
【新時代サッカー育成対談】幸野健一×守山真悟×内野智章|「どうやったらプロになれるのか?」|前編
掲載協力・WHITE BOARD SPORTS
■登壇者
・幸野健一|プレミアリーグU-11実行委員長/FC市川GUNNERS代表/サッカーコンサルタント
・守山真悟|関西地域委員兼大阪府実行委員長
・内野智章|興國高校サッカー部監督
■ファシリテーター
・北健一郎|サッカーライター/ホワイトボードスポーツ編集長
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リップエース→興國→Jリーグの最強ルート
──興國高校監督の内野智章さんと守山真悟さんはすごく仲がいいと伺ったのですが、どんな関係性ですか?
内野 お互い覚えてはいないですが実は高校のときも練習試合で対戦しています。そこから始まって、23歳とか24歳のときに草サッカーで知り合ったんです。
──そのときから育成年代の指導者同士だった?
内野 いえ、僕はそのときはまだ興國の指導者ではなかったですし、真悟もまだリップエースを創設していませんでした。
──ですが今では内野監督の興國高校から来年度、Jリーグ内定選手が5人輩出されている異例の事態になっています。内野監督が選手を育成するにあたって大事にされていることはどんなところでしょうか。
内野 なんですかね……。いっぱいあるのでこれというのが言えないですね。
──「興國メソッド」と言われるくらい、「興國に行ったらプロになれる!」と思っている方もいると思いますけど興國高校に行けばプロになれる確率が上がるとかそういった特別なことはあるのでしょうか。
内野 それはないと思いますけど、プロに行く選手に関しては世界の基準と照らし合わせたときに50mのタイムを0.5秒上げる。身長も5cm以上あげるという感覚で考えています。どういうことかといいますと、例えば50m走が6.3秒は日本だと瞬足でサイドアタッカーとかをしますが5秒台ではないとJ1やJ2では通用しない。なのでセンスがあってFWとかやっている選手のほとんどはうちに来たらボランチになる。身長も高校レベルだと180cmあったら大型選手と言われますが、バルセロナのスタメンの平均身長は181cmなんです。ロナウジーニョは180cmですし、(アリエン・)ロッベンは182cm、(ガレス・)ベイルは183cm。ですが全員大型選手とは言われない。だから180cmは別に大きくないし、50m走が6秒台前半も別に速くはないという感覚でポジションを決めています。
──なるほど。
内野 この間、清水エスパルスに入団した選手は184cmあって、身体能力がすごく高くて50mを6.2秒とかで走るFWだったんですが、高校2年のときにボランチにコンバートして、今はJ1。J1基準ではFWとしてのスピードが足りないんです。でも日本に184cmで両足を使えてヘディングが強くてテクニックがあってシュートののうまいボランチはいない。そういう感覚でポジションを決めてプレーさせていたらたまたまプロになったという感じです。
──守山さんのリップエースはジュニアとジュニアユースでU-18はないですが年代によって内野さんのようなポジションに対する考えは変わりますか?
守山 ウッチーはスペインとかを中心にヨーロッパに行ってその現場を見ているからそこでの指導者から具体的な数字を聞いているのでリアルな数字だなと思います。私たちはそれぞれのポジションの特性とか個性とかで若干決まってくるので、ウッチーのような何cm、何秒以内みたいなところは彼に任せています。
──実際、リップエースから興國高校へ行く選手も結構多いですよね。そこでの繋がりはお互い何かあるのでしょうか。
内野 リップエースがどう思われているかわからないですけど、僕らからしたら約2年でたたき込まないといけないことがたくさんあって、基本的に(時間が)足りないんです。だけどリップエースの子たちは今年も3人来てくれますけど、中学3年ながらトップチームの中に入っても普通にやれるんです。フィジカル的には差があるんですけど、戦術的な理解が高いので違和感なく交ざれている。0から教えるのはものすごい労力のいることですけど、リップエースの子たちは9割くらいその必要性がない。なのでリップエースの子は6年間育成してきたみたいな感覚になるんです。真悟にも言いましたがリップエースから興國に来て、興國から関東の名門大学に進学して、最近J1に内定した選手がいます。リリースはまだですけど。
──未公開情報なんですね(笑)。
内野 そうそう。なのでチームメイトか選手の名前は言えないですけど、リップエース→興國→とある大学→J1なのでリップエースは今年高卒3人と大卒2人がJリーグに進みます。うちは高卒5人と大卒3人なので8人がJリーグへ行きます。
──ものすごいことだと思いますがケン(幸野健一)さん、これについてどう思われますか?
幸野 これ、すごいことだと思うし計画的な育成が形になっていますよね。これだけいっぺんに排出するのは日本では初めてなんじゃないですかね。僕らもそういう意味ではまだまだ。(FC市川GUNNERSの設立から)7年しか経っていないのでこれからなんですけど、僕らはジュニア、ジュニアユース、ユースの全てのカテゴリーを持っているので下から少しずつ選手が上がってきてそれを実感しています。外から来た選手は戦術的な理解がなかなか遅いですけど、僕らは下から全部繋がっているクラブとして今それを実験しながらやっています。できれば小学生のときからそういうことを叩き込んでいきたいと思うし、そういう観点からしたら高校の2年ちょっとの期間で全部を叩き込むのはすごいなと思いますし、尊敬します。
──ただ中学年代で戦術理解度が高いということは中学年代から戦術をガチガチに教え込んでいるのでしょうか。
守山 そもそもサッカーは戦術のスポーツです。そこに私たちの場合ですと、動作と戦術によって選手は勝手にうまくなっていくので小学生からそうなっています。