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「学校の体育施設を開放すれば、遊び場が60%増える」スポーツ庁が描く、地域で支え合う環境構築への道のり

これまでAZrenaでは「誰もが気軽にスポーツに親しめる場づくり実現に向けて」と題し、学校関係者のインタビューや実証の実施レポートを通じて、スポーツ庁「学校体育施設の有効活用推進事業」の取り組みについてお届けしてまいりました。

最終回となる本記事では、スポーツ庁 参事官(地域振興担当)付 参事官補佐の岡部将己さんに、実証の振り返りから現状の課題、今後の展望について伺いました。

なぜスポーツ庁は、学校体育施設の有効活用を進めているのか?一連の取り組みの根幹にある、スポーツ庁の想いに迫ります。

学校体育施設の有効活用で、スポーツに親しめる場を増やす

ー岡部さんが所属される部署の主な活動内容や目標について教えてください。

岡部:私たちの担当は、誰もが気軽にスポーツに親しめる場づくりに取り組んでいます。具体的にはスポーツに親しめる場の量的な充実と質的な充実を進め、利用者のニーズを踏まえながら、地域において運動・スポーツがしやすい環境づくりを行っています。

ー誰もが気軽にスポーツに親しめるようにするために、現在直面している課題は何ですか?

岡部:まずは施設数といった量的な課題ですね。近年、施設の老朽化に伴い施設の集約化・複合化により、施設の数が今までより減少するとともに、財政的な問題から施設の更新や新設も難しい状況で、誰もが気軽にスポーツを行うことが難しくなっている地域も見受けられます。また、個人で気軽にスポーツを行う場も少なくなっている印象です。

しかし、スポーツを楽しむうえで施設は欠かせません。私たちは量的な充実を図るため、公共スポーツ施設の整備だけではなく、その他の施設や場を活用する取組も推進しており、そのひとつが学校体育施設の有効活用となります。

ー施設の絶対数を増やすことが、学校体育施設の開放事業の目的だったのですね。

岡部:実は、スポーツ庁が実施している統計調査の結果をみると、公共スポーツ施設の割合は全体の約25%程度に対し、学校体育施設は約60%を占めています。学校体育施設は、授業等で利用されていない時間帯もあることから、学校教育上支障がないよう適切なかたちで施設を開放して地域の方々が活用できる場にすれば、地域住民にとって、その60%分の場が増えるわけです。そのため、地域住民に最も身近な学校体育施設の有効活用を進める本事業を開始しました。

参考:スポーツ庁 Web広報マガジン|DEPORTARE(デポルターレ)『国内スポーツ施設の約6割!学校体育施設の有効活用の方法とは』
https://sports.go.jp/tag/equipment/6.html

公園での「ボール遊び禁止」に対する打開策は?

ー昔に比べて、現在は公園等でボール遊びが禁止されている場所も増えています。このような制約が子どもたちの運動能力にどのような影響を与えているとお考えですか?

岡部:因果関係について断言できませんが、体力の低下やソフトボール投げの距離が短くなっているという結果は見られるので、一因としては考えられるかもしれません。一方で、遊びの多様化に伴いテレビゲームやスマホゲームの利用など、他にも様々な要因があると考えています。近年はコロナ禍による生活習慣の変化によって事態が深刻化していましたが、最新の調査では改善の兆しが見られています。

参考:令和5年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(スポーツ庁)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1411922_00007.html

ー新型コロナウイルス流行の前後で、子どもたちの運動機会に変化はありましたか?

岡部:流行の初期段階に集団活動が制限されたことやスポーツ少年団の活動が中止されたことによって、子ども達の運動機会は減っていたと考えます。

コロナ禍も明けて今では以前のように外遊びも可能になりましたが、そもそも都心部では子どもたちが自由に遊べる場所・環境が少ないという現状もあるかと思います。

地方部であっても住宅街にある公園ではボール遊びを禁止するところも多々見受けられます。大きな運動公園であれば問題ないのですが、小さな公園でのボール禁止は珍しいことではないと聞いています。

ーこのような状況を打開するため、どのような策を検討されていますか?

岡部:このような課題に対応するため、今年度事業のひとつのテーマとして、「子どもたちが気軽にボール遊び等ができる場づくり」を設定し、学校体育施設が公園の代替の場所にならないか検証するための取組を募集したところです。学校体育施設を個人に開放することができるか、利用者側にどのくらいのニーズがあるのか、そして、実施することによってどのような課題が生じるか等といった内容を検証したいと考えていました。

またスポーツ庁では、学校体育施設の有効活用だけではなく、公園、歩行空間、広場等といったオープンスペース等の活用も今年度から進めており、様々な環境下で運動・スポーツをどのように実施することができるのか検証を行なっています。

参考:オープンスペースの活用等による誰もがアクセスできる場づくり促進
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop02/list/1380329_00018.htm

ー学校体育施設の開放事業が目指す姿について教えてください。

岡部:本事業テーマが目指す姿は、個人が自由に遊べるような環境の創出です。現在も校庭開放などは行っているものの地域のスポーツ少年団やクラブチームといった団体利用が多く、個人では利用しにくい現状があります。特に、校舎と学校体育施設が一体になっていたり、子どもたちの動線と重複するといった施設面の課題もあり、学校の安全管理上、なかなか有効活用が難しい学校も少なくないはずです。

また個人で利用する際には、管理者不在によって、トラブル発生時の責任の所在について問題が生じるリスクがあります。現在は怪我やトラブルを防ぐためにボール遊びを制限している校庭も存在しますが、私たちとしては利用される方がより自由に遊ぶことができるように、さらなる環境づくりを進めていきたいと考えています。

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