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【伊達公子】出産後にツアーに復帰する女子テニス選手が増加。今の状況が彼女たちを後押ししている<SMASH>

「選択肢が増えることはこれからの時代に必要」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
女子テニス界では、元世界1位のセレナ・ウィリアムズやビクトリア・アザレンカを筆頭に、出産してからツアーに復帰する選手が年々増えています。とくにシングルスプレーヤーがそうする傾向が強まっています。

女性にとって出産は避けて通れないものです。子どもが欲しい、欲しくないという考えは人それぞれですが、生むという選択をする場合、選手をやめるという一択ではなく、戻ってこられるという選択肢があることは、これからの時代には必要だと思います。

最近はこの選択肢があることがスタンダードになってきました。彼女たちがツアーにスムーズに復帰できるように、出産から3年間スペシャルランキング(※ツアーを離れる前のランキング)が使えるようになったことも、プラスに働いていると思います。

賞金面での変化もあります。昔はダブルスだけで長くキャリアを続けるのは難しかったものですが、現在はダブルスだけでも生きていけます。元複1位のサニア・ミルザ(インド/35歳)が良い例です。2018年に出産し、2020年にはカムバック。シングルスランキングはありませんが、ダブルスは63位です。

また、時代の変化でもありますが、遠征に行く国々でホテルではなくアパートタイプで滞在することも増えてきています。子どもと一緒にツアーを回る上で、そういう時代の流れも後押ししているのでしょう。
ただ、女子ツアーでサポート体制が整っているとはまだ言えません。昔からグランドスラムの大会会場にチャイルドケアの部屋はありましたが、それは奥さんと子どもを連れて転戦している男子選手が子どもをあずける場所という感覚でした。だから、女子ツアーの大会会場では、まだ十分にそういう場所が確保されていないと思います。

今は試合会場にジムがあるのは当然ですし、選手も前後の身体のケアは必須だとわかっていますが、昔はジムがないことは普通でした。このように、チャイルドケアの部屋があるのが当然という状況にまで設備も意識も変えていく必要はあるでしょう。

将来的には、子どものための家庭教師や食事もサポートすることになるかもしれません。アメリカ映画界では撮影で子役を起用する場合、働く時間と勉強する時間が決められているそうです。他の世界の対応は参考になるのではないでしょうか。

余談ですが、ファーストキャリアの時、カーリン・バセットがやっと立つぐらいの子どもに、哺乳瓶でコーラを飲ませていたのを見た時は衝撃的でした。彼女は引退して夫のダブルスの試合に帯同していた時だったかな。忘れられない記憶です(笑)。

逆に小さい大会などプレーヤーズラウンジのスペースが限られている場合は、選手が集中できる場所、子どもが入れる場所などルール作りも必要になってくるでしょう。

90年代では、プロのキャリアが10年ぐらいと言われていました。それが今では賞金が上がりフィジカルも強くなってキャリアが長くなりました。出産してもやめないで続けられると考えると、自分のキャリアプランを立てやすくなると思います。それに伴い、大会運営側やWTA(女子テニス協会)も対応を変えていくことになるでしょう。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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