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浦和レッズや五輪のスポンサー仕掛け人らが語る、スポーツ界で必要な発想力

東京は立川で行われている”すごトーク”をご存知ですか? NPO法人スポーツ業界おしごとラボ(以下、すごラボ)が毎週末に行っているイベントで、スポーツ業界人をゲストに招き、テーマに基づいて交流座談会ができるもの。今回より、そのすごトークのトークセッションの一部をAZrenaにて公開させて頂くことになり、今後も定期的に配信を続けていきます。(すごトークのスケジュール確認&参加申し込みは3ページ目をご参照下さい)

記念すべき第1回は、6月にすごラボが代官山にて主催した「公開すごトーク」です。浦和レッズのスポンサー営業からプロモーション企画、現役選手を起用した広告撮影やサッカー教室運営などを担当した浦和レッズのスポンサー仕掛け人であるランドガレージ取締役の江口智也氏、パナソニック株式会社のスポンサーシップイベント推進室オリンピック・パラリンピック課の課長でありオリンピックのスポンサー側の仕掛け人の小杉卓正氏、そして元柔道日本一から自分づくりの仕掛け人・認知科学に基づくこころの教育家である菊池教泰氏、そしてすごラボの理事長である小村大樹氏によるトークセッションです。

テーマは、『仕掛け人に聞く、スポーツ産業で求められる人材像と自分自身の仕掛け方・考え方』。今回はその中から一部、“仕掛け人の発想力”の部分を公開いたします。全文を読みたい方はコチラから。

仕事をする上で大切な”抽象化”をする能力

小杉:江口さんと似ているのですが、一番は何をしたいのかという企画コンセプトが合えば、後はおのずと、いろんな人がいろんな意見を持ってきてくれます。1から10まで自分の企画を通せば、100点まではもらえます。但し、100点までしかもらえません。でも、今こういう企画をやりたい、ここが強み、そして、仲間の意見、この三点を押さえれば、別のプロ集団に預けることができます。クリエイティブのプロから意見を聞くとか、PRのプロに意見を聞くとかですね。ディスカッションの中で生まれてきたものは、当初の想定していた100点が300点くらいの結果になったりします。コンセプトをブラさないこと、強みをしっかり押さえておくこと、後は多少自分の意見を変えられても良いと考えること、そうすることで、思わぬ掛け算になることもあるのです。

小村:様々なプロ集団の方に投げることが掛け算になっていく。

小杉:ディスカッションの中で良いものを拾っていくということですね。

菊池:江口さんと小杉さんの二人の共通点を聞いて、まさに「抽象度の高さ」が高いと思いました。抽象度とは物事の視点の高さのことです。今ここは代官山です。代官山の抽象度を上げていくと、東京。代官山は東京に入っています。更に上げていくと関東、更に上げれば日本、更に上げるとアジア、そして世界と、抽象的になっていくのです。日本の教育の難しいところは具体性を持つことが正しいと教えるところです。抽象的に上げていくのが苦手な傾向にあります。これはものすごく重要なことで、色々な様々な方々とお仕事をする中で、抽象化能力は大切なことなのです。

小村:視点を上げて考える重要性ですね。上から見たら広く物事が見えることですね。

菊池:木も見て森も見て森林も見て、だけど木の葉っぱも見ることですね。上に下にと行ったり来たりする。上げっぱなしでもダメなんです。リーダーは現場の細かい観点はわからなくても良いという考えもあるかもしれませんが、一応、そこも押さえておきながら、両方を行ったり来たりすることが大事なのだと思います。

小村:なるほど。俯瞰の視点、高いところから見下ろす目を持ち、全体を客観的に見ることも大事ですが、現場レベルにズームインする目も大事ということですね。

公開すごトーク

菊池:そしてもうひとつ、LUB(リースト・アッパー・バウンド)をとるという表現をしますが、最小公倍数のことです。例えば牛好きと馬好きがいました。その二人が、「牛のほうがよい」「いや馬の方がよい」とケンカをしていたとします。片方は牛、片方は馬、これは同じ抽象度です。ところが、馬も牛もどちらも動物なのです。同じ動物だという観点で話をするとケンカにならずに上手くいくのです。これが企業でいうところのミッションだったりします。色々な人たちの共通項がミッションやビジョンになります。この部分をとっていく。

これを我々は「LUBをとる」と言います。共通項を見出してそこにアプローチしていく。頭が良い子は抽象化能力が高いと言われています。物理を勉強していても、数学とリンクしていたり、様々なことに波及するからです。だから全て具体性が違うだけで、同じところを押さえているから、全てが一緒に考えられるのです。色々な経験をすることで、あの人はこう思うだろうから、と考えることができるようになってきます。広報側はこう思うし、経理側はこう思うし、いろんな視点が入ってくる。こういったものをひとつにまとめて、ここを押さえておけば全部にリンクするなと考えられるのです。江口さんと小杉さんの話を聞いて抽象化能力とLUBを取ることが重要だなと感じました。

小村:ただ面白い企画を考えるだけではなく、その企画を実行に移し、成果を挙げなければなりません。そのためにも、菊池さんがおっしゃる最小公倍数的な調整力が仕掛け人には重要な能力ということですね。

発想力を生み出すために必要なこととは?

