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【新時代サッカー育成対談】幸野健一×守山真悟×内野智章|「どうやったらプロになれるのか?」|前編

UPDATE 2021/07/12

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掲載協力・WHITE BOARD SPORTS


■登壇者

・幸野健一|プレミアリーグU-11実行委員長/FC市川GUNNERS代表/サッカーコンサルタント
・守山真悟|関西地域委員兼大阪府実行委員長
・内野智章|興國高校サッカー部監督

■ファシリテーター

・北健一郎|サッカーライター/ホワイトボードスポーツ編集長


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リップエース→興國→Jリーグの最強ルート

──興國高校監督の内野智章さんと守山真悟さんはすごく仲がいいと伺ったのですが、どんな関係性ですか?

内野 お互い覚えてはいないですが実は高校のときも練習試合で対戦しています。そこから始まって、23歳とか24歳のときに草サッカーで知り合ったんです。

──そのときから育成年代の指導者同士だった?

内野 いえ、僕はそのときはまだ興國の指導者ではなかったですし、真悟もまだリップエースを創設していませんでした。

──ですが今では内野監督の興國高校から来年度、Jリーグ内定選手が5人輩出されている異例の事態になっています。内野監督が選手を育成するにあたって大事にされていることはどんなところでしょうか。

内野 なんですかね……。いっぱいあるのでこれというのが言えないですね。

──「興國メソッド」と言われるくらい、「興國に行ったらプロになれる!」と思っている方もいると思いますけど興國高校に行けばプロになれる確率が上がるとかそういった特別なことはあるのでしょうか。

内野 それはないと思いますけど、プロに行く選手に関しては世界の基準と照らし合わせたときに50mのタイムを0.5秒上げる。身長も5cm以上あげるという感覚で考えています。どういうことかといいますと、例えば50m走が6.3秒は日本だと瞬足でサイドアタッカーとかをしますが5秒台ではないとJ1やJ2では通用しない。なのでセンスがあってFWとかやっている選手のほとんどはうちに来たらボランチになる。身長も高校レベルだと180cmあったら大型選手と言われますが、バルセロナのスタメンの平均身長は181cmなんです。ロナウジーニョは180cmですし、(アリエン・)ロッベンは182cm、(ガレス・)ベイルは183cm。ですが全員大型選手とは言われない。だから180cmは別に大きくないし、50m走が6秒台前半も別に速くはないという感覚でポジションを決めています。

──なるほど。

内野 この間、清水エスパルスに入団した選手は184cmあって、身体能力がすごく高くて50mを6.2秒とかで走るFWだったんですが、高校2年のときにボランチにコンバートして、今はJ1。J1基準ではFWとしてのスピードが足りないんです。でも日本に184cmで両足を使えてヘディングが強くてテクニックがあってシュートののうまいボランチはいない。そういう感覚でポジションを決めてプレーさせていたらたまたまプロになったという感じです。

──守山さんのリップエースはジュニアとジュニアユースでU-18はないですが年代によって内野さんのようなポジションに対する考えは変わりますか?

守山 ウッチーはスペインとかを中心にヨーロッパに行ってその現場を見ているからそこでの指導者から具体的な数字を聞いているのでリアルな数字だなと思います。私たちはそれぞれのポジションの特性とか個性とかで若干決まってくるので、ウッチーのような何cm、何秒以内みたいなところは彼に任せています。

──実際、リップエースから興國高校へ行く選手も結構多いですよね。そこでの繋がりはお互い何かあるのでしょうか。

内野 リップエースがどう思われているかわからないですけど、僕らからしたら約2年でたたき込まないといけないことがたくさんあって、基本的に(時間が)足りないんです。だけどリップエースの子たちは今年も3人来てくれますけど、中学3年ながらトップチームの中に入っても普通にやれるんです。フィジカル的には差があるんですけど、戦術的な理解が高いので違和感なく交ざれている。0から教えるのはものすごい労力のいることですけど、リップエースの子たちは9割くらいその必要性がない。なのでリップエースの子は6年間育成してきたみたいな感覚になるんです。真悟にも言いましたがリップエースから興國に来て、興國から関東の名門大学に進学して、最近J1に内定した選手がいます。リリースはまだですけど。

──未公開情報なんですね(笑)。

内野 そうそう。なのでチームメイトか選手の名前は言えないですけど、リップエース→興國→とある大学→J1なのでリップエースは今年高卒3人と大卒2人がJリーグに進みます。うちは高卒5人と大卒3人なので8人がJリーグへ行きます。

──ものすごいことだと思いますがケン(幸野健一)さん、これについてどう思われますか?

