ヴォレアス北海道 池田憲士郎 KENSHIRO IKEDA Vol.3「ヴォレアスが子どもの未来をつくる」


北海道第二の都市・旭川からスポーツ界に新たな革命が起きている。プロバレーボールチーム「ヴォレアス北海道」だ。
1万円以上の高額チケット、派手な演出を盛り込んだイベント、キャッシュレス決済のいち早い導入など新しい仕掛けで驚かせてきた。
このチームを2016年に設立した池田憲士郎は“バレー界の異端児”と呼ばれる。30代の若きリーダーが目指すものとは。
「SmartSportsNews」の独占インタビューを3回に分けてお届けする。

メインターゲットは女性ファン

——ヴォレアス北海道を熱心に応援しているのは、どの年代なのでしょうか?

40代の女性がメインです。北海道では冬の間は屋外でスポーツをするのが困難なので、バレーボール人口がとても多い。特に、40代以降の女性による“ママさんバレー”が盛んに行われています。バレーボールに興味があって、なおかつ比較的時間がある。ヴォレアスの選手たちを自分の息子のような感覚で応援してくれています。

——確かに、ヴォレアスの試合会場には女性ファンが目立ちます。

7:3で女性が多いです。

——試合会場ではSNSによる発信を呼びかけています。

試合会場では一部制限をつけて積極的に写真や映像をアップできるようにしています。ただ、旭川にはSNSのアカウントを持っている人が少ないんです。Facebookはやっていても、TwitterやInstagramはやっていないとか。だからハッシュタグをつけて投稿するなどの企画をやって、SNSをどんどん活用してもらうように呼びかけています。

——SNSを通じた発信はチームにとっても重要ですか?

もちろんです。広告予算が限られているチームにとっては、お客さんがクチコミをどれだけ出してくれるかはとても重要です。ただ、10代、20代のほうがSNSの感度が高いので、今後はそうした若年層のファンをどれだけ取り込めるかは課題です。

——どうやってお客さんのニーズをつかんでいるのでしょうか。

電子チケット、キャッシュス化による蓄積したデータです。また、試合中も基本的にほとんどコートは見ていないんです。むしろ、見ているのはお客さんのリアクションです。演出はハマってるのか。どこで喜んでくれているのか。そうしたものを感じて、数値化し、どんどん改善しています。

本物に触れてほしい

——あらためて、池田さんがヴォレアスで実現したいことを教えてください。

バレーボールというスポーツを通じて、北海道から革命を起こしたいと思っています。Vリーグで優勝して日本一になったとしても、そこがゴール地点ではない。あらゆる面でみなさんと挑戦し続けていきたい、そしてその挑戦する姿を伝えたい。

——挑戦といえば、ヴォレアスでは「Vシアター」というイベントも開催しています。

Vリーグは自社開催ではないので、演出的にできないこともあります。「Vシアター」は公式戦ではないので、自分たちのやりたいことを自由にできる。音響や照明などにもこだわって、劇場のような空間でのエンタメ体験を味わってもらうのがコンセプトです。

——実際に「Vシアター」を観に行きましたが、お世辞抜きで日本のアリーナスポーツでもトップレベルの空間だったと思います。

なぜ旭川でバレーボールチームを立ち上げたのかというと、地元の子どもたちに本物に触れてもらいたかったからなんです。自分の知らない世界があることに気づいてもらって、大きな夢を見つけてほしい。旭川から夢を持った若者がたくさん出て来れば、必ず元気になっていくと思うんです。

——子どもたちのダンスチームによるショーも行っています。

自前のダンスチームです。プロの選手たちがプレーするコートで、自分たちのダンスをたくさんのお客さんに見てもらう。旭川ではダンスを学ぶことはできても披露する場がないんです。だったら自分たちでつくろうと。「Vシアター」は本物に触れてもらう場所、そして子どもたちが挑戦と発表をする場所なんです。

——ヴォレアスを通じて旭川の子どもたちの可能性を広げていく。

子どもを授かって痛感したのが、旭川における教育の選択肢の少なさです。旭川に生まれたれば親がよっぽど教育熱心でない限りは、小学校、中学校と公立中学校に通うことになります。学校教育を否定したいわけではありませんが、選択肢がないことには違和感があります。

——なるほど。

北海道には大きなポテンシャルがあります。しかし、今の学校教育からは世界で活躍する人材は出てくる確率は低いでしょう。システムをすぐに変えるのは難しくても、学校以外に学びの場をつくることはできます。次世代の子どもたちをどうやって世界で活躍できる人材にできるかは大きなテーマです。

Vol.1「旭川発!スポーツ界に革命を起こす」
(ハイパーリンクURL)
https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/6001465925529765c46b54a4

Vol.2「なぜ1万円のチケットが売れるのか?」
(ハイパーリンクURL)
https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/60014cafedcdc0661d48ed24

■プロフィール

池田憲士郎(いけだ・けんしろう)

1986年、北海道旭川市生まれ。中学よりバレーボールを始め、中・高と北海道代表。春高バレー全国大会で銅メダル。教員を目指し、北海道教育大学に進学も2年で退学し、北海学園大学へ編入。卒業後、東京の建設メーカーへ就職した3年後、父の経営する建設会社へ入社。帰郷した際に「地元の元気のなさ」に気づき、スポーツを活用した採用手法の導入により、会社の若返りとIUターンを成功させ各業界から注目される。その後、“スポーツが文化になる”を実現させるべく、地元になかったプロスポーツチームを0から創り上げる。リーグ参入初年度から優勝へと導き、圧倒的なエンターテイメントを重視したホームゲームの演出や斬新なチーム運営の手法から、”バレー界の異端児”としてバレーボール界のみならずスポーツビジネス界からも注目されている。

ヴォレアス北海道
https://voreas.co.jp

池田憲士郎Twitter
https://twitter.com/KenshiroIkeda

■クレジット

取材・構成:北健一郎

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