小村:仕掛けるための重要性をお聞きしてきましたが、とは言え企画力、いわゆる企画を生むための発想力は不可欠な点でもあります。発想力を身に着けるためにはどのようなことからされた方が良いでしょうか?

江口:まず毎日、新聞を読みましょう。何が今起きていることかを知ることは大事なことですよね。今あの企業がこういうことを始めたということをきっかけに、その情報を基に自分ならこうするという考えが生まれます。それをお客さんに持って行き、打ち合わせの中で、更なるジャストアイデアが生まれます。それを社内に帰って雑談レベルで同僚と話をしていると、こういう風にしたらもっと面白いかもねとなります。自分に新しく生み出す発想力がなくても、何か情報を持っていれば何かがつながっていくものです。

小村:情報を持つことが新しいアイデアを生み出す源になり、そのきっかけが人を介して面白いものへと変化していくのですね。

菊池:情報を持つことで認識が変化し、先ほど述べた※LUB、人に共通の部分「あっ、そこだったら、私はこういうのがある」と、自分に見えない視点を提供してもらえるところですね。

小村:なるほど。これも抽象度を高めた最小公倍数な見方をすると、視点の共有が掛け算になっていくのですね。小杉さんにも聞いてみましょう。

小杉:そうですね。ひとつはスペシャリティ(得意分野)を作る。今努力されている勉強や仕事でスペシャリティを作った方が良いと思います。その経験を語れないとダメじゃないかなと思います。

小村:確かに、0ではダメで、1でも2でも得意分野の数字を持ってもらわないと、掛け算にも最小公倍数にもなりませんからね。視点の共有から発想が出てくると考えるのであれば、まずは共有できる武器は欲しいですね。

小杉:そして、江口さんと同じ情報の話になりますが、英語をやっておくべきだと思います。私も26歳まで英語を一切やってこなかったので後悔しています。

例えば、インターネットの情報の約60%は英語と言われています。日本だけ見ていたらビジネスは成り立つし、最低限のことは、世界の情報を日本のメディアが情報提供してくれますが、皆さんが目指すスポーツビジネスの最前線はアメリカとヨーロッパです。その最前線の情報を取りに行こうと思えば英語を知っておかないと一番にはなれません。スポーツビジネスをやりたいと思うのであれば、是非、スポーツビジネスで一番を目指してもらいたいし、そうすると自ずと英語が必要となってきます。

小村:これも抽象度の話になってしまいますが、日本だけの視点であれば日本語だけでいい。しかしグルーバルの視点を手に入れるためには世界の視点が必要であり、そのためには英語が必須ということですね。英語を学べば日本語の中でしかない情報よりも世界の情報を得られるということですからね。小杉さんにお聞きしたいのですが、とは言っても、英語を学ぶことは大変なことだと思うのです。

小杉:これも先ほど述べたようにパッションだと思います。スポーツビジネスをやるには英語を話さなければならない「have to」だったけども、実は話したいの「want to」だったわけです。私はスポーツビジネスに就きたい。だから英語を勉強するんだという気持ちになりました。パナソニックでスポーツビジネスに就けなくても英語が話せた方が仕事にプラスになるとも思いました。けっこうすぐに英語ができるようになってきました。一年でTOEIC600点くらいまで上がりました。動機があればできるようになるのです。

公開すごトーク

江口:英語の流れで話をさせてください。実は私は学生時代に交換留学で2年間イギリスに行ったのです。全く英語が喋れず、サッカーをやりにイギリスに行ったようなものです。しかしホームステイをしていたので、全く喋れないとご飯も出てこないんです。生きていくために英語を学ばなければならないという最初は「have to」な立場で、録音して辞書を片手に毎回毎回何を言っているんだろうと調べていました。

学校でも講義を聞いてプレゼンをする場面があり、日本人だからと見られるのですが、とても悔しくて、ちょっとでもネイティブに近づいてやろうと勉強していました。気持ちが途中から「want to」になるんですよ。そんな英語力も今は少し錆びれてしまいましたけどね(笑)

小杉:私の経験で話をすると、決してネイティブになる必要はないと思います。私はいまだに英語に対して劣等感はありますけど、それを強みに日本人ならではの英語で交渉できますよ。何を言いたいかというと、アメリカ人もヨーロッパ人も自分の言いたいことを全て話されます。その後、最後にまとめで「皆がやりたいことはコレで、私がやりたいことはコレだから、こうしよう」とぶつけます。簡単な英語でも良いので要点をまとめて、バスっと言えること。日本人は、英語を高校や大学まで勉強してきているわけだし、英語自体はそんなに難しい語学ではないですので。

小村:情報も視野も広がるという点で英語は大事ですね。

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