古橋亨梧,W杯,サッカー,ワールドカップ

W杯のエースに名乗り 神戸で花開いた古橋亨梧の軌跡

写真:DeFodi Images/Getty Images

2022年11月から行われるカタールワールドカップ(W杯)で日本はE組に入り、ドイツ、スペインといった世界の強豪国を相手に戦いを挑む。そこで、サムライブルーの一員として本大会での活躍が期待される選手たちにスポットを当てて、そのキャリアを振り返っていきたい。今回紹介するのはセルティック移籍1年目ながらチームの得点源を担い、スコットランドで特大のインパクトを放ったフォワード・古橋亨梧だ。(文・井本佳孝)

タレント軍団・神戸で飛躍

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写真:Steevy84

1995年生まれの古橋は奈良県出身でリヴァプールの南野拓実は興國高校時代の同級生だ。南野がセレッソ大阪のユースを経て華々しくプロ入りしたのとは対照的に、古橋は中央大学に進学する。プロ入り目前で複数のJクラブに練習参加したもののなかなかオファーをもらえない苦境も経験したのち、2017年に当時J2のFC岐阜に加入する。

岐阜ではプロ入り1年目からレギュラーをつかむと、2018年には二桁得点を記録し、J1のヴィッセル神戸に引き抜かれる。着実に力をつけた古橋はカテゴリーをあげてもレギュラーの座を維持しただけでなく、アンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキ、ダビド・ビジャらW杯優勝経験をもつそうそうたるタレントを擁するチームにおいても存在感を示し、頭角を現していく。

神戸で2年連続二桁ゴールを達成し、翌2021年もシーズン途中までに15ゴールを記録していた古橋は7月にスコットランドの名門・セルティックに完全移籍で加入する。横浜F・マリノスを率いて2019年にはリーグ優勝を果たしたアンジェ・ポステコグルー監督のもとで自身初となる海外挑戦を果たす。

セルティックで残した絶大なインパクト

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移籍初年度は海外での適応に苦しむ選手も多い中、Jでの実績を引っさげて欧州に乗り込んだ古橋はいきなり輝きを放つ。ヨーロッパリーグ(EL)予選で加入後初ゴールを決めた古橋は、リーグ戦初先発となった第2節のダンディー戦でハットトリックの離れ業を見せ、サポーターの心を鷲掴みにする。かつてセルティックでプレーした中村俊輔を引き合いに出し、称賛の声が相次ぐなど、その存在をいきなり不動のものとする。

シーズン途中には怪我による戦線離脱を繰り返す時期もあったが、最終的にはリーグ戦ではいきなり二桁ゴールに乗せる12ゴールで得点ランキング2位に入り、公式戦でのゴールは20を超えた。セルティックのリーグとリーグカップ優勝の原動力となり年間ベストイレブンにも選出されるなど、海外挑戦1年目を文句のつけようのない形で終えた。

古橋の長所は裏へ抜け出すスピードと巧みなポジショニング、そして右足、左足、ヘディングとどこからでもゴールが奪える決定力の高さだ。神戸時代にはイニエスタとのホットラインでゴールを量産したが、セルティックに移籍してもプレースタイルは変わらず。縦に速いサッカーが特徴のスコットランドリーグやポステコグルー監督のもとでそのスタイルはより活かされ、海外1年目で結果を残すことにもつながった。

またピッチで見せる闘志あふれるプレーとは対照的にピッチ外では温和な人柄も魅力で、謙虚な姿勢も評価されている。同級生の南野らがリオ五輪や海外で華々しくキャリアを築く中、大学、J2、J1と一歩一歩キャリアを進め、イニエスタやビジャといった世界的名手とのプレーも経験した中で20代半ばで海外挑戦を果たした。一つ一つの経験を吸収して力に変え、キャリアを切り開いてきた人間力も武器となっている。

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