに関しては確実にメリットだなと思っています。

ただ逆にレンジでいうと限りなく狭い中でプレーするのがフットサルなので外に出たタイミングで一番ネックになってくるのはそこだなと感じています。そこをどういうふうに調整していくかというところでは、実はまだ僕の中で答えがないのでそこをカズとも話をしながらどうやってやっていくかというのが、この地域を育成大国に持っていくところにつながっていくと思っています。

菅原 ヒロがチームを始めて4年目で僕は2年目なので2年先輩になりますけど、僕も当初は自分の経歴を信じて「フットサルの戦術をそのままサッカーに」とか「ピヴォ当てを攻撃の最終レンジに入った時の崩しに使えるのか」とか「パラレラと言われるフットサル戦術が最後の最後にシュートを生み出す戦術になるのか」と、こだわりがありました。ですけど最近はフットサルをサッカーに繋げるものはトランジションの部分かなと思っています。冬になってフットサル大会が開催されて、攻守の切り替えのところがサッカーからフットサルに入るとぼやけているんです。ということはサッカーでもトランジションを言ってやっていても距離感の違いだとかコートの広さの部分でそこの意識ってなかなか根付いていないんだなとすごく感じています。

冬になったら嫌でも毎回フットサルのトレーニングになるので、そうなるとトランジションの部分が良くなってくるんですよね。トロンコは通年で週に1回やっていると思いますけど、夏にもフットサルを取り入れるメリットが初めてあるのかなと感じています。ファミナスは夏は基本サッカーなんですけど、やはり週に1回だけでもフットサルを取り入れて切り替えの部分の意識づけがぼやけないようにというので、もしかしたらフットサルって通年必要なのかなと感じています。

幸野 こんなに近い2人でも考え方が全然違うわけですね。僕は一度フットサルU-20代表監督をしていた鈴木隆二さんと議論したことがありますけど、やはりみんなそれぞれいろいろな考え方がある。彼は2対1の攻撃とかフットサルの戦術はサッカーで応用できる部分がたくさんあると言っていました。決してなくはもちろんないわけじゃないですか。だけども環境としてそれをやらざるを得ないのであればなんとかしてそれをプラスな方向にもっていくしかない。でも、フットサル的な技術の高い選手が出ている評価はあるんですか? 例えば「Jリーガーの中でも北海道出身の選手はフットサルをやってきただけあって足下の技術が高いよね」という評価は僕の中であまり聞かないので。

──確かに北海道出身のサッカー選手やコンサドーレの選手で足下に長けた選手はそんなにいないですよね。

北原 そうですね。ただ、今までで言ったら山瀬(功治)選手もそうですし宮澤(裕樹)選手もそうですし、コンサドーレ以外でも西大伍選手だったりテクニカルな選手は比較的輩出している方なんじゃないかなと思っています。

幸野 そのベースにフットサルがあったと考えていいですか?

北原 4種年代ではかなりフットサルをプレーしていることで足首でクッとボールの方向を変えたりするところなんかはフットサルによる影響ですごくいい方向にいっていると思います。

北海道の降雪期間のトレーニング事情は?

──コンサドーレのアカデミーは冬の雪が降っている期間、どうしているんですか?

北原 体育館も使えますし、人工芝のフットサル場を使わせてもらうこともあります。屋内施設が取れないときには雪中サッカーもやっています。

──雪中サッカーは遊びではないんですか?

北原 真剣にやりますけど、かなり埋もれたりするので足腰の強化の方がメインにはなります。キックという意味では屋内に入るとできないので雪中サッカーでキックをすること自体はメリットがあるかなと思います。

──皆さんは冬場の練習はどうされているんでしょうか。高校サッカー選手権の始まる前に外で練習ができない状況で大会に臨むのでかなり不利なんじゃないかと正直思いますが……。選手権を体験している菅原さんはどう思いますか?

菅原 実業は選手権が決まったときには12月の中旬から本州の方に入ってずっと遠征の中で練習、練習試合を繰り返してそのまま大晦日の本番に臨んで、一回戦負けでした(笑)。

──そのとき外での経験の少なさは感じましたか?

菅原 一応、長期的な春休み、夏休み、冬休みは本州の方へ遠征には連れて行ってもらっていました。行ったすぐはどうしても視野が狭かったりとハンデはあると思います。ですがやはり2、3日したらある程度は慣れてくると思うんです。ただ、さっき次郎さんからキックの話がありましたけど本州のチームと僕が違いを感じたのはキックの質が違いますね。ロングキックとキックの球質が北海道の選手より本州の選手の方がきれいなキックをするなと思っていました。

──佐々木さんは冬の練習はどうしていますか?

