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歴代最多!日本勢の活躍に太鼓判「上位でプレーできる選手ばかり」 服部道子が語る『全米女子オープン』の“楽しみ方”

馬場咲希(左)には結果を気にしない“スケールの大きなゴルフ”を期待! 今年の全米女子OPの見どころは?(撮影:ALBA)

今週6日(木)に、女子メジャー大会の今季第3戦「全米女子オープン」が開幕する。“世界一”の称号をかけ、今年の会場となるペブルビーチGL(米カリフォルニア州)の芝を踏みしめる日本勢は過去最多の22人(5日現在)。その注目ポイントを、BS松竹東急の大会中継で解説を務める服部道子に聞いた。自身もアマチュア時代を含め5度の出場経験を持つが、選手目線、そして解説者目線で“全米女子オープン”の楽しみ方を語ってもらった。

■“生涯かけて獲りたい”と思える世界最高峰の舞台
 
「駐車場で車を降りた瞬間から、歴史や重厚さを感じられます。単にコースセッティングが難しい、ということだけではなく、会場の雰囲気が違う。特別な空気を醸し出しているし、身が引き締まる思いになります」
 
服部に全米女子オープンの印象を聞くと、こんな答えが返ってくる。“5つある海外女子メジャーのひとつ”というだけでは収まらない特別感。これが『世界最高峰』、『世界一決定戦』などと形容される大会で、選手が最初に肌で感じるものだ。さらに「一度でもプレーをすると、“生涯をかけてでもこのタイトルを獲りたい”と思うようになります」とも続ける。そんな崇高と言っても過言ではない舞台に、今年は2020年大会の19人を超える歴代最多の選手が挑む。
 
21年大会を制した歴代覇者の笹生優花や、悲願のメジャー制覇に燃える畑岡奈紗、19年全英覇者の渋野日向子、米ツアー1勝の古江彩佳、今季から主戦場を移した勝みなみ、西村優菜ら米ツアー組のほか、国内ツアーからも昨季女王の山下美夢有や、旋風を巻き起こす明愛・千怜の岩井ツインズら、さらに22年全米女子アマ覇者・馬場咲希(代々木高3年)と、数だけでなく実績も十分な選手が集まった。
 
この現実は、服部にとっても感慨深いもの。「世界ランキングで出場権を手にする選手も増えていますし、予選会も日本で開催されている。ずっと全米女子オープンを追っていますが、日本の女子ゴルフのレベルが、近年グッと成長していることを実感できる数字ですね」
 
そしてここで期待するのが、日本人選手同士の“切磋琢磨”。「周りにこれだけ日本の選手がいるとお互い刺激になる。ただ『経験してきます』というわけにはいかなくなり、成績を残したいという気持ちもでてきます。今回出場する選手は上位でプレーできる可能性を持つ選手ばかり。そこをぜひ応援してもらいたいですね。この大会に向けて調整してきた選手も多いし、いい戦いになると思いますよ」と期待を込める。
 
■自身に次ぐ2人目の全米アマ覇者・馬場咲希のスケールの大きさは魅力
 
そのなかで馬場についての話題を振ってみた。やはり服部が制してから37年後に、同じ「全米女子アマ」で勝ったスーパーアマチュアの話を聞かないわけにはいかない。すると「距離も出るし、長身でスイングアークも大きいので、海外のようにピンポイントで打つ必要があるコースのほうがむしろ合っている気がします。日本だと、コースが狭く感じてしまうこともあるはず。逸材ですから、スケールの大きいゴルフは変えずにやっていってもらいたいですね」と、すぐに強い期待の言葉が返ってきた。
 
ただ、「結果はまだまだこれから。そこまで気にしなくていいと正直思う」とも。まずはしっかり体を作ったうえで、今年少し苦しんでいるように見受けられたスイングを、しっかり自分の感覚と合わせていってもらいたい、それが一番の希望だ。「馬場選手は海外のほうが、気持ちよく思い切っていけそうですよね。海外にはいろいろなタイプの選手がいるし、日本では注目されてしまうから海外の方がスイングにもしっかりと向き合えそう。彼女のスイングは洋芝にも対応しやすいと思う。早く感覚を合わせてもらいたいですね」。まだ18歳の高校3年生。目先の結果ばかりを追って、こじんまりはして欲しくないという思いを抱く。
 
このほか、国内ツアーをけん引する山下と岩井姉妹についても、「若さと勢いがあるから、どういったプレーをするのかが楽しみですね」と全米女子オープンでのゴルフにも興味津々。さらに2週前に行われたメジャー「KPMG全米女子プロ選手権」2位という成績を引っ提げて迎える笹生の、大会2勝目をかけて戦う姿もすでに気になる様子だ。とはいえ『注目選手は?』という聞き方は、服部の頭を悩ませることに。「みんな注目すべき選手なので選びきれないですね」。こんな本音こそ、日本の選手層の厚さを伝えるのに十分といえる。
 
■ペブルビーチは日本人との相性“〇”…選手たちの攻略術に期待
 
そして今年、この特別な大会が世界でも屈指の名門コースで行われるのもポイントになる。「ペブルビーチは、多くの日本人が耳にしたことがあり、『憧れ』を抱くコース。どこか身近にも思えて、ここで結果を残したいという気にさせてくれる場所です」。太平洋に面するリンクスコースは、これまでに男子の「全米オープン」も行われ、PGAツアーでは「AT&Tペブルビーチプロアマ」が継続開催されている。
 
景観も美しく、“耳なじみ”も抜群だが、それ以外にも、服部は「日本人と相性がいいのでは」というポイントを挙げる。もちろん海から吹き込む風や長いラフ、ポアナ芝は一筋縄ではいかないもの。ただ、いわゆるグリーンが極めて硬く、そして速いため、ピンポイントで狙わないといけない…、というタイプのメジャーコースとは一線を画すという考えが、その根拠となる。この風光明媚なコースを味方にする選手が登場することに期待を寄せる。
 
「ペブルビーチが牙をむくシーンも何度も目にすることになるかもしれません。風やバンカーの配置も相まって、バーディ合戦ではなく、しっかりと耐えることも要求されると思います。ただそれをレベルの高い日本の選手たちが、どういうゴルフで攻略していくのか。そこはぜひみなさんにも注目してもらいたいですね」
 
日本勢42年ぶりの快挙となった19年の渋野による全英制覇が、『日本人もメジャーで勝てる』ということを証明した。服部も「壁をぶち破ってくれました」と振り返る、大きなできごとだ。そしてそのわずか2年後には、笹生が全米を制すなど、女子ゴルフ界における日本の立ち位置は年々高くなっている。そしてこういった流れは、すでに活躍している選手はもちろん、子どもたちの憧れや道しるべとなり、競技力の底上げにもつながる好サイクルを生み出す。
 
いまや米国ツアーを主戦場にする選手も増える一方だ。「海外に選手を輩出しても、日本ツアーはまた新たな若いスター候補がどんどん現れている。ゴルフが五輪競技になって、来年にはパリ五輪も待っている。ゴルフも世界で戦うことで、スポーツ界のなかでも大きな存在になってくる気がします」と、この流れについて服部も賛同する。
 
日本では、ツアー一丸となって、4日間大会を増やしたり、セッティングを工夫したりと、海外でも通用する選手の育成に励んでいる。そんな流れのなか、今年も全米女子オープンを迎える。服部も「ワクワク感しかないですね。ようやく始まるな、という感じです」と、ここからは“ひとりのファン”として堪能するつもりだ。
 
■服部道子(はっとり・みちこ) 1968(昭和43)年9月8日、愛知県日進市生まれ、54歳。11歳の時に祖父の勧めでゴルフを始める。84年「日本女子アマ」を当時史上最年少の15歳9カ月で制覇。さらに翌年の「全米女子アマ」で日本勢初の優勝を手にした。87年「全米女子オープン」はアマチュアながら21位となり、日本勢初のベストアマにも輝いている。愛知淑徳高卒業後は米国へ渡り、テキサス大オースチン校へ入学。帰国後の91年に日本女子プロゴルフ協会のプロテストに合格すると、公式戦3勝含む通算18勝を挙げた。98年には賞金女王にも輝いている。2020年東京五輪(開催は21年)ではゴルフ日本代表女子コーチを務め、稲見萌寧を銀メダル獲得に導いた。身長168センチ。

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