若い選手に求めたい「使い捨てられない」ための覚悟。
Jリーグクラブによる、高卒プロ選手の短期間での解雇を問題視する声が上がっています。
夢を追いかけて、幼いころから多くの時間をサッカー技術能向上に費やしようやくつかんだプロ入りですが、活躍できなければわずか1年でもクビを切られてしまいます。そういった現状に賛否両論の声が上がっています。
こうした状況について、現場の書き手はどのような感想を持っているのでしょうか。全国各地に足を伸ばして育成年代の取材活動を続ける、サッカーライターの安藤隆人氏に綴っていただきました。
■クレジット
文・写真=安藤隆人
■目次
短期間でのクビ切りは是か非か?
重要なのは覚悟と説明
必要とされる自己分析能力
選手が成長できる道を模索するのが大人の役目
短期間でのクビ切りは是か非か?
今、高卒プロの短期間での解雇を問題視する声が多く上がっている。この問題の議論でよく目につくのは、その後の選手のキャリアサポートをきちんと出来ているのか、若い年齢で路頭に迷わせることをさせていないかという声だ。
ここでは、あえて「本人の覚悟」に絞って話をさせてもらいたい。「入り口での覚悟」が甘く、クビを切られた時にセカンドアクションが中途半端になってしまう選手は多い。入団の時点で覚悟を決めておけば、「短期間で契約がなくなったら」という考えも持てるはず。その思考を持っている選手であれば、セカンドアクションを起こすことができる。
プロの世界は1年、1年が勝負。実力が伴っていなかったり、力を発揮できないもの、チャンスをものにできないものはその先のステージには進めない世界だ。
実際にプロ契約は個人事業主扱いで、会社員扱いではない。契約をしないと言われたらそれまで。そういう世界だと認識し、覚悟を決めた上で入らないと厳しい現実を突きつけられることになる。
さらに別の視点から見ると、早々に区切りをつけられた方が、新たな道を選択できるチャンスがあるという見方もできる。19歳、20歳で契約満了し、大学に進学する道もあるし、社会人としてリスタートを切ることもできる。
もちろん全てを是としているわけではない。Jクラブ側はその選手に本当の意味で将来性を見出していたのか、チームのフィロソフィー、方向性にマッチしているのか。本当に必要な戦力だったのか。そこはきちんと議論をしないといけないし、単純に使える、使えないだけで、その選手の将来を無視しているように受け止められてしまう行為であることに異論はない。
重要なのは覚悟と説明
[セレッソ大阪U18時代の南野拓実]
重要なのは、まずその選手が1、2年でクビを切られる覚悟を持っているか否か。そのうえで、獲得するクラブはある意味『博打』の獲得であったとしても、それをきちんと本人や家族に伝えているか。
トップ昇格が当落線上かつ大学からの学費免除の推薦も受けられない選手にこういうケースがあった。家庭の経済事情で、大学に進む学費を捻出できないため、「1年でもいいからプロに挑戦させてほしい」と頼んだ。この選手は、話し合いを重ねた上でトップ昇格を手にした。
重要なのは、オファーを出す段階でチームがはっきりと伝えること、本人を含めて親と話ができていること。10代の少年の「プロになりたい」という気持ちにどう向き合えているか。逆に言えば、選択をする側も覚悟ができているか、その先のビジョンを持っているのかどうかも重要になる。
もちろん「ダメになった時のことを考えていたら意味がない。やるしかないという気持ちで臨む」という選手もいる。それはそれで高卒プロを選択する重要なモチベーションであり、勢いであり、覚悟であると思う。
だが、それが周りに煽られてのものなのか、自分の中のプライドによるものなのか、選手としての自分の現在地、性格、動機など、これから待ち受ける試練を受け入れる覚悟を持ってのものなのかが曖昧なのはリスキーだと考える。
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