平均動員4万超。MLS・シアトルを育てた「3つの解」

プロスポーツビジネスに問われるもの

サッカークラブに限らず、スポーツクラブは存続し続けることが大切だ。そのためには、地域の人々に求められる存在となることが必須で、その手段として勝利やタイトルの獲得がある。

逆に言えば、勝利やタイトルがないチームでもクラブを存続させることはできる。スペインのアスレティック・ビルバオは、タイトルの数はあまり多くないが、ホームタウンのバスク地方に所縁のある選手のみを獲得するという方針を貫くことで、地元住民のアイディンティティに寄与している。

そういったクラブとしての方針を、シアトル・サウンダーズも持っていた。

「クラブ運営において、私たちは3つの解を持っています。すべてに通ずる正解ではないと思いますが、組織がどこへ向かうか、どこへフォーカスするべきかをしっかりと定めて前進しています」

「ひとつめは、人を大切にすることです。100人のスタッフ全員に、何を目標にすべきか、どこへ向かうべきかを伝えています。

皆さんに今一度お考えいただきたいのは、適切なポジションに適切な人が配置されているかということです。私がもしあなたの会社に伺って、あなたの部下の従業員に『何をしているのですか?』と問いた時、どんな答えが返ってくるでしょうか? プロスポーツビジネスにおいて常に問われるのは、文化、人の心です」

「ふたつめはプライオリティ、優先順位です。

あなたの組織では、普段どういった形で意思決定がなされるでしょうか? トップダウンなのか、ボトムアップなのか、全員で考えるのか? 全員の意見を取り入れるのは簡単なことではありません。

観客が考えることと経営陣が考えることは、おそらく違います。彼らは安くホットドッグを食べたりたくさんのビールを安く飲んだり、競技面ではいい選手を獲得してほしいと願っています。

一方で、私たちは3年、5年、10年先のことを考えて組織を動かしています。何をしていくのか、何を大事にするのか、なぜそれを成すのか、誰が組織決定を下すのかを考えます。あなたの部下、上司、同僚たちも、何を優先すべきかを知りたいはずです。それを知ることによって、あなたのまわりの人たちもよりいいパフォーマンスが出せると思います」

「最後に、我慢です。

私たちの業界では、ファンを楽しませることが重要です。彼らはいろいろなことを要求してきますが、自分たちが立てたプラン、プロセス、優先順位、目標などに基づいて、我慢強く遂行してほしいです。私たちサウンダーズは3年、5年、の計画を立てており、そのプランを我慢強く遂行しています」

その後、質疑応答も活発に行なわれ、約2時間の講演が終了。最後に懇親会も開催された。10年強で急成長を遂げ、MLSを代表するクラブとなりつつあるシアトル・サウンダーズ。さまざまな状況の違いはあれど、Jリーグクラブも参考にするべき点があるのは間違いないだろう。このセミナーに参加したスポーツ業界関係者も、多くの気づきを持ち帰った会となった。

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