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「4人で攻めて4人で守る。トータルフットボールを見せる」(free bird mejirodai・鳥居健人)

第19回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権の初優勝が懸かるfree bird mejirodaiは、今大会が2年連続の決勝ラウンド。

前回大会は埼玉T.Wingsに1-7と大差で敗れ涙を呑んだ。あれから2年半を経て同じ舞台にもう一度戻ってきたfree bird mejirodaiは、この大会にどんな意気込みで臨むのか。チームの創設にも携わり、選手としてもプレーする鳥居健人にこの試合の見どころとfree bird mejirodaiの魅力を聞いた。

■クレジット
インタビュー=北健一郎
文=舞野隼大
写真=日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄

準備と組織力で決勝戦へ進出

──アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権は鳥居選手にとって、チームにとって、どんな大会なんでしょうか?

鳥居健人(以下、鳥居) 日本全国を対象にする大会で、どのチームにとっても結果を残すことを大きな目標に掲げている大会だと思います。

──鳥居選手は若い頃からブラインドサッカーをプレーしていますが、この大会での優勝経験は?

鳥居 他のチームに所属していたときにあります。free bird mejirodaiの選手として出場した前回大会は決勝戦に進出したのですが、そこでは大敗してしまい非常に悔しい結果に終わりました。前回の悔しい思いから、今大会に向けてやってきたなかで、こうして同じ舞台に戻ってくることができました。相手は違うチームですけど、チームとして個人として前回よりも気持ちが入った試合になると思います。

──準決勝ラウンドのコルジャ仙台ブラインドサッカークラブ戦では、鳥居選手が先制して園部優月選手のゴールで突き放しましたが、どのような戦いでしたか?

鳥居 どのチームに対しても事前に分析や対策を立てて臨むのですが、仙台さんは初めて対戦するチームだったので、緊張感を持って戦わなければいけませんでした。特に、7番の佐藤翔選手はこれまでも点を取っていますし、点の取り方が他の選手とは違って特有のリズム感がある。そこに対してしっかり準備していったので、万全な状態で試合を迎えることができました。その結果、勝利で終えられたと思っています。

──続いて、たまハッサーズ戦でした。日本代表の黒田智成選手たちがいるチームをゼロで抑え、鳥居選手のゴールで勝ちました。

鳥居 得点は狙っていましたが、チームとして誰が点を決めてもおかしくない状況でたまたま自分が得点できただけです。体感としては2試合目の方が、組織力で勝てたと思っています。相手には黒田選手や田中章仁選手という日本代表選手としてパラリンピックの試合に出場された方々がいるので、そういったチームに対してどう戦うか準備していました。しかしレベルが高いチームを相手に向かっていくには、1人2人の力では厳しい。だからこそチームとして組織で挑んでいきました。その結果、彼らをゼロに抑えることができ、1点を取ることができたので非常にいい試合でした。

たまハッサーズ vs free bird mejirodai(準決勝ラウンド)

──鳥居選手は14歳で日本代表に選ばれています。これまでのキャリアを振り返るといかがですか?

鳥居 ブラインドサッカーを始めたのは、小学5年生のときでした。小さい頃は運動が好きな子どもで、当時の担任の先生から「何か本格的に競技をやったらどうだ」とブラインドサッカーを紹介してもらいました。そのときはただただ楽しみながらがむしゃらにやっていて、そのなかで上達していく手応えを感じていき、代表にも選んでいただけたと思っています。

高校ではゴールボールもプレーしていて、こちらでも代表に選んでもらいました。2008年からはブラインドサッカーから一度離れたのですが、2015年にゴールボールを引退して「自分の原点はブラインドサッカーだな」と思い、2016年に山本夏幹監督とfree bird mejirodaiを立ち上げて今に至ります。

──チームでは鳥居選手自身が指導しているのでしょうか?。

鳥居 チームの練習内容や戦略に関しては、山本監督に頼っている部分が多いです。free birdは経験の浅い選手が多いのですが、経験の長い自分が監督と選手を繋ぐ役割をしながら、選手目線でアドバイスをさせてもらっています。視覚障がい者がスポーツをするときは、言葉で言われてもなかなかわからないことがあります。実際に体で、肌で感じないとわからないことが多いので、自分自身がレベルの高いパフォーマンスをすることで、それを周りのみんなには盗み取ってほしいですね。

──free bird mejirodaiはどんな戦い方をするのでしょうか?

鳥居 free birdの特徴は4人で守って4人で攻めることですね。「トータルフットボール」という言い方をしますが、チームの全員に得点のチャンスがあるし、全員が守備の要になるというコンセプトです。前回の準決勝の2試合では実際の試合の場でそれを実際に表現できたと思っています。

決勝は2番の丹羽海斗に注目してほしい

──決勝戦で対戦するbuen cambio yokohamaに対しては、どんな分析をしていますか?

鳥居 buenさんは非常に強いチームで、勢いがあると思っています。うちは若手が多いですが、相手も若手が多く、似ている部分が少なからずあると思います。質の高い選手が非常に多いですし、過去に対戦したこともありますが、毎回接戦になります。buenさんも初優勝が懸かっていますし、われわれに対して相当な準備、対策をしていると思います。こちらも初優勝のために負けないように準備しているので、非常に良い試合になるんじゃないかと思っています。

──鳥居選手が注目してほしい選手はいますか?

鳥居 先ほども言ったように、free bird mejirodaiは4人で攻めて4人で守るチームなので、誰がというのは難しいですが、あえて挙げるなら今大会に関しては2番の丹羽海斗選手ですね。彼は日本代表の強化指定選手でもあり、短期間でレベルを上げてきている選手で、チームへの貢献度や役割が非常に増えました。注目していただきたい選手の一人ですね。

──この決勝戦はYouTubeのライブ配信とTBSラジオによる生中継もあります。

鳥居 スポーツ選手は誰もがそうだと思いますが、見てくださる方々がいるというのは選手にとって励みになりますし、YouTubeを見ている方や普段ラジオを聴くリスナーさんに届くこと自体とてもありがたいことです。われわれのモチベーションも高まります。そういったなかで試合ができることに感謝しながら、その恩返しとして「良い試合だった」「面白かった」「感動した」と皆さんに良い影響をもたらせる試合をしたいなと思います。

──目の見えない方はラジオで聞くことによって試合のイメージが湧きやすくなりますか?

鳥居 そうだと思います。実際のピッチでの音に加えて、プロの実況の方による解説が入ることで、より臨場感を楽しんでもらえると思います。

会場では声が出せないなかでも、ゴールが決まった瞬間やいいプレーの際にざわめきが起こります。選手たちはそれを聞いて、すごく嬉しくなるものです。なかには「俺がざわめかせてやろう」とモチベーションが高まる選手もいるほどです。今はコロナの影響で難しいですが、選手たちは多くの観客の中でプレーしたいと思っています。この状況が落ち着いた時には、たくさんの観客がいるなかでプレーしたいですね。

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