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中島 翔,Bリーグ,茨城ロボッツ,アスレティックトレーナー

【特集】茨城ロボッツ躍動の陰の立役者、中島翔アスレティックトレーナーにインタビュー。選手に長く競技を続けてもらうために、トレーナーとして大事にしていること。(バスケ・Bリーグ)

アスリートがベストなパフォーマンスを発揮するためには、トレーナーの存在が必要不可欠です。その中でも「アスレティックトレーナー」は、選手が怪我をしないよう予防したり、怪我をしてしまったときに応急処置を行ったり、選手が出来るだけ万全の状態でプレーをするためのサポートをしています。

今回は、Bリーグ「茨城ロボッツ」のアスレティックトレーナー 中島さんに、アスレティックトレーナーになったきっかけや、仕事をする上で大切にしていることを伺いました。

中島 翔,Bリーグ,「茨城ロボッツ,アスレティックトレーナー
中島 翔|Kakeru Nakajima
NATA-BOC(米国アスレティックトレーナー資格認定委員会公認アスレティックトレーナー)

1985年生まれ、大阪府出身。
高校卒業後、渡米しミネソタ州立大学アスレティックトレーニング学部に入学。NBA「ミネソタ・ティンバーウルブズ」にてインターンアスレティックトレーナーを経験。2011年に帰国し、JBLチームのアスレティックトレーナーを経て、2019年より「茨城ロボッツ」のアスレティックトレーナーを務める。

>>【関連記事】茨城ロボッツ鶴巻啓太選手にインタビュー。地元でプロアスリートとして活動することへの思い。(バスケ・Bリーグ)

「自分で何とかするしかない」から始まった、アスレティックトレーナーへの道

中島 翔,Bリーグ,「茨城ロボッツ,アスレティックトレーナー

ーーアスレティックトレーナーになったきっかけを教えてください。

高校生の時にバスケをしていたのですが、とにかく怪我の多い選手でした。早くコートに戻りたい一方、学校にトレーナーはいないですし、僕が住んでいた地域にはリハビリ等の十分な施設がある病院もなく。「それなら自分で何とかするしかない」とリハビリやテーピングの本を買って自分で勉強し始めたのがきっかけです。

そこで初めて、“アスレティックトレーナー”という職業を知りました。調べてみると、アメリカでは看護師や理学療法士と同じく准医療従事者として扱われており、教育も盛んに行われているということが分かったので、高校卒業後アメリカに渡ってトレーナーの資格を取得しました。

ーーアメリカではどんなことを学んでいたのですか。

2004年にミネソタ州立大学アスレティックトレーニング学部に入学しました。ミネソタ州は結構田舎であると共に、冬はマイナス40度で湖も凍る一方、夏は30度を超えるような、気温差の激しい地域でしたね。

大学を卒業してから1年間、NBAのミネソタ・ティンバーウルブズというバスケチームでインターンをさせてもらい、その後インディアナ州のパデュー大学大学院で「キネシオロジー*1」と「エクササイズサイエンス*2」の研究をしました。2011年に日本に帰国し、JBL(現在のB.LEAGUE)のチームのアスレティックトレーナーになりました。

*1:人間またはそれ以外の生物の身体の運動の科学的研究。生理学的、生体力学的、心理学的な運動原理を扱う。
*2:運動科学。人の動作を解剖学、生理学、生化学の知識を用いて科学的に学び、運動や治療的リハビリテーションに応用する。

選手の命を守る仕事

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ーーアスレティックトレーナーはどんなお仕事ですか?

まず、試合中はコート上で選手が倒れた時に駆け寄り、怪我の応急処置をします。

余談ですが、先日のNFL(プロアメリカンフットボールリーグ)の試合中に、タックルされた選手の心臓が止まってしまい、コート上でアスレティックトレーナーが心肺蘇生等の応急処置を行う様子がニュースで流れました。それを受けてネットでは、「これだからアスレティックトレーナーは重要なんだ!俺らは命を守ってるんだ!」と盛り上がっていましたね。僕はちょっと恥ずかしがり屋なので、乗っかりきれてないですけど(笑)。

練習では、まず選手にエクササイズやストレッチをしてもらい、怪我の原因となる使われていない筋肉に動きを出させて、テーピングをすることから僕の仕事は始まります。選手の健康管理やケガを予防することの他、怪我をした後のリハビリテーション、体力トレーニング、コンディショニング等も行っています。

コート上以外では、例えば「エマージェンシー・アクション・プラン(緊急時対応計画)」というものを作成します。試合会場のAEDの位置、救急車の搬送経路、救急の際に誰が電話をして誰が付き添うのか、その道筋を予め作って対応できるようにしておくことも仕事の一つです。

ーー仕事をする上で意識していることは?

選手に「健康なまま長く競技を続けてもらう」ということです。僕が学生時代に思ったように、ロボッツの選手も怪我をした時に「無理をしてでも、早く練習・試合に復帰したい」と思うでしょう。もちろん選手生命も大事ですが、僕は人としての健康寿命も大事だと考えています。

そのためには「選手の身体のことを先入観なく視る」ということが大事です。選手によって怪我の原因や復帰までのプロセスは違います。「この怪我だからこれだ」というパターンに嵌め込まないように心掛けていますね。

最終的には選手の決断を尊重しますが、復帰までのプランは出来るだけ選手と密にコミュニケーションを取りながら決めていきたいです。

ーー茨城ロボッツとセルソースは、2021年12月よりメディカルパートナー契約を締結しました。率直に「PFC-FD™療法」はどんな印象ですか。

これまで、腱や関節の痛みにはステロイド注射を打つ等の対症療法が主体でした。ステロイドは一時的に痛みが治まりますが、継続すると腱を弱めてしまう可能性があると言われています。その選択が必要な場合もありますが、やはり僕としては選手に健康なまま長く競技を続けてもらいたい。

もちろん怪我がないのが1番ですが、アスリートにとって怪我は避けては通れない問題です。なので、選手自身の血液から作製され、炎症・痛みを抑える効果がある「PFC-FD™療法」という選択肢を持つことは、非常にポジティブだと思います。

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