ビースト・林大地。一生懸命さが生み出すサクセスストーリー #sagantosu #daihyo
サッカー日本代表は3月24日、ワールドカップ(W杯)アジア予選でオーストラリア代表と対戦します。勝てばW杯出場が決まる注目の一戦で、エースの大迫勇也の離脱を受けて追加招集されたのが林大地選手です。
『ビースト』の愛称で知られる林選手は、履正社高、大阪体育大を経てサガン鳥栖に加入。昨年行なわれた東京オリンピックでは、全5試合に出場しました。その活躍が認められ、夏にシント・トロイデンへと完全移籍するなど、着実にステップアップしています。
そんなサクセスストーリーを歩む林選手ですが、アマチュア時代には2度の大きな挫折を味わっています。それでも這い上がってきた林選手の強さとはなんでしょうか?
サッカーライターの安藤隆人さんに、高校時代の恩師の言葉をもとに振り返っていただきました。
■クレジット
文・写真=安藤隆人
■目次
・恩師に届けた代表招集の吉報
・G大阪ユースに昇格できず履正社へ
・履正社高の歴代最強チーム
・挫折を味わったからこそ「俺には時間がないんや!」
・一生懸命という大きな才能を武器に
恩師に届けた代表招集の吉報
3月20日にJヴィレッジで開催されていた、高校生のサッカーフェスティバルであるJ-VILLEGE CUP。この大会に参加していた履正社高の平野直樹監督の下にとある選手から連絡が入った。
「先生、大地です。正式リリースされる前に先生に伝えたくて、A代表に追加召集されました。全力で頑張ります!」
連絡の主はFW林大地。平野監督の教え子であり、履正社高からサガン鳥栖、そしてベルギーのシントトロイデンで活躍するストライカーだ。
東京五輪でも主軸としてプレーした林は、カタールW杯出場がかかったアジア最終予選のアウェイ・オーストラリア戦、最終戦となるホームのベトナム戦に挑む日本代表に、大迫勇也の負傷離脱を受けて追加招集された。
「彼は本当に一生懸命。この言葉に尽きる」
林を評価する平野監督の言葉に筆者も同意する。林と言えば『ビースト』という愛称で親しまれるように貪欲で、持ち前のスピードとフィジカルの強さ、そしてシュートセンスを駆使してゴールに迫っていくプレーが特徴だ。
精悍な顔つきで、多少厳しいボールでも力強いスプリントと抜群のボディーバランス、そしてボールの落下地点を読める空間把握能力を生かしてボールを収め、そのままドリブルでゴールまで運んでいく。そのプレーはまさに一生懸命。だからこそ、周りは彼のプレーに惹きつけられ、そのパッションとゴールへの獰猛さを感じたことで、親しみを込めて『ビースト』と名付けた。
G大阪ユースに昇格できず履正社へ
ビーストは高校時代からとにかく一生懸命さが伝わる選手だった。初めて見たのは履正社高1年生の時。ガンバ大阪ジュニアユースからユースに昇格できず、巻き返しを果たすべく、2013年に当時、大阪の新興勢力として成長著しい履正社の門を叩いた。
G大阪ジュニアユースにおいて、林の代は『豊作の年』と言われていた。トップ昇格選手は同級生の初瀬亮(ヴィッセル神戸)、高木彰人(ザスパクサツ群馬)、市丸瑞希(VONDS市原)、1学年下の堂安律(PSV/オランダ)がおり、チームも史上初の3冠(JFAプレミアカップ、日本クラブユースサッカー選手権U-15、全日本U-15サッカー選手権)を達成。その中で林は定位置をつかめず、ユースに昇格できなかったのはある意味当然の状況だった。
「絶対に見返したい。仲間たちと履正社で歴史を作りたい」
高い目標を持って入学した履正社では、さらに貪欲さが増した。そんな林を見た平野監督は将来性を感じ「個でどんどん仕掛けていくことを覚えていってほしい」という理由から3トップの右ウィングで起用した。
熱いメッセージを受け取った林は、右サイドから強烈な縦突破とカットインを、臆することなく仕掛けていく。そうやって自分のカラー全開でプレーできたのも、仲間の存在が大きかった。
林と同じように3冠世代でユースに上がれなかった選手が、一斉に履正社にやってきた。その中にはDF田中駿汰(北海道コンサドーレ札幌)、MF牧野寛太(長野パルセイロ)、川畑隼人(HONDA FC)などが在籍。「1年の時からそれぞれの特徴を持っていて、『俺たちで全国の頂点とってやろう』と口にしていた。本当にギラギラしていた」と平野監督が懐かしそうに語る。試合と勝利に飢えていた向上心の塊だった。
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