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将来設計実現のため高校から米国へ 谷田侑里香が母とともに歩む“夢の道”

この笑顔で厳しい予選会を勝ち上がってほしい(撮影:ALBA)

<LPGA Qスクール(予選会)セカンドステージ 初日◇17日◇プランテーションG&CC(米フロリダ州)◇ボブキャット・コース=6543ヤード・パー72、パンサー・コース=6363ヤード・パー72>

高校時代に1年間を過ごしたフロリダで、24歳の谷田侑里香(ゆりか)が夢の舞台への挑戦を続けている。9月に行われたステージ1をクリアして得た「自信」を胸に、午後組のタフなコンディションのなか耐え続けた。

その受け答えは理路整然とし、そして行動家の一面がうかがえる。

神奈川県出身の谷田は、高校2年生の終わりに米国へ渡り、現地の学校に編入。「日本では高校を卒業したらプロテストを受けるのが主流になってると思うんですけど、私はゴルフを始めたのが遅かった(13歳)こともあって、そこに達する実力がなかった。それで大学に行こうと。両親もゴルフ以外のことを学んで欲しいというのがあって。ただどうせ行くならゴルフがしっかりできるアメリカに」。これが渡米の理由になる。決めてから学校を調べ、両親を説得し、決断から1カ月後には海を渡るという“スピード留学”だった。

米国の大学で運動部に入るためには、日本のような自らの意志ではなく、監督からのオファーが必要であることを教えてくれる。逆算。それを勝ち取るためにも、高校でプレーする姿を見てもらうために17歳の決断がくだされた。「ありがたいことに10校以上オファーをいただくことができました」。こうして監督などの人柄もよく、さらにスカラーシップ(返済不要の奨学金)も得られるミシガン州立大への進学を決めた。

2021年に大学を卒業すると、日本に戻りプロテスト合格を目指してきた。そして、今年は自身初となる米国の予選会に参加している。米ツアー参戦は、留学を決める前から抱いてきた夢。その理由も「世界最高峰の舞台なので」と明確だ。

「支えてくれた家族には感謝してます」という気持ちは強い。そもそもゴルフを始めたのも両親の影響だ。「私たちが好きで、娘が中学生になったら一緒にやりたいと思ったんです」と母は当時のことを思い出す。そして今回、その母がキャディを務める。「1次はひとりで行ったんですけど、2次は母が来てくれて安心です。励ましてもくれるし、体の面もサポートしてくれます」。趣味で始めた競技は、今も“世界最高峰への挑戦”という形でしっかりと母娘をつないでいる。

その母は、こんな愛娘の経歴を教えてくれた。米国の大学でスポーツをする学生のなかで、成績を数値化したものが3.5以上でかつ、試合にレギュラーとして8割ほど出ている優秀者には『オール・アメリカン』という賞が与えられるのだが、谷田はそれを4年連続で受け取ってきたのだとか。まさに“文武両道”を絵に描いたような選手だ。「絶対に人に言いたがらないんです」(母)というエピソード、それが明かされた娘の表情は、少し恥ずかし気。そんな姿からは謙虚さもうかがうことができる。

初めて米国に渡った頃は、多くの人がそうであるように芝質に戸惑い、その克服のため練習を繰り返してきた。この日は9番パー5で、グリーン手前からピンまで12ヤードの4打目のアプローチを直接決めるチップインバーディを繰り出し、親子のハイタッチも見られた。苦労して手にしたものは、決して無駄にはならない。

初日を終え1オーバー・61位タイ。上位40位までが進む最終予選進出のボーダーは突破していないが、現在の通過ラインとの差はわずかに1打と、まだ何も読めない状況になっている。「簡単ではないのは他の選手も同じ。最後まで諦めず一打でも少なくすること」、それが目標だ。Qスクールの雰囲気でさえ「いろんな国の選手と情報交換しながら話すことができる」と楽しんでいる。米国で培った経験や、母の支、そしてバレエで鍛えられた体幹までもすべてを支えに、来年、“第二の故郷”米国にツアーメンバーのひとりとして帰ってきたい。(文・間宮輝憲)

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