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早稲田大サッカー部を応援でサポート。“12番目の選手”たちの物語

早稲田大学ア式蹴球部を支える12番目の選手たち

エンジに染まったスタンドの中に、一際目立つ黒の精鋭たちがいた。

7月6日に行われた「第76回早慶サッカー定期戦」で、早稲田大学ア式蹴球部は慶應義塾大学ソッカー部に1-0と勝利し、宿敵相手に5連覇を果たした。これまで数々の名勝負が繰り広げられ、Jリーグで活躍する選手も活躍してきた早慶戦。当日は横浜F・マリノスに所属する早稲田OBの兵藤慎剛と、慶應OBの中町公祐の2人も、等々力陸上競技場に訪れていた。

そんな中、12,307人が集結した観客席の中で最も際立ったのは、早稲田を応援するサポーターが集ったメインスタンド右側に陣取る十数人の集団だ。王冠のエンブレムが描かれたTシャツを身にまとう彼らの名は、「ULTRAS WASEDA」。2004年度から早稲田のサポーターグループとして活動し、毎試合チームの応援に駆けつけている。先に述べた兵藤だけではなく、ヴィッセル神戸の渡邉千真やFC東京の徳永悠平なども、かつてULTRASの声援をバックに闘ったのだ。

メンバーは全体で30人前後と決して大所帯ではないが、早稲田の学生以外にも、早稲田のサッカーやスポーツを現場で応援する楽しさに魅了された他大学の有志たちが集っている。とはいえ、学業を本職とする彼らだけあって、全員が集まる機会は少ないという。しかし、代表を務める田中嵩太朗氏は「必ず現地に駆けつけて、来ていない人の分も声を出すスタンスで、最高のサポートを心かげています」と、メンバーの少なさをネガティブには捉えていない様子だった。

ULTRAS WASEDAの代表を務める田中嵩太朗

ULTRAS WASEDAの代表を務める田中嵩太朗

とはいえ、大学サッカーは基本的にベンチ外メンバーがスタンドでの応援に回るため、部員が百数十人のチームを相手にすると、時に声量で負けてしまうこともある。「もっと人数が増えて、声の量を増やして、直接勝利に結びつくような応援ができるようになっていけたらな、とは思います」。ULTRASの中には、スポーツの経験がなくとも、現地で応援する喜びを分かち合うことで加入に至ったメンバーもいる。そういった感覚を共有していくことで、同志を募っていきたいと田中は語っている。

早慶戦に懸ける想いの強さ

試合前には、ベンチ外メンバーや早稲田大学の学生を巻き込み、決起集会を行った。普段は少数人でスタンドから声援を送る彼らだが、早慶戦では多くの早稲田サポーターと共に闘う。メインスタンド通路で選手たちを鼓舞するチャントの練習が行われ、スタジアムに威勢の良い声が響き渡った。

「この試合に向けてかなり準備をしてきたので、今日初めて早稲田の試合に来る人も含めて、チームを勝たせられるように良い応援をしたいです」と田中が語るように、選手だけでなくULTRASも早慶戦には強い想いがある。それは応援歌に耳を傾けても明白だ。

「慶應倒せ、バモ早稲田」

「跳ばないやつは慶應ボーイ」

といったフレーズの慶應戦限定チャントも存在している。

6月下旬に行われた※アミノバイタルカップでは決勝まで勝ち進んだものの、最後は桐蔭横浜大学に敗れ、優勝を逃した。ファイナルから中2日で臨んだ早慶戦は、肉体的にも精神的にも疲労が心配される一戦だった。しかし、早稲田は31分に中山雄希が先制点を挙げると、終盤には慶應の猛攻を凌ぎ切り、完封勝利を果たす。試合後、イレブンはULTRASのもとに駆け寄り、喜びを分かち合っていた。

※アミノバイタルカップ:大学サッカーの夏の全国大会である総理大臣杯へ出場する関東代表校を決める大会

早稲田大学サッカー部

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