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賢人に聞く『元ドラフト1位がもくろむのは正しい情報の提供・発信_加藤幹典』

ゲーム会社のアカツキが今、積極的にスポーツ領域へ踏み込んでいる。2019年3月15日には、横浜に複合型エンターテインメントビル“アソビル”をオープンしたが、最上階にはマルチスポーツコートが併設されている。一般客への開放を行うほか、現役のプロアスリートやOBから指導を受けられるスクール「Hero’s academy」も開校されているが、このプログラムの運営を務める株式会社FORMICで代表を務めるのが、かつてドラフト1位でヤクルトスワローズに入団した加藤幹典氏だ。加藤氏と本プログラムに携わった株式会社アカツキライブエンターテインメントの遠藤幸一郎氏に話を伺った。

一度はヤクルト本社に勤めるも「野球界にもう1回携わりたい」

遠藤:私はもともとアプトという会社を創業していて、遊休不動産をリノベーションしてウエディングスペースにしたり、企業さんのイベントをしたりする場所を作っていました。それとは別にASOBIBAという会社があり、都内の遊休施設をサバイバルゲームフィールドにして、普通は郊外でしか遊べないアクティビティをフットサルのようにアフター5で楽しめる施設を運営していました。

ASOBIBAが郵便局別館の活用の話をしていく中で、より大きく、よりインパクトのある企画にすることができないかと考え、アカツキグループに参画すると同時にアプトとASOBIBAを合併させ、アカツキライブエンターテインメントとしてこの企画を進めることにしました。そして、横浜駅東口の再開発の話の中で、ASOBIBAが郵政と交渉をし、アソビルのプロジェクトが始まったのです。

屋上の話をすると、エンタメとしてやるのはハードルが高いだろうなと考えました。テクノロジーを入れても雨天リスクがあったりします。もともと郵便局の福利厚生施設として屋上にスポーツコートがあったので、それをベースに作っていきました。実は僕も現役の陸上選手で、スポーツの教育現場に対するアプローチということを達成したいとずっと思っていました。その中で友人を介して加藤さんにお声がけさせていただき、今回の野球スクールの開講に至ったという流れです。

加藤:私は2012年に現役を引退しましたが、妻には「自分だったら辞めてもある程度稼げるから独立したい」と相談しました。でも、「お願いだから1回社会を経験してほしい」と。もともと引退後はヤクルトで働かせてもらえるということを、契約時に口約束ベースですが話していたので。それもあってヤクルト本社で働かせていただくことになりました。

がむしゃらに3年ほど働いて余裕が出てきたときに、たまたま野球とつき合うきっかけがあった。久々に野球と触れ合って「面白いな、もう1回携わりたいな」という思いを抱いたんですよね。自分は65歳までヤクルト本社にいるのか、違う道でスポーツとともに歩んでいくのかを想像したときに、本社で定年を迎えているイメージが湧かなかった。そして、友人が野球界での再活動を応援してくれたので、会社を辞めることにしました。

遠藤:ボクは高校まで野球をやっていて、大学では陸上に転身してインカレも出た。その後は実業団に入ったのですが、高校でいうと甲子園、大学でいうとインカレがあったことで、すごく人生が充実していました。それを見ていた親も楽しそうでしたし、チームメイトと切磋琢磨(せっさたくま)することや、いろいろと努力して精進しようと思えるマインドも、全部スポーツから教わりました。やはり子どもたちには、スポーツを通じて人格形成をしてほしいなと思っています。多くの子どもたちが「スポーツをしたい」「スポーツで夢を見たい」と思える世の中にしたいとは常に考えていました。

加藤:ヤクルトの営業でいろいろな地域に行って「野球をやっていました」という話をすると、「息子が野球をやっているから見てください」とか「スポーツイベントを手伝ってくれませんか?」といわれることがあって、実際に現場に行くわけです。そこで感じたのが、指導者の質が決して高くないということ。イベントでキャッチボールの指導をしても、ケガのリスクが伴う投げ方をしている子が多いのです。そこから指導者の育成をしたい、正しいフォームと正しい知識を子どもたちにつけてほしい、そしてその情報発信をできる場を作りたいと思いました。

遠藤:日本は部活動スポーツなので、そのスポーツを知っている方ではなく、学校の先生がある種、指導のイニシアチブを握っている状態が多い。アメリカはクラブスポーツなので、ちゃんと指導したい方が指導をしている。もちろんスポーツの指導において、流派や人それぞれの思想はあるので、必ずしもこれが正解というものはないと思います。ただ、前提として、そのスポーツを指導することに情熱を持っている人が指導者になるべきだ。学校の部活動で配属されたから取りあえずやらなければいけない、という人たちがいる状況は、子どもたちの今後の可能性を狭めているなと思います。

加藤:今の野球スクールの現状でいうと、元プロの人が各地でやっているのですが、その情報が集約されていないという現状があります。各々がどこでやっているという情報を地元の人が口コミで知って、そこに人が集まってくるというイメージです。この部分の情報整理というのもすごく大事になると考えています。

元プロ選手から教わる仕組みを作った中で、集まった生徒さんでまずはチームを1つ作りたいなと思っているんですよ。“元プロが教えてくれる”チームというコンセプトで作り、世に発信していく。まだまだどういう状況になるかはわからないですけど、「正しい指導ができる指導者がいて、それを受けられる場所」を提供するということを柱としてやっていきたいなと。

遠藤:今は野球、バスケットボール、フットボール、かけっこ、陸上の5種目予定しています。ただ、こういうお仕事をさせていただいていると、自分たちも知らないようなマイナースポーツとめぐり合ったりすることはあります。その世界の第一線で活躍されていたり、普及活動をされている方とタッグを組みたいなという思いも持っています。

▼遠藤 幸一郎(えんどう・こういちろう 株式会社アカツキライブエンターテインメント執行役員)

1986年生まれ、東京都出身。立教大学社会学部卒業。株式会社リクルートに新卒で入社後はゼクシィに配属、結婚式会場の広告営業を通じブライダル業界に携わる。リクルートを卒業後、株式会社アプトを共同創業し、代表取締役社長に就任。2018年にアカツキライブエンターテインメントにアプトが吸収合併。2019年3月に横浜に「アソビル」を開業。現役陸上選手としても実業団チームに加盟し、活動中。

▼加藤 幹典(かとう・みきのり 株式会社FORMIC代表取締役)

1985年生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学卒業。東京六大学野球の記録では、史上5人目(当時)となる30勝300奪三振を達成。2007年大学生・社会人ドラフト会議で東京ヤクルトスワローズから単独指名を受ける。2012年に現役を引退。現在は「株式会社 FORMIC」代表取締役。子供たちの夢の実現のために本格的な指導「Hero’s academy」を創設し、「アソビル」屋上マルチスポーツコートにて、未就学児〜中学生未就学児〜中学生を対象にバスケット、野球などの指導を行っている。

▼協力:AZrena(アズリーナ)
※詳しい記事はAZrenaの公式サイトでご覧ください。
>> 元ヤクルト・加藤幹典がアカツキと共に描く“Hero’s academy”の裏側

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