佐々木 うちは今、冬の練習は体育館でしかしてないです。ただやはり今年いろいろ考えさせられるものもあって、この冬場をどうメリットに変えるかという部分に関しては次郎さんおっしゃるように雪中サッカーというもので補わなければいけないなと思うところはあります。どうであれ視野からくる選択肢は絶対に変わってくるはずなので視野を伸ばしておかなければいけない。その感覚を保っておかなければいけないところは体育館だけではどうしても構築できない。そこに関してはこの先変えていかなけれないけないだろうなとは考えています。

体育館だけでやっている最大のデメリットは、レンジが違うという部分でキックの求められる質が変わってくること。ショートばかりではいけないですよね。ロングが上手くならなければいけない環境に置かれているからロングが蹴れるようになる、蹴りたくなる状況だと思うので。そこは補っていかないといけないと思っているので、冬場であっても遠くに蹴る感覚を確保するものは雪の中で足腰を鍛えながらやっていかないといけないんじゃないかと思っています。

幸野 やっぱり大変ですね。うちなんかではフットサルをプレーしている選手が来るとどうしてもヘッドダウンして逆サイドを見れなかったり視野が極端に狭い部分とどうしてもボールを足下に入れてしまう部分がある。それは慣れてくると修正できますけど根本的に違う2つの競技での修正は大変だなと僕も感じています。


幸野健一(こうの・けんいち)
プレミアリーグU-11実行委員長/FC市川GUNNERS代表/サッカーコンサルタント

著書
パッション 新世界を生き抜く子どもの育て方

1961年9月25日、東京都生まれ。中央大学卒。サッカー・コンサルタント。7歳よりサッカーを始め、17歳のときに単身イングランドへ渡りプレミアリーグのチームの下部組織等でプレー。 以後、指導者として日本のサッカーが世界に追いつくために、世界43カ国の育成機関やスタジアムを回り、世界中に多くのサッカー関係者の人脈をもつ。現役プレーヤーとしても、50年にわたり年間50試合、通算2500試合以上プレーし続けている。育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかるサッカーコンサルタントとしても活動し、2015年に日本最大の私設リーグ「プレミアリーグU-11」を創設。現在は33都道府県で開催し、400チーム、7000人の小学校5年生選手が年間を通し てプレー。自身は実行委員長として、日本中にリーグ戦文化が根付く活動をライフワークとしている。また、2013年に自前の人工芝フルピッチのサッカー場を持つFC市川GUNNERSを設立し、代表を務めている。

北原次郎(きたはら・じろう)

プレミアリーグU-11北海道地域委員兼北海道実行委員長/北海道コンサドーレ札幌のアカデミーダイレクター

1981年10月23日、北海道生まれ。筑波大学卒。大学卒業後の2004年に母校・筑波大学蹴球部のコーチとして指導キャリアをスタートし、2005年から2010年まで、ジュビロ磐田に籍を移し、スカウト兼コーチやテクニカルスタッフを担当。その後も、清水エスパルスコーチ、ジェフユナイテッド市原・千葉、コンサドーレ札幌コーチを経て、2015年にコンサドーレ旭川U-15監督、2016年から現職に。Jクラブのゲーム分析や、アカデミーでの指導、指導者たちの統括など様々な役職を経て、現在も育成年代に多角的な立場で携わっている。「個人の能力だけではなく、グループの中で力を発揮できるような育成」を軸に“どんな選手でも成長させること”を目指している。

菅原和紀(すがわら・かずのり)

元フットサル日本代表/Faminas監督

1982年7月14日、北海道生まれ。20歳の時にフットサルを始めると佐々木洋文と共に設立した「divertido S.S.P」でいきなり全国4位に輝き、2年後に設立した「DC旭川フットサルクラブ」では全国優勝を経験。全国大会で2年連続最優秀選手賞を獲得した。その後、2009年からエスポラーダ北海道でFリーグに舞台を移し、日本代表としても活躍。当時の日本代表監督からは「日本最高のレフティー」と称された。2010年の引退後に指導キャリアをスタート。地元・旭川でU12のクラブチーム「Faminas(ファミナス)」を立ち上げ、現在も監督を勤めている。

佐々木洋文(ささき・ひろふみ)

元エスポラーダ北海道/トロンコ旭川FC代表

1982年7月19日、北海道生まれ。「divertido S.S.P」で全国4位、2年後に設立した「DC旭川フットサルクラブ」では全国優勝を経験。2009年からエスポラーダ北海道の選手として、鳴り物入りでFリーグに参戦した。華麗なテクニックと甘いマスクで人気を集めた。2010年に引退後は古巣・DC旭川フットサルクラブで指導をしていたが、2016年には、現在の「トロンコ旭川FC」の原型となるアカデミーを、小学校時代の同級生でもある元フットサル日本代表・高橋健介と共にスタート。世界水準の育成理念を掲げるクラブの代表として活動している。

北健一郎(きた・けんいちろう)

WHITE BOARD編集長/Smart Sports News編集長/フットサル全力応援メディアSAL編集長/アベマFリーグLIVE編集長

1982年7月6日生まれ。北海道出身。2005年よりサッカー・フットサルを中心としたライター・編集者として幅広く活動する。 これまでに著者・構成として関わった書籍は50冊以上、累計発行部数は50万部を超える。 代表作は「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」など。FIFAワールドカップは2010年、2014年、2018年と3大会連続取材中。 テレビ番組やラジオ番組などにコメンテーターとして出演するほか、イベントの司会・MCも数多くこなす。 2018年からはスポーツのWEBメディアやオンラインサービスを軸にしており、WHITE BOARD、Smart Sports News、フットサル全力応援メディアSAL、アベマFリーグLIVEで編集長・プロデューサーを務める。 2021年4月、株式会社ウニベルサーレを創業。通称「キタケン」。

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