灰田さち(元広島、現ツエーゲン金沢)が語る、Jクラブで働く魅力。

Jクラブで働く魅力と、必要な“視野”の広さ

今の仕事はホームタウン活動が中心で、チーム名に「金沢」という地名はついているものの、今年からは『We are Zweigen』というスローガンを掲げ、石川県全体から愛されるクラブを目指して活動しています。ホームタウン推進室が今年新設されて、地域のイベントに参加したり、サッカー教室をしたりというふうに、今年はとにかく「地域の皆様との接点を増やすこと」を目標にして活動しています。

Jリーグのクラブで働くことは、街の人たちの喜怒哀楽に影響を及ぼせることが1番の魅力だと感じています。以前、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)のスタッフさんに話を聞かせていただく機会がありました。バイエルンはすごく人気で、その分アンチも多いですけど、アンチも含めて大勢の人たちを一喜一憂させることができるのはすごいことなんだと仰っていました。バイエルンが勝つことによって悔しがる人もいますし、アンチも無関心ではなく、関心を寄せているからこそ悔しがっていますから。

私が広島にいる時には、サンフレッチェの優勝だけでなかく、カープの25年ぶりの優勝を見ることができたのですが、街は大騒ぎになっていました。広島に生まれて良かったと泣き叫んでいる人もいましたけど、そういうふうに思わせられる仕事って数少ないですよね。それはサンフレッチェが優勝した時もそうだったと思いますし、ツエーゲンが勝つことによって、石川県の人々が楽しめるようにしていきたいと思っています。

もし今後、Jリーグのクラブで働きたいという方には、サッカーやスポーツに関わらず、いろいろな経験をしてほしいです。サッカー好きな人は全国に一握りで、その一握りを増やしていくためには、興味がない人たちに振り向いてもらうことが必要です。それなら、その人たちは何が好きで、何が楽しくやっているのかを知るためにも、視野を広げることが大切になります。

灰田さち氏

サッカー好きな人にとっては、サッカーはこんなに楽しいのに、なんでお客さんが入らないんだろうと感じる人もいると思います。でも、例えば五輪が東京で開催されることが決まっても「道が渋滞する」というふうに嫌がる発言をしていた人がいたんです。そういう一般人の目線を知らないと、視野が狭くなってしまいがちになってしまいます。

ホームタウン担当としても、地元のことを知ろうと勉強しています。毎朝、北國新聞のスポーツ面ではなく地域面を熟読し、県内のホットニュースや、若いころには全く興味がなかった地元の伝統工芸や産業にも関心をもつようになりました。例えば、石川県小松市は歌舞伎が有名な街なのですが、今年のGWに開催されていたこども歌舞伎のイベントを鑑賞してきました。人生初の歌舞伎鑑賞でした。石川県に帰ってきてからは、日々地元の魅力を再発見しています。

ツエーゲンは観客数が平均3,525人(第8節終了時点)くらいで、地域の方たちには広く名前が知られていますけど、まだまだ関心のない方が大多数です。今年は平均5,000人を目標に、まずはホームタウン活動で地域の皆様との接点を増やし、興味を持っていただいて、「一度スタジアムに行ってみようか」と思ってくださる方を増やしたいです。

灰田さち氏

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