幸野 これ、すごいことだと思うし計画的な育成が形になっていますよね。これだけいっぺんに排出するのは日本では初めてなんじゃないですかね。僕らもそういう意味ではまだまだ。(FC市川GUNNERSの設立から)7年しか経っていないのでこれからなんですけど、僕らはジュニア、ジュニアユース、ユースの全てのカテゴリーを持っているので下から少しずつ選手が上がってきてそれを実感しています。外から来た選手は戦術的な理解がなかなか遅いですけど、僕らは下から全部繋がっているクラブとして今それを実験しながらやっています。できれば小学生のときからそういうことを叩き込んでいきたいと思うし、そういう観点からしたら高校の2年ちょっとの期間で全部を叩き込むのはすごいなと思いますし、尊敬します。

──ただ中学年代で戦術理解度が高いということは中学年代から戦術をガチガチに教え込んでいるのでしょうか。

守山 そもそもサッカーは戦術のスポーツです。そこに私たちの場合ですと、動作と戦術によって選手は勝手にうまくなっていくので小学生からそうなっています。

個と戦術を分けて考えるスポーツではない

──子どもたちに対しては戦術を教えるためにどういった伝え方をしていますか?「子どものうちはたくさんボールを触らせて戦術は大人になってから」と分けている方もいると思いますが、守山さんは同時に技術も戦術も教えていますよね。

守山 そうですね。サッカーがそうである以上、そもそも切り取って教えられないので。ただ、もう少し細かいサッカーのスキル指導になってくるとその中にFWなんかはシュートに特化しなければいけないとか。GKなんかはシュートストップに特化しなければならない。CBはヘディングで跳ね返す力とか、細かい部分はもちろんありますがやはり11人対11人のスポーツで長い時間、広いピッチでプレーすることには変わりない。条件設定は同じなのでそう考えたときには、戦術というそのものの言葉がサッカーを構成する要素の中核になっている。そこから枝分かれしていくので、あまり枝分かれした話を細かくしてもどこまでいっても同じことを話してしまう。

幸野 うちもそうなんだけど、うちにもプレーモデルがあって、そのプレーモデルに基づいた育成メソッドを持っています。興国もそうだと思いますけど、自分たちの目指すスタイルがあって、それに基づいた選手を育てている。そういうものがある程度ないと「どんないい選手を育てているのか?」ということにもなってきます。それがあるから一貫した指導ができると思っています。本を読ませてもらいましたが内野さんのところにもあるんですよね。

──プレーモデルの話が出ていますが興国高校はどんなものがありますか?

内野 僕自身、「プレーモデル」という言葉をあまりうまく説明できないですけど、守山さんが言っているようにそういうスポーツなので「ちゃんとやっていたら合ってくる」という感じですね。

──ちゃんとやっていたら合ってくる?

内野 はい。僕らは11年くらい前から毎年スペインに行ってますがU-9のトレーニングでゴールキックになったらCB2人が広がってGKの両脇に立ってビルドアップしていくチームとそのビルドアップを妨害していくチームとに分かれてトレーニングしていました。できなかったらコーチにしこたま怒られているし、失敗しても失敗してもコーチはずっとトライさせている。蹴って逃げる、ジャッジを放棄させることがなくて、どうにかしてビルドアップを解決させることを8歳から9歳でやっています。U-10とかでも相手がバルセロナならブロックを作って守ってカウンターというサッカーをするし、自分たちが相手よりも主導権を握れるってわかったらボールポゼッションをする。それを小学生からやっていって、カウンターのときにはどういう個が必要かとかボールポゼッションをするにはどういう個人の技術が必要かというところに行きついて個人練習をしているのがスペインのジュニアです。ポゼッションするには止めて、蹴るができないといけないから結局個に返ってくる。カウンターであれば単独でボールを運ぶ力になるのでドリブルの能力がいる。対戦相手と自分たちの力関係からどういう戦い方をするか。そのときの戦い方に必要な技術というのがないとカテゴリーアップしていかない世界なので、個と戦術を分けている時点でダメですね。

──こういう話は守山さんと内野さんの間ではよくしているんですか?

内野 スペインから帰ってきたら情報は全部提供しています。

守山 ウッチーのオープンなところはすごいなというか、尊敬しています。幸野さんなんかも本当、素敵だなと思っていまして、すごくオープンに受け入れてもらえる。僕は日本でしかサッカーをしたことがないし、ここでしか知らないですけど、これから情報とか移動とか、世界の距離とかがなくなってきて、「昨日のスペインの試合ではな……」という感覚でウッチーは言ってきてくれるんです。高校の指導者でそういったところの“リアル現場”を知っているウッチーはオープンに情報を出してくれるところがすごい。そういう遠い情報と自分たちが持っている情報が繋ぎ合わさって、結び付いたら新しい着想に至って、またお互いで確認ができる。僕はすごくありがたく、そういう部分をいつも尊敬していますし、好きです(笑)。


幸野健一(こうの・けんいち)
プレミアリーグU-11実行委員長/FC市川GUNNERS代表/サッカーコンサルタント

著書
パッション 新世界を生き抜く子どもの育て方

1961年9月25日、東京都生まれ。中央大学卒。サッカー・コンサルタント。7歳よりサッカーを始め、17歳のときに単身イングランドへ渡りプレミアリーグのチームの下部組織等でプレー。 以後、指導者として日本のサッカーが世界に追いつくために、世界43カ国の育成機関やスタジアムを回り、世界中に多くのサッカー関係者の人脈をもつ。現役プレーヤーとしても、50年にわたり年間50試合、通算2500試合以上プレーし続けている。育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかるサッカーコンサルタントとしても活動し、2015年に日本最大の私設リーグ「プレミアリーグU-11」を創設。現在は33都道府県で開催し、400チーム、7000人の小学校5年生選手が年間を通し てプレー。自身は実行委員長として、日本中にリーグ戦文化が根付く活動をライフワークとしている。また、2013年に自前の人工芝フルピッチのサッカー場を持つFC市川GUNNERSを設立し、代表を務めている。

守山真悟(もりやま・しんご)

プレミアリーグU-11関西地域委員兼大阪府実行委員長/RIP ACE SOCCER CLUB代表

1979年、滋賀県生まれ。草津東高校、桃山学院大学でサッカーを続け、大学4年時の2002年に、同期の今村康太と一緒に大阪府堺市でRIP ACE SOCCER CLUB(リップエースサッカークラブ)を創設。「サッカーがうまくなるとは、サッカーをすることである」という考えに基づく「戦術的ピリオダイゼーション」をいち早く実践し、オリジナルの動作理論と組み合わせた指導を続けている。迷彩柄ユニフォーム・豹柄ビブスを着用する見た目のインパクトを放ちながら、社会で通用する選手を育てるという自立型人間の育成を教育指針に掲げ、子どもたちの心を鍛えることを重視して活動している。

内野智章(うちの・ともあき)

興國高校サッカー部監督

1979年生まれ、大阪府出身。初芝橋本高校1年時に全国高校サッカー選手権大会に出場し、ベスト4に進出。高校卒業後は高知大学へ進学。その後、愛媛FCに加入するも、原因不明の病気で1年で退団。2006年より興國高校の体育教師および、サッカー部監督に就任。全国大会出場がないなかで多数のプロ選手を輩出するなど育成手腕に注目が集まり、高校選手権前回大会でついに全国初出場。過去8年間で20人の選手がJリーグ入りを果たし、来年度のJ内定選手は同一高校から5名という異例の快挙と報道されている。

北健一郎(きた・けんいちろう)

WHITE BOARD編集長/Smart Sports News編集長/フットサル全力応援メディアSAL編集長/アベマFリーグLIVE編集長

1982年7月6日生まれ。北海道出身。2005年よりサッカー・フットサルを中心としたライター・編集者として幅広く活動する。 これまでに著者・構成として関わった書籍は50冊以上、累計発行部数は50万部を超える。 代表作は「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」など。FIFAワールドカップは2010年、2014年、2018年と3大会連続取材中。 テレビ番組やラジオ番組などにコメンテーターとして出演するほか、イベントの司会・MCも数多くこなす。 2018年からはスポーツのWEBメディアやオンラインサービスを軸にしており、WHITE BOARD、Smart Sports News、フットサル全力応援メディアSAL、アベマFリーグLIVEで編集長・プロデューサーを務める。 2021年4月、株式会社ウニベルサーレを創業。通称「キタケン」。

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