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大谷翔平越えのインパクト。令和の怪物・佐々木朗希が見せた衝撃の4試合

史上2人目、大谷翔平以来の160キロ

公式戦最後の登板を見たのは、7月21日、夏の岩手大会4回戦の対盛岡四戦だ。この日は過去の2試合とは違い、立ち上がりはかなりスピードを抑えてのピッチングだった。しかし8回に投じた117球目に、高校野球史上2人目となる160キロをマークした。公式戦では大谷翔平以来の出来事だった。

9回に2点差を追いつかれて延長戦に突入したが、12回を一人で投げ抜いて21奪三振をマーク。打っても決勝ツーランをライトスタンドにたたき込むなど、まさに独り舞台という試合だった。

プロ候補の大学日本代表を12球で仕留める

高校時代の佐々木を最後に見たのは、8月26日、第29回WBSC U-18ベースボールワールドカップの壮行試合として行われた大学日本代表との対戦。佐々木は、高校日本代表の先発投手としてマウンドに立った。

宇草孔基(法政大・現広島)をレフトフライ、小川龍成(国学院大・現ロッテ)と柳町達(慶応大・現ソフトバンク)を連続三振に仕留め、わずか12球で三者凡退に抑え込んだ。その間、投じたストレートは全球150キロ以上をマークした。

のちにプロに進んだ3選手を簡単に抑えたこともすごいが、それ以上に試合前の投球練習が強烈だった。キャッチングに定評がある捕手・水上桂(明石商・現楽天)が、佐々木のストレートを満足に捕球できずに後逸を繰り返したのだ。

慣れないナイターと大観衆を前にした緊張もあったはずだが、高校球界を代表する捕手が満足に捕球できないことは驚きである。

佐々木のアマチュア時代のピッチングを生で見たのは以上だ。わずか4試合だが、そのすべての試合で筆者は、圧倒的な衝撃を受けた。

筆者の経験に基づくと、最初のインパクトが強い選手ほど、2回、3回と見る機会が増えていくたびに欠点に目が向き、物足りなさを覚えるケースが大半だ。しかし佐々木は、常に新鮮な衝撃を与え続けてくれた。

そして末恐ろしいのは、いまだに“底”が見えないことである。

プロ入り2年目の今年は一軍でも度々、圧巻のピッチングを見せたが、才能の開花という見方では、“五分咲き”程度だろう。彼のポテンシャルに見合う筋力と体力が身についたとき、佐々木朗希という投手はきっと、日本の野球界に収まらない存在になっているに違いない。

■プロフィール
西尾典文(にしお・のりふみ)

1979年、愛知県生まれ。大学まで選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。プロアマ野球研究所でも毎日記事を配信している。

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