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浦和レッズや五輪のスポンサー仕掛け人らが語る、スポーツ界で必要な発想力

多々いる民族の中でも、日本人は特に自己評価が低い

小杉:英語は大事ですし、簡単だと思えば簡単です。これも認知科学的に解説できるのですか?

菊池:解説できます(笑) 自己評価という話です。日本人は特に自己評価が低い民族だと言われています。これは文化的背景から、卑下することや謙虚であること、そして自尊心がごちゃまぜになっているところからきています。相手に礼を尽くすということは相手を敬うこと。「自己評価」と「自分を卑下すること、謙虚であること」とは全く違った概念なのです。今やっていること、これからやることに対して「自分ができる」と思っているかどうか。これを認知科学に基づくコーチングでは「エフィカシー」という言葉を使っています。自分の能力に対して自分ができると思っているかどうかという観点のことです。

小村:エフィカシーとは「自分の能力に対する自己評価」で、自己効力感のことですね。 分かりやすく言うと、「できるという見込み感」ですね。

菊池:そうです。私の知りあいに10か国語話せる日本人の教授がいます。カナダの大学で教鞭をとっている人です。「菊池さん、このエフィカシーはよくわかります。海外の学生は自分より上がいると自分もそこまで行けるはずだと悔しがるのです。ところが日本人は自分よりも下がいたらラッキーと喜ぶのです」と言っていました。日本人は自分よりも下がいたら喜んでしまう自己評価の低さが際立っていると感じられていました。皆さんは自分自身を最高だと思っていますか?

小村:常に「YES,I’m Good」と言えるかが大事なんですよね。

菊池:そうです。ここの部分は自分の能力発揮と連動性があり重要なことです。小杉さんの話を聞いて、ひとつお聞きしたかったことがあります。新しい分野に、スポーツとは全く関係ない分野に飛び込む時に、そこに入るメンタリティの部分。不安とか出ましたでしょうか?

小杉:私は20年間野球しかやってこなかった。新しいことをやる挑戦するという不安より、私は1回、人生としては死んだと思ったのです。だから、何をやるにしても怖くはなかったです。その時の生きる糧が、もう一度スポーツに携わることでした。ただ、パナソニックには勉強で有名な大学の出身者が多く、そこで仕事をするわけです。誤解をおそれずに言うと、意外にしゃべってみたら一緒に出来ないことはないと思いました。もちろん、頭では勝てませんが…。そう思うと積極的に絡んでいけますから、いろんなことを教えてもらえました。

菊池:素晴らしいですね。日本の文化や企業もそうなってしまっていますが、現状できることを集めて目標設定するパターンが非常に多いです。例えば前年比よりも110%、120%の目標を立てるというのは、現状の結果に鞭を打ってプラス10%、20%という考え方が非常に多いです。もちろんステークホルダー、銀行からお金を借りたりする場合は、根拠となることを示すために前年これだけやったからと必要な場面もあります。

ただ、まさに小杉さんが体感され歩まれた通り、認知科学に基づくコーチングの観点から言いますと、現状の延長線上にないようなゴールを設定した方がよいと推奨しています。手段や方法は後からついてきます。我々の言葉で言うと「ゴールが先、認識が後」です。ゴールを先に決めたから、そこに至る道のりが後で見えてくるということです。日本の教育は目標設定が大事だと小学校の頃から目標設定をさせられます。

では、なぜ目標設置(ゴール設定)をすることが大事なのでしょうかということはなかなか語られてきていません。実は認知科学的には答えがありまして、認識が変化するからです。

公開すごトーク

小村:認識が変化する実験を皆さんにしてもらいましょう。

菊池:皆さんは携帯電話をお持ちだと思います。携帯電話の待ち受け画面を見ないで絵として描いてみてくださいと言ったら描けますか? あまり描ける人はいないと思います。これは当然ですね。携帯電話のゴール(目的)は、電話をかける、それからメールする、ネットするなどです。

携帯電話を絵として描くというゴールはありませんから描けなくて当然なのです。なぜそういう現象が起こってしまったのか、これがゴールの重要性です。同じものを見ていても、ゴールによって認知が変化するのです。これがゴール、目標、目的を持つ大事さなのです。同じ仕事をしていても、ゴールが何かによってそれに対しての評価が変わる、認知が変わってしまうのです。実はこれが重要なことだと認知科学に基づくコーチングでは説いています。

小杉:その中でレッズのゴールは中長期的に見たらどうでしょうか? J1でレッズと言ったら皆が知っているチームで、勝ち続けているイメージがあり、どんな将来像を見ているのでしょうか。

江口:直近の目標は年間優勝、タイトルを獲るということになっています。中長期的な目標は自立できる経営母体が既にあるので、誰にも頼らずに自立していける、そんなクラブになれるんですね。ところが今の三菱自動車問題のきっかけに、急に三菱自動車にごめんなさいというわけにはいかないですし、今まで支援してくれた企業であるわけです。

”浦和レッズは誰のものでもない”という言葉があります。実際にオーナーの社長は浦和レッズの人間であり、三菱自動車の出向ではありません。クラブの人間である方々がたくさんいます。その中で市民の声が届く体制づくりというのが、ヨーロッパのクラブで100年続いているクラブを見習わねばいけないなというところがたくさんあると思うので、日本初というところの道を歩んでもらって、私もそこに仕掛けていきたいと思っています。

小村:ピンチをどうチャンスにしていくか大きな転換期でもあるわけですね。パナソニックさんはガンバ大阪ですけど、どうですか?

小杉:パナソニックではなく、ガンバ大阪に経営陣があるので(笑) ガンバ大阪と一緒に吹田スタジアムをどうように素晴らしいスタジアムにしていくのか? パナソニックのショウケースにしたいという意気込みは色々な部署から聞かれます。

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