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指揮官や同僚も憤慨するヨキッチの“ファウル問題”。昨季のフリースロー獲得率には驚きのデータも<DUNKSHOOT>

レフェリーから“過小評価”されているヨキッチに、同僚ゴードンやマローンHCは遺憾の意を示している。(C)Getty Images
 ミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボとともに、ヨーロッパ人選手として今年のオールスターの先発メンバーに選ばれたニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)。今季もすでにトリプルダブルは12回、第14週には自身10回目の週間最優秀選手に選出され、受賞回数で球団最多のカーメロ・アンソニー(現ロサンゼルス・レイカーズ)に並ぶなど、抜群の貢献度を示している。

 現地時間1月28日のニューオリンズ・ペリカンズ戦では前半こそ7得点に押さえ込まれたものの、第3クォーターに3連発で3ポイントを沈めると、そこまで接戦だったゲームは一気にデンバー優勢の展開に。そのまま116−105で逃げ切り勝利を収めた。

 この試合でヨキッチはゲームハイの29得点をマーク。そして彼に次ぐ20得点を奪取したフォワードのアーロン・ゴードンは「ヨキッチが3ポイントを決め出したら、ほとんどガードは不可能だ。MVPたる仕事をしてくれているといった感じだね」とチームメイトを称賛した。
  “Mr.50”ことダンカーのゴードンは、昨季3月にオーランド・マジックからトレードで加入して以来、ヨキッチとも息のあったパフォーマンスを披露。そんな彼は先日、ヨキッチに対する審判の判定——16日のユタ・ジャズ戦で、ヨキッチに与えられたフリースローがわずか3本だったこと——について、堂々と意見を述べている。

「こんなのクレイジーだ。信じられないよ。彼はほとんどあらゆるプレーでファウルを受けている。だけどレフェリーはその都度笛を吹いているわけじゃない。ヨキッチの周りには敵が群がり、彼のことをひっ捕まえようとするけれど、そんな時でも彼は他の選手と同じようなジャッジを受けていないんだ。それは正しいとは言えないよ。

 起きていないものについてファウルにしてくれと頼んでいるんじゃない。他の選手と同じように正しくジャッジしてほしいと言っているだけだ。実際、彼は常にファウルを受けているんだから」
  むしろ笛を吹かれたのはヨキッチの方で、125−102で敗れた件のユタ戦では、ヨキッチはチームメイトのファクンド・カンパッソとともに5個のパーソナルファウルを犯した。

 ヨキッチに対するコールが公平ではない、という指摘は今に始まったことではなく、ナゲッツは昨季もリーグに申し入れている。昨年4月のサンアントニオ・スパーズ戦では、ヨキッチが2人がかりのフィジカルコンタクトを受けてボールを失ったシーンでレフェリーがまったく介入しなかったために、マイケル・マローンHC(ヘッドコーチ)が激しく抗議して退場となる一件もあった。

 この件では「普段はコーチのクレームに嫌悪感を示す」という人たちからも「自軍のスター選手を守る姿勢は立派」と評価する声がSNSなどで上がっている。当然ながら本人もフラストレーションを感じているだろうが、そのことで肝心なプレーから集中できないといった支障が出ないよう、マローンHCは「ヨキッチのために我々がヘルプできることをやっていく」と会見の席で発言している。
  ヨキッチ自身は「審判にアピールはしない。やってもテクニカルを吹かれるだけだから」と平常心を保つことに徹している様子。実際、昨季4月のボストン・セルティックス戦では、第2クォーターにマーカス・スマートのシュートをブロックしにいったシーンで笛を吹かれ、レフェリーに向かって両手を広げてやんわり抗議のポーズを取ると、即テクニカルを提示される場面があった。

 しかし、感情面だけでなく、フリースローはゲームにおいて最も効率のいい得点方法のひとつであるから、その取得数が少ないことは得点チャンスを失うという、チームにとって由々しき問題につながる。ヨキッチのフリースロー成功率は8割を超えているのだからなおさらだ。

 アメリカの放送局『CBS』が掲載したデータによれば、昨季のフィールドゴール試投数がリーグ8位だったヨキッチだが、そのうちフリースローが占める割合は、最低1試合は先発出場があった選手のなかでなんと142位まで後退するという。今季のヨキッチが獲得した1試合当たりのフリースロー試投数は平均5.5本と、11.0本でリーグ首位のジョエル・エンビード(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)の約半分だ。
 “ファウルをもらう”というのは一種のスキルであり、同じセンターのエンビードはその点で長けているといえるが、国やリーグによっても審判の判断基準に違いがある。また、バスケットボールに限らず、見た目の印象などもあるのか、ファウルを取ってもらいにくい選手というのもいる。

 サッカーでいうなら、スウェーデン代表であり、バルセロナなどで活躍した大型フォワードのズラタン・イブラヒモビッチ(現ACミラン)などはその際たる例だ。とりわけフランスのパリ・サンジェルマンでプレーしていた時には、彼に対して「どう見てもファウル」というフィジカルコンタクトがあっても笛が鳴らないのに、彼がほんのちょっと動いて接触しただけで、間髪入れずにイエローカードが出されるシーンが度々あった。
  なので実際、理不尽なジャッジというのは存在しているが、心を乱さず、自分がやるべきプレーに集中するしかない。ちなみに、ただの偶然か、ゴードンが声をあげたユタ戦の次のロサンゼルス・クリッパーズ戦で、ヨキッチは今季最多16本のフリースローをゲットし、そこから14得点を決めたのだった。

文●小川由紀子

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