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2024年パリ五輪の新種目「ブレイキン」を解説 金メダル有力でスケートボードに続くムーブ期待

写真:半井重幸/Shigeyuki Nakarai/Shigekix(提供:森田直樹/アフロスポーツ)

2024年にパリで行われる夏季オリンピック。開催まで残り1年半をきってる中、注目されるのが新たに採用された新種目の存在。なかでも、若者の間で絶大な人気を誇るのがブレイキンだ。2021年からは日本発世界初のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」が開催され賑わいをみせており、そのレベルの高さからパリ五輪でも金メダルが有力視されている。今回はそんなブレイキンの魅力について言及するとともに、注目選手についても語っていきたい。(文・井本佳孝)

成り立ちはニューヨーク

ブレイキンの歴史は遡ること約50年前、1970年代のアメリカ・ニューヨーク。アフリカ系アメリカ人やラテン系アメリカ人などのギャングの抗争を暴力ではなく、平和的に解決する手段として「ダンス」が用いられたのが始まりとされる。ブレイクダンスを踊る者は「Bボーイ」「Bガール」と呼ばれ、貧しく、犯罪が絶えなかった街における若者のストレス発散方法としてブレイクダンスが栄えてきた背景がある。

ブレイキン

日本においては1980年代にかけて、映画や有名ダンサー、歌手などの存在とともにブレイクダンスが認知されるようになる。その後、欧米やアジアで度々ダンスブームが起こるとともに広がりを見せ、2018年にブエノスアイレスで行われたユースオリンピックで正式競技に。国際オリンピック協会(IOC)および公認団体のARISFに加盟する世界ダンススポーツ連盟が「ブレイキン」としてダンス競技を始め、2024年のパリ五輪での正式種目採用にも繋がった。

ブレイキンは基本的には1対1、2対2、または大人数のチーム同士がダンスバトルを行うことが特徴で、難易度の高いパフォーマンスや創造性豊かなアクロバティックさを競い合う。1970年代の創世記に見られた音楽担当のDJと司会進行のMCがいるスタイルはそのまま引き継がれ、DJの選曲は結果に大きな影響をもたらす。また、結果が不平等にならないためにも審査員は必ず複数人用意されており、ほかのオリンピック競技には見られない新たなスポーツとしてのスタイルがある。

全日本を制した対照的な2人

日本においてはダンス市場の成長が期待されるなか、日本のストリートダンスの発展と普及を図る目的で2020年に「D.LEAGUE」が発足。翌年からリーグが行われ、今季で3シーズン目を迎えている。現行全12チームで行われているリーグ戦では、2分から2分15秒のダンスパフォーマンスを制作し、レギュラーダンサー(+SPダンサー)で構成された8名が出演する。審査員も5人+オーディエンス票の合計6票で勝ち、負け、引き分けが決まり、勝ち点制によりシーズンのチャンピオンを競い合っている。

ブレイキン

また、ブレイキンの日本一を決める「全日本ブレイキン選手権」も2月の開催で4回目を数え、今年の日本一に輝いたのはBボーイではShigekix(半井重之)、BガールではAYUMI(福島あゆみ)。全日本3連覇を果たした前者は2018年に行われたユースオリンピックでは銅メダルを獲得し、2019年にはRed Bullと契約。2020年には世界最高峰の戦い「Red Bull BC ONE World Final 2022」を制し、2022年にはワールドゲームズ、世界選手権、ジャパンオープンでいずれも表彰台入りを果たした。

新進気鋭のShigekixに対して、AYUMIは39歳で、キャリアのスタートは現在のShigekixの年齢である21歳からと対照的。競技開始から10年以上が経過した2017年に「Red Bull BC ONE World Final」に初出場し、2021年には世界選手権を制し、2022年にも3位に食い込むなど一躍パリ五輪でもメダル候補に挙がるまでになった。ユース年代から各大会で実績を積み上げてきたShigekixと、遅咲きながら近年世界トップの実力者に上り詰めてきたAYUMI。全日本を制した好対照な2人がパリ五輪の舞台でもともに表彰台に上がることは決して夢物語ではないだろう。

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