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“ウィンブルドンカラー”で歓喜初V! 下川めぐみ、不惑の大逆転

夫の下川正キャディとカップを掲げる下川めぐみ(撮影:佐々木啓)

<あおもりレディス 最終日◇14日◇青森カントリー倶楽部(青森県)◇6546ヤード・パー73>

純白のウェアがコースに良く映えた。4打差を覆す大逆転でステップ・アップ・ツアー初優勝を果たしたのは、40歳・下川めぐみ。不惑のミラクルVだった。

ティオフしたときには、逆転する自分の姿を想像することさえなかった。それならば、と今年から本格的に着手しているスイング改造の成果を少しでも見せよう。「ラウンド中はスコアボードを一切見なかった」と自分のプレーに集中したことが、大逆転劇につながる。

10番を終えたときには4打だった首位との差が、14番を終えた時点で2打差になっていた。17番のバーディでついに1打差。ところが、スコアを確認していない下川はそれを知るよしもなく、「2位ぐらいは狙えるかもしれない」と思っていた。

一方、首位に並んでいた同組の宮田成華も初優勝がかかっていた。大量リードを失った25歳には焦りがあったかもしれない。18番パー5。宮田はバーディを奪えず。下川は約4メートルのウィニングパットを沈めると、力強くこぶしを握った。無欲が生んだ不惑の快進撃だった。

この日に着た上下白のウェアにはある思いが込められていた。「今、テニスのウィンブルドンが行われていますが、大好きな(ノバク・)ジョコビッチ選手をマネしました」。かねて敬愛するセルビアのレジェンドテニス選手にあやかってのものだった。

「あんな過酷な競技で、頂点に登り詰めてもそこから落ちずにずっと君臨しているのはすごいと思いますし、少しでも近づきたい気持ちはあります」

下川はQTランキング1位で意気揚々と挑んだ昨シーズン、大不振に陥った。原因は2年前に感染した新型コロナウイルスだ。その後遺症として体力と集中力、記憶力さえも衰え、スイングに狂いが生じ始めた。いまはスイング改造の甲斐もあって安定感を取り戻したが、一時は『引退』の2文字がちらつくほど、かつての賞金シード選手は追い詰められていた。

そんな下川にとって、ジョコビッチの存在は心強かったに違いない。セリアック病を患っているジョコビッチは、グルテンを含む食品を摂取すると体調不良に陥ってしまう。だが、いまはグルテンフリーの食事を取り入れて改善。体調の悪化に悩まされることもなくなり、一気にスターダムへと上り詰めた。下川はそんな逆境を乗り越えてきたレジェンドに自分の境遇を重ねて、自らを奮い立たせていた。

「今後はJLPGAツアーでも1勝できるように頑張ります」。下川は力強く宣言した。青森から始まる再出発ロード。40歳の足取りに一片の迷いもない。

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