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ブラジル人MFがウクライナの所属クラブを非難!「死ぬかも」と訴えるも助けを得られず「戻れば平穏になると言われた」

シャフタールの主力として活躍を続けていたアントニオ。だが、戦争を目の当たりにしてクラブからの退団を希望している。(C)Getty Images
文字通りの“恐怖”から逃げ延びたフットボーラーが、悲痛な胸の内を訴えている。

2月24日に「脅威から防衛する」としたウラジミール・プーチン大統領が特別軍事活動を承認。それを合図にロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻は本格化し、世界は混沌としている。

スポーツ界にも余波は出ている。サッカー界では、FIFA(国際サッカー連盟)とUEFA(欧州サッカー連盟)が、ロシア代表と同国クラブチームに対して、両機構の主催大会への出場を禁じた。

まさに緊急事態の最中で、全土に戒厳令が敷かれたウクライナのプロサッカーリーグは中断を余儀なくされた。選手たちも避難生活を強いられ、国内屈指の名門シャフタール・ドネツクでプレーする助っ人外国人選手たちは、独自に国外避難を決意した。

そのメンバーのうちの一人が、ブラジル人MFマルコス・アントニオだ。在籍4年目を迎えた21歳は、母国紙『O Globo』の取材に対して、「クラブがもっと助けてくれると思っていた。でも、何もしてくれなくて、僕らは驚いた」と語っている。

もっとも、選手間では24日以前に不安が募っていた。アントニオによれば、トルコでのトレーニング合宿後にウクライナへの侵攻の可能性を耳にしており、シャフタール側にも「大丈夫なのか」「死ぬかもしれないじゃないか」と幾度となく確認していたという。

「トルコにいた時に、僕らは戦争が起きそうだというニュースを目にしていた。だから、クラブと話し合いの場を設けてもらった。でも、彼らは『大丈夫だ。何も起きない。すべてうまくいっているし、戻れば平穏になる』と言っていた。こんなことが起きるのは明らかだったのに、僕らはトルコに居させてもらえなかった」

ウクライナに戻ってから、わずか2日後に戦火が広まった。「家族と必死に連絡を取り、チームメイトと逃げることだけを考えた。避難するときの道のりのことは一切覚えていない」と語ったアントニオは、キエフ市内のホテルで3日間を過ごした。
未体験の恐怖に「何もできなかった」と語る21歳は、当時を次のように回想している。

「本当に毎日死ぬかもしれないという緊張に苛まれた。何が起こるかわからなかったんだ。僕らは(ウクライナから)抜け出すためにできる限りのことをしたが、何もうまくいかなかった。唯一の選択肢だった車も燃料がなくて断念しなくちゃいけなくて、完全に行き詰っていた」

その後、UEFAとウクライナ・サッカー連盟の協力を得て、チームメイトたちとともに、電車でルーマニアへと避難したアントニオ。「もう戻るつもりはない。クラブにもこれは理解してほしい」と話すブラジリアンは、最後にこう訴えた。

「なんでもないことじゃないんだ。これは戦争なんだよ。単なる銃撃戦で、その場から逃げようという話じゃない。戦争は本当に逃げ場がなくなるんだ。母国じゃなきゃなおさらだ。だからこそ、頭を上げて自分の人生を歩みながらも、そこにいた仲間のことを忘れちゃいけないと思うんだ。

一刻も早くこの状況を終わらせるために、何かをしてほしい。僕らは実際にショッキングな映像や光景を見てきた。だからこそ、こんなおかしな事態が終わることを願う。誰もこんな目に遭うべきじゃないんだ」

構成●THE DIGEST編集部

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