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「松井大輔にはピッチに立ってほしい」。横浜・鳥丸太作新監督が目指す“ボールを保持する”スタイルとは?

鳥丸太作が影響を受けた3人の指導者

──Fリーグ以外でも、指導をしているんですよね?

はい、横浜以外には、育成年代のRAD FCと、他にスクールもやっています。

──1日のスケジュールはどんな感じに……?

そうですね、朝4時に起きて、4時半に家を出発して横浜へと向かい、6時から8時まで横浜のトレーニングをしています。その後、前田佳宏強化部長とランニングをしたりしながらチームのことを話しています。それから埼玉のRADアカデミーの場所へ移動して事務作業をこなし、夕方からスクールで指導してから夜に帰宅するという流れです。

──なかなかハードですね。そもそも指導者になったきっかけは?

仕事として本格的に指導を始めたのは、ブラジルから帰ってきた26歳か27歳くらいですね。その当時もまだ選手をしていたので、子どもたちになにかを伝えられたらいいなという思いで始めました。今考えると、正直なところ専門的な指導の知識を持っていませんでしたし、至らないことだらけだったように思います。

──少しずつ指導について学んでいった。

はい、もっと勉強しないといけないな、と。33歳でFリーグの選手をやめてから指導者ライセンスの講習会を受けに行きました。そこで指導の深さや、自分に足りなかったところを勉強できました。人に伝えることへの楽しさを感じたのもその頃ですし、フットサルの技術をサッカーに生かしてほしいと思っていて、自分が言語化して伝えるんだと意気込んでいました。そんなときに、クラウドの小林さんから電話をもらい、トップチームの指導と選手をやらないかと。実際に指導してみて思ったのは、トップチームでやることは、子どもたちに指導することとそんなに変わらないということ。それからは自分が試してみたいことがうまくリンクしていって、本格的に指導者として活動を続けていきました。

──鳥丸監督のフットサル観や哲学のベースにあるものは?

最初のベースは、パコ・アラウホさんに学びました。ステラミーゴいわて花巻でプレーしていた当時の監督です。パコは、相手のDFのタイプによってサポートの方法や人の配置を変えていました。相手のズレを生むやり方が本当に秀でていました。自分がDFの配置や選手のタイプを見るうえで、パコ監督のやり方に多くの影響を受けていると感じています。

あとは、ずっと一緒に仕事をしている高橋健介(現日本代表コーチ)のあらゆることを参考にしています。それと、浦安時代にお世話になった岡山孝介監督。数多くの監督とやったわけではないですけど、この3人はいろんな側面から参考にすることが多いですね。

サッカーとフットサルに取り組む子どもたちへ

──RAD FCは、子どもたちが、個人技ではなくクワトロの動きなどでパスを回しながらプレス回避していく映像が話題になりました。どのように指導しているんですか?

例えば「優位性を持ってプレーすること」。これは本当に大人も子どもも同じです。それを考えながらプレーすることが大事です。

一番強い優位性は数的優位ですけど、それができたらどうするか。2対1ができたら、幅と深さがをつくれたら突破できるよね、と。これは大人でも抜け落ちる部分ですし、特に足元の技術がうまければうまいほど、スペースの優位性を使えなくなってしまう。

でも子どもは素直なので、「幅を取って」と言えば幅を取るし、「高さはこういう高さ」「タイミングはこうがいい」と伝えていくと徐々に2対1に気がついていき、狙いを持つことで考えながらプレーするようになる。これが一番大事なことだと思います。

──なるほど。

トモは、サッカーをやっている子どもとフットサルにも意欲的に取り組んでいる子どもの大きな違いってどこだと思う? 例えば、いろんなところでサッカーの一環としてフットサルを教えてくださいというオーダーをもらって指導するときによく見られるんだけど。

──どこだろう。

フットサルに触れていたり、頭を使う複雑なメニューに慣れていたりする選手の場合、俺が「こうしよう」と伝えたときに、前の子の真似をしない。つまり、自分の頭でメニューを聞いて狙いがなにかを理解できるから、どこに並んでどうすべきか、すぐにパッとできる。

だから、「考える力」を伸ばすという点で、フットサルはすごくいい。フットサルは「足元の技術」や「ドリブル」、「ボールタッチ」の習得にいいと言われるけど、考える力を伸ばし、スペースを理解することのほうが、獲得できる要素としては価値が高いと思う。

──RAD FCの子どもたちはサッカーもやっているんですよね?

そうそう。埼玉県の戸塚FCJというチームでやっています。むしろ、戸塚FCJの選手は全員RADに入っていて、火曜はフットサルのトレーニングをしています。俺は戸塚FCJのテクニカルアドバイザーをしているので、サッカーとつながるようなプレーモデルの話をさせてもらっているという感じですね。選手はサッカーでも活躍しています。

──RAD FCの選手には将来どうなってほしいですか?

判断力や考える力を持った選手になってほしいと思っています。でも一番は楽しむこと。

みんな「プロになりたい」と言いますけど、個人的にはどのカテゴリーであっても、楽しんでやることが一番だと思っています。ほとんどの人にとって、フットボールを始めたきっかけは「ボールを蹴ることが楽しい」だと思うから、それを忘れないでほしいなと、この年齢になってすごく思います。高い目標を持って、楽しみながら努力してもらいたいなと。

それさえ忘れなければ、どのカテゴリーでも、もちろんプロでも、サッカーでも、フットサルでも、草サッカーでも、自分に合うチームや環境で楽しめると思います。

サッカーに最も生きる、フットサルの魅力

──昔からテーマになってきた「フットサルはサッカーに生きるのか」ということで言えば、鳥丸監督としては「考える力」が身に付くということですか?

うん、絶対にそこだと思う。他のスクールを否定するわけではないけど、サッカースクールを見ていると、判断する要素がすごく少ないと感じます。ボールを持っている選手がいて、そのままずっと自分のボールにしている選手が多いな、と。

そういう選手にスペースの話をしてもなかなか頭に入っていきません。こういう話をするとよく勘違いされるのですが、パスしないといけない、ということではありません。

その都度、パスかドリブルかを考えて決める、判断することが大事。日本代表などトップの世界では、監督が考える戦術があり、監督のオーダーに応える必要があります。そのうえでさらに自分の特徴を出すことは、どのカテゴリーでも大事なことだと思いますから、なぜそうしたことを身につけるトレーニングをしないのだろうと思います。

──ドリブルで仕掛けるところと、パスを出すところの判断が大事。

もちろん、1対1のスキルは世界と戦ううえでも必要だけど、それだけの選手は絶対にいない。これは想像ですけど、久保建英選手が、もしスクールを立ち上げるなら、彼はドリブルもめちゃくちゃうまいけど、それに特化した内容にはしないと思う。

他にも重要なことがあると知っているから。憶測だけどね(笑)。トモだって、得点力が持ち味だからシュートに特化した内容でやるとしても、シュート技術だけがすべてじゃないと伝えるでしょ。考える力があっての技術。それがフットサルの可能性というか、フットサルをやる意味として、大きな価値になってくれたらいいなと思っています。

──そうですね。トップ選手の指導と子どもの指導は共通する部分も多い?

スペースやタッチ数などで言えば、トップカテゴリーの横浜の選手が一番複雑で難しい連動をしているけど、ボールを動かして2対1をつくる動きとかはどのカテゴリーでも同じだね。2対1になったときのアクションや優位性を生かすことは、子どもに対して伝えることも一緒だし、これは変えようがないと思う。ロングボールの使い方とかはカテゴリーでも違うから全部が同じとは言わないけど、共通する部分は多いですね。

──では、最後に今シーズンの意気込みをお願いします!

俺自身が「ボールを持つこと」をコンセプトにしているから、迫力あるプレッシングからの即時回収を狙うところを含め、チャレンジしていきます。リスクをかけてでもチャレンジする姿は見せたいです。自分が選手のときは、ボールを持つことが楽しかったし、ボールを持ちながらゴールを狙いにいくところに楽しみを覚えていたから、今の選手にもそういうことを伝えています。だからこそ、今シーズンの横浜は、選手が楽しんでいるところも見てほしいですし、それを見ている人たちも楽しいと感じてくれたらうれしいですね。

──今日はありがとうございました!

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