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今季メジャー移籍の千賀と吉田 “初年度ノルマ”と“WBC出場の懸念”は?

写真左:千賀滉大 提供:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ
写真右:吉田正尚 提供:西村尚己/アフロスポーツ

2023年も幕を明け、野球界では3月にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催されることもあり、盛り上がりの様相を見せている。そんな中、今オフに日本のプロ野球からアメリカ・メジャーリーグに移籍を決め、活躍が期待されるのがニューヨーク・メッツに移籍した千賀滉大とボストン・レッドソックス入りを決めた吉田正尚だ。ともに福岡ソフトバンクホークスとオリックス・バファローズで主軸として活躍し、日本を代表する選手となった2人の実力者が海を渡ることになる。(文・井本佳孝)

ソフトバンク千賀滉大がニューヨーク・メッツへ

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写真:千賀滉大 提供:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

29歳の千賀は2010年に育成ドラフト4位でソフトバンク入りすると、2016年の12勝を皮切りに7年連続2けた勝利を挙げてエースに成長。最多勝利1回、最優秀防御率1回、最多奪三振2回などのタイトルを手にしてきた。また日本代表の一員としても、2017年に出場した第4回WBCではチームとして優勝は逃したものの最優秀投手に輝き、2021年の東京五輪メンバーとして金メダル獲得に貢献してきた。長年MLB挑戦への想いを口にしてきた“日本のエース”が海外FA権を取得したこの冬に待望の海外移籍を果たすことになった。

千賀が加入したメッツは、現在NPBの監督を務める新庄剛志や松井稼頭央などが在籍し、日本人のファンにも馴染み深いチームである。千賀と5年総額7500万ドル(約102億円)の大型契約を結び、サイ・ヤング賞を3度受賞したマックス・シャーザーと、千賀と同じく今冬に移籍したジャスティン・バーランダーという強力な投手陣を揃えることに成功。MLB公式サイトが発表した2023年の「パワーランキング」ではヒューストン・アストロズに次いで2位につけているなか、ローテーションの3番手として千賀には期待がかかる。

そんな千賀にMLB1年目で求められるのは、2けた勝利とシーズンを通したローテーション定着である。これまでの日本での実績は十分で、鋭いフォーシームに「おばけフォーク」と称される変化球を併せもつ千賀の能力を考えても、10勝以上は最低限求められるノルマである。強力なチームからの援護面を考えても視界に入ってくる数字だが、懸念点はシーズン通したコンディションの維持にある。日本でのここ数シーズンは故障で離脱する回数も多く、試合数が増え100球の球数制限や中4日のローテーションなどMLB独特の環境にフィットできるかはアメリカでの挑戦においてカギを握ってくるだろう。

オリックス吉田正尚、レッドソックス初の日本人野手へ

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写真:吉田正尚 提供:西村尚己/アフロスポーツ

ポスティングシステムでレッドソックスに入団した吉田は、2015年に青山学院大からドラフト1位でオリックス入りすると、3年目からレギュラーに定着し打率.321、26本塁打を放ち頭角を表す。そして2020年に打率.350、21年には打率.339で2年連続首位打者、21年からは2年連続最高出塁率のタイトルも取るなど日本屈指のスラッガーに成長した。日本代表としては2019年のプレミア12で代表入りすると、2021年の東京五輪では3番打者として金メダル獲得に貢献。千賀と同じく、日本での実績十分でアメリカ入りすることとなった。

レッドソックスはニューヨーク・ヤンキースと並ぶアメリカン・リーグ東地区の人気球団で、松坂大輔や上原浩治、2022年シーズンまでは澤村拓一も所属してきた。9人目にして野手では初の同球団所属選手となった吉田は、出塁率の高さや左右広角に打ち分けられるバットコントロール、さらに三振が少ない打者であり、総合力の高さが特徴だ。日本ではクリーンアップを打つことが多かった吉田だが、出塁率を重視するアメリカでは上位での起用が想定され、トップバッターとして期待がかかっている。

伝統球団に迎え入れられた吉田に期待されるのが、リードオフマンとしての新たな姿である。MLBで長年1番を務めたイチローのようなスピードタイプとは異なる特徴をもつ吉田。相手投手に粘り強く球数を投げさせての出塁や、パワーを生かしてのホームランなど自身の持ち味でMLBにフィットすることが求められる。そんな中で日本での実績を考えれば打率は.280以上、出塁率も.380以上で15本塁打は期待したいところ。162試合という長丁場でのコンディション面や、懸念とされている守備面を克服してレッドソックスの主力に定着したい。


(次のページ「WBC出場の懸念はあるか?」へ続く)

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