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ピッチ内だけでない。なでしこ・籾木結花が女子サッカーを支える理由

「アスリートとしての自覚を持ち、自分がスポーツをやってきて培ってきたことというのを、自分で言語化できる選手を増やしたいですね。自分自身の価値や、女子サッカーの価値を、ちゃんと外に発信できるような選手を増やしていきたいな、と」

なでしこリーグで連覇をし続けている日テレ・ベレーザの10番を背負いながら、今春から慶應義塾大学を卒業してスポーツ系ベンチャー企業である株式会社Criacaoに就職した籾木結花選手。

女子サッカー選手になることが幼い頃からの夢だった彼女の、ピッチ内での活躍は言うまでもない。2017年から日本代表“なでしこジャパン”に選出されており、先日行われたカナダ代表との国際親善試合でも10番を背負って出場し、ゴールを記録。

そんな日本女子サッカー界を代表する選手の1人である彼女は、いちプレーヤーとしてサッカーに打ち込んできただけではない。自身が関わってきた女子サッカーを盛り上げるために何をすべきか、そしてこのフィールドを通じて伝えたいことは何なのかを日々模索してきた。

そしてその想いをピッチ上だけでなく、ビジネス側の視点からも表現しようとしている。日テレ・ベレーザで「5,000人満員プロジェクト」といった集客プロジェクトを立ち上げた。

オフザピッチでも女子スポーツの価値向上に関ろうとしている彼女が成し遂げたいことは何なのか。

小学校から追いかけた、「日本一」の夢

もともとサッカーをやっていた父の影響が大きいです。家では常にボールが転がっていて、物心ついた時にはもうサッカーをして遊んでいました。

最初は自分が通っていた小学校で練習をしている地域のサッカーチームに所属していました。ただ、続けていくうちに生意気にも「何か物足りないな」と感じるようになりました。

ある日、父が会社のメンバーとフットサルをするということでそれについて行ったんです。会場であるフットサルコートに張り紙があって、地域の少年団がメンバーを募集しているのを知りました。それから早速電話をしたのですが、「男子チームは人数が多いから、女子チームに行ってみては。」と言われて、女子チームへ体験に行きました。

たまたまそのチームが全国大会で優勝するような強豪で、必然的に日本一を目指す環境に入った形になります。これまでの環境よりもレベルが高く周りから刺激を受けたことで、「これまで以上に本格的にサッカーに取り組んで、上手くなりたい」と思うようになりましたね。

その後、日テレ・ベレーザの下部組織の日テレ・メニーナを経てベレーザに上がって、今に至っています。

女性の社会進出の象徴に
小学校で日本一を目指すようになってから、私はずっと将来は女子サッカー選手になりたいと思っていました。夢を実現した私に今できることは、私がかつて憧れたように、女子サッカー選手という存在が女子から憧れられるような“かっこいい”存在だということを見せることだと思っています。まずは、その「かっこよさ」を自分のプレーで表現することが目標です。なでしこジャパンの平均身長は海外の代表チームに比べて、かなり低いです。その中でも私は特に背が低い方。なので、おそらく私は世界一小さい選手としてW杯に出場するんだろうなと大会前から思っていました。

私のように身体的に小さい選手が、海外の大型選手を相手に戦っている姿を見せたいなと思ったんです。応援してくださる方々にそうやって勇気を与えたいなと。

そうやってピッチ内での自分を見せた上で、なでしこジャパンや女子サッカー選手を、もっと女性の方に応援してもらいたいんです。これは、これまで私がサッカーに関わってきている中で、ずっと感じていることでした。

なでしこリーグは13時キックオフの試合が多いので、女子サッカーに本気で取り組んでいる学生や、ビジネスで活躍されている女性の方が来にくいというのが現状です。

私たち女子サッカーでは、環境的に恵まれていない中で戦っています。一方、日本のビジネス界はまだまだ男性社会で、女性の社会進出が遅れていると言われることが多々あります。欧米などに比べても、日本で社会で活躍する女性は少ないです。女性が受け入れられるような仕組みが出来上がっていないのが今の日本の文化の特徴なのかなと。

サッカーとビジネスとお互い戦っているフィールドは違えど、男性社会の中で生きる上で、同じ女性として共感できる部分も大きいのではないかと思います。私たちがサッカーを通じて強さをアピールして女性の社会進出の象徴のようになることで、お互い応援し合えたらなって。

とはいえ、そういった象徴になることはすごく難しいことだとは思います。でも、世界一という結果を残して、勇気と感動を与えたなでしこジャパンだからこそできることだとも思います。

むしろ自分たちがそうならなければならないことに対して責任は感じますし、一女子サッカー選手として目指していきたいところです。日本中から注目されるW杯でこそ、そういう存在でありたいですね。

なでしこは、「特別」な存在ではなかった

日本の女子サッカーが初めて世界的にも注目されるようになったのは、2011年のW杯の時でした。

東日本大震災の直後でもあったのですが、東北出身の選手や東北でプレーしたことのある選手もなでしこジャパンに選ばれていました。彼女たち自身が被災者である中で、被災地に元気を届けるために戦っている、という伝わりやすいストーリーがありました。

自分たちが世界一になるという目標と同時に、誰かのために勝ちたいという思いが、強く重なった大会でしたね。「なでしこジャパンから、何か勇気をもらいたい。」見る側の思いと、プレーする側の思いが重なっていたからこそ、あの大会で優勝した後の“なでしこフィーバー”は起きたんだと思います。

2011年のW杯とは違って、逆境を乗り越えるというストーリーがない中で迎えた今大会でいうと、皆さんにとって、なでしこジャパンは“特別な存在”ではなかったんです。

もちろん、女子サッカー好きの人にとってはすごく楽しめる大会だったと思います。でも、ファン以外の方にとっては、別にワールドカップの前後で生活が変わったりするわけでもなくて。なでしこジャパンへの関心が低くなっているのを、今回の注目度合いから見てもわかりますし、プレーをしていても感じましたね。

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