ノビツキー、ヤニス、ドンチッチ…“歴代ヨーロッパベストメンバー”を識者が選定!<DUNKSHOOT>

ヤニス、ヨキッチ(ともに写真左)の現役MVPコンビを筆頭に、歴代欧州ベストメンバーはそうそうたる顔ぶれが揃った。(C)Getty Images
近年は海外出身選手が増え、国際化が進んだNBA。そのなかで、ヨーロッパ出身の歴代ベストメンバー選出した場合、どういった顔ぶれが並ぶのだろうか。『THE DIGEST』では、アメリカンスポーツに精通する識者に依頼し、NBAの“ベストダンカーチーム”を選んでもらった。

【ポイントガード】
トニー・パーカー(フランス)
1982年5月17日生。188cm・84kg
キャリアスタッツ:1254試合、平均15.5点、2.7リバウンド、5.6アシスト

ヨーロッパ出身選手のバックグラウンドは複雑なケースも少なくなく、パーカーもその例に洩れない。父のトニー・シニアはアメリカ人バスケットボール選手で、長くヨーロッパで活躍しオランダ人女性と結婚。長男のトニー・ジュニアが生まれたのはベルギーだが、育ったのはフランスで国籍も同国である。

母国のプロリーグを経て2001年のドラフト28位指名でサンアントニオ・スパーズに入団、1年目から正PG(ポイントガード)に定着してオールルーキー1stチーム入り。正統派の司令塔タイプではなかったが、“フレンチ・トーピード(魚雷)”と呼ばれたスピード感あふれるドライブと、タイミングよく繰り出されるフローターで得点を稼いだ。スパーズの4度の優勝に貢献、2007年にはヨーロピアンとしては初となるファイナルMVPを受賞している。

そのほか、人気女優エバ・ロンゴリアと夫婦だった時期もあり、2007年には自作曲『Balance-toi』がフランスのヒットチャートで1位になるなど、多方面に活動した。
【シューティングガード】
ルカ・ドンチッチ(スロベニア)
1999年2月28日生。201cm・104kg
キャリアスタッツ:243試合、平均26.0点、8.5リバウンド、7.9アシスト

ヨーロッパ出身のSG(シューティングガード)はドラゼン・ペトロビッチ(元ニュージャージー/現ブルックリン・ネッツほか)が強い印象を残したけれども、交通事故によりキャリアは4年で絶たれてしまった。ドンチッチもまだ今季で4年目だが、すでにそのインパクトはペトロビッチを超えたと言っていい。メインのポジションはPGながら、今季は主にSGで出場しているのでここで選出した。

スロベニアの神童として少年時代から将来を嘱望され、2018年のドラフトではアトランタ・ホークスが3位指名。その直後にダラス・マーベリックスが5位で指名したトレイ・ヤングとの交換が成立した。

パスセンス、シュート力、強靭な精神力のすべてを備え、1年目から平均21.2点をあげ新人王に輝くと、翌2019−20シーズンは平均28.8点までジャンプアップ、トリプルダブルも17回達成。今季は自身初の50得点超えを記録しただけでなく、リバウンドとアシストも平均9本以上、シーズン・トリプルダブルも可能な領域に達しており、遠からずMVPの栄誉に浴することだろう。
【スモールフォワード】
ヤニス・アデトクンボ(ギリシャ)
1994年12月6日生。211cm・110kg
キャリアスタッツ:638試合、平均21.6点、9.3リバウンド、4.6アシスト

現在はPF(パワーフォワード)を主戦場としている”グリーク・フリーク”は、NBA入りして最初の数年はSF(スモールフォワード)やPGでもプレーしていたため、このポジションに回した。

ルーツはナイジェリアだが、出生地はギリシャ。名前の発音とスペルが一致しないのは、両親が入国する際の書類の文字を、係官が読み違えたかららしい。正式な市民権を得たのは、2013年のドラフト15位でミルウォーキー・バックスに入団する少し前。身体能力の高さで大化けするか、粗さが解消されず大外れになるかギャンブル的な指名と思われたが、順調に成長を続け2016−17シーズンにMIPを受賞すると、以後6年連続オールスター出場、2019、20年は2年連続でシーズンMVPに選出。2021年はファイナル第6戦で50得点と大爆発、バックスを50年ぶりの王座へ導きファイナルMVPにも輝いた。

ほかのSFでは名シューターのペジャ・ストヤコビッチ(セルビア)の名も挙がる。ドミニク・ウィルキンスは軍人の父が駐在していたパリで生まれたが、フランス人ではない。
【パワーフォワード】
ダーク・ノビツキー(ドイツ)
1978年6月19日生。213cm・111kg
キャリアスタッツ:1522試合、平均20.7点、7.5リバウンド、2.4アシスト

「ドイツの子どもたちにとっての“マイケル・ジョーダン”は彼なんだ」(オーランド・マジックのフランツ・ヴァグナー)。いずれはドンチッチやアデトクンボ、ニコラ・ヨキッチに抜かれるかもしれないが、今のところはまだ、史上最高のヨーロッパ出身選手はドイツ人のノビツキーだ。

1998年のドラフト9位でバックスに指名され、すぐに彼の才能に惚れ込んでいたドニー・ネルソンの強い推薦でマーベリックスが獲得。入団当時は細身だったが、ウェイトトレーニングを積んでギリシャ彫刻のような肉体を手に入れ、持ち前のシュート力と併せてオールスターの常連となる。2007年にはヨーロピアンとして初のMVPを受賞、2011年はチームを優勝に導きファイナルMVPに輝いた。

単独のチームだけで21年プレーした唯一の選手でもあり、通算3万1560点は現時点で史上6位にランク。レイカーズでコビー・ブライアントと名コンビを組んだパウ・ガソル(スペイン)も名選手だった。
【センター】
ニコラ・ヨキッチ(セルビア)
1995年2月19日生。211cm・129kg
キャリアスタッツ:505試合、平均19.2点、10.2リバウンド、6.2アシスト

その昔、ヨーロッパ出身選手と言えば長身の白人センターが定番だった。1990年代にはブラデ・ディバッツ(セルビア)やリック・スミッツ(オランダ)、近年ではマルク・ガソル(スペイン)。現役ではルディ・ゴベア(フランス)らアフリカにルーツを持つ者の活躍も著しいが、最高のセンターはセルビア出身のヨキッチだろう。

2014年のドラフトでデンバー・ナゲッツに指名された際は全体41位。「サイズに恵まれシュートタッチも柔らかいが、スピードと身体能力が不足している」との当時の評価は的外れとは言えなかったが、そこで見落とされていたのは卓越したバスケットボールIQだった。

ビッグマンとしては史上屈指のパスセンスでトリプルダブルを量産し、2020−21シーズンにはMVPを受賞。リバウンドを大きく伸ばした今季も連続受賞する可能性もありそうだ。NBA生活は短くとも、旧ソ連代表時代にアメリカを苦しめたアルビダス・サボニス(リトアニア)も忘れ難い。
【シックスマン】
アンドレイ・キリレンコ(ロシア)
1981年2月18日生。206cm・107kg
キャリアスタッツ:797試合、平均11.8点、5.5リバウンド、2.7アシスト

ベスト5から洩れたなかにはキリレンコ以上の選手もいる。だが実際のゲームでシックスマンとして投入するなら、このロシア人以上に使い勝手のいい選手は多くないだろう。

ニックネームはイニシャルと背番号をひっかけた“AK47”。これはロシア製の有名な自動小銃の名前でもあるが、プレースタイルはスイス製万能ナイフに近かった。1試合で得点・リバウンド・アシスト・スティール・ブロックの5部門で5以上を記録することを“5×5”と称するが、これをキャリアで3回以上成し遂げたのは、キリレンコ以外にはアキーム・オラジュワン(6回)のみ。ボックス±というアドバンスドスタッツでは、そのオラジュワンやコビー、ノビツキーらの大選手を抑え史上26位にランクされている。

歴代のシックスマン賞受賞者には、1991、92年に2年連続受賞したデトレフ・シュレンプ(ドイツ)、トニー・クーコッチ(クロアチア)、ベン・ゴードン(イギリス)らのヨーロピアンもいた。

文●出野哲